20歳の決断
第38話 感謝
「たっくん。どうしたの?こんな所で」
苦難の続いた1年が過ぎ、琢磨はどこか遠くを見つめる機会が増えた。
「みっちゃん。いやなんでもないよ」
「なんでも無くないよ!ケビン達心配してるよ?たっくんが最近付き合い悪くなったって」
「あの人達が遊び過ぎなんだよ」
「確かにそれは言えてる。でもそれが原因じゃないんじゃない?」
「なんでそう思うの?」
「ずっと見守ってきたお姉さんの勘」
「…………敵わないなみっちゃんには」
「話してみてよ?気持ちが楽になるかもよ」
一呼吸置き、琢磨はゆっくりと話し始める。
「小さい頃………それこそみっちゃんが一緒にいてくれた頃。友達が2人いたんだ」
「・・・・・。」
「その2人は俺のやることなすこといちいち口出ししてくるからさ、そのたびに揉めて、解決してまた揉めてそんな日々を繰り返してたんだ」
「そうなんだ。あの頃ちゃんとお友達いたんだ。」
「そう認めるのに10年近くかかったけどね」
「・・・・・。」
「その友達のおかげでようやく殻から抜け出せて、俺高校生活の終盤にはクラスの中心として活動することも出来るようになったんだ」
「そう。」
「でも最近久しぶりに揉めたらさ、それ以来その友達との縁が切れちゃって。そしたら俺・・・・・」
「たっくん?」
「自分の進みたい道がわからなくなっちゃった」
「!?」
潤む瞳を見て思わず抱きしめる美月。
「そっか、辛かったね。でも大丈夫だよたっくん。貴方には私がついてる」
「・・・・・ありがとう、みっちゃん。」
そっと美月から身体を離す琢磨。
「たっくん?」
「その友達達が最後に言ってたんだ。【お前が掴み取るべきは過去じゃない、未来だ】って」
「!?」
「俺はその友達の言葉を否定した。それってなんか俺の過去を否定するみたいで無性に腹が立ったから、でもこの1年過去に拘て過ごしたけど、結局俺が求めた俺はそこにいなかった。」
「・・・・・。」
「今までありがとう。俺を見守り支え続けてくれて」
「!?」
突然の琢磨の発言に美月は眉を一瞬動かすもそのまま聞き続けた。
「その友達は本当にたっくんのこと想ってくれてたんだね。」
「うん」
「良い友達じゃない。仲直りしなきゃね」
今度は琢磨が美月を抱きしめる。
「!?たっくん」
「ありがとうみっちゃん。みっちゃんは多分俺の・・・・・」
「・・・・・そういうこと言うのズルいな」
「ごめん。」
「さっ、行きなさい。たっくんが本当に自分を成長させてくれると思える人のもとに」
ゆっくりと身体を離し琢磨は美月の横を通り走り去る。
(私わかってたの。私ではたっくんの『支え』にはなれるけど、1人の人間として『成長』の手助けは出来ないって、あの頃から。だから去年偶然再会したあの時。私のいない間に見違えるように逞しくなった貴方を見て嬉しかった。同時に私の役目の終わりも自覚していた。・・・・・いつか来るとは思ってたけど、思ったより早かったな~。これもたっくんが成長したってことか。きっとその人は・・・・・頑張れたっくん。頑張れ・・・・・)
「好きだよ、たっくん。ッツゥ」
一面の蒼穹を眺める美月の頬には一筋の雫が流れていた。
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