第35話 いないせかい
2体が気配を消して半年。琢磨はキャンパスライフを謳歌していた。
「オウ、タクマ今日はどこいく?」
「ケビン。今日はそうだな・・・・センター街はどうだ?」
「OKだ。早速手配しておくよ」
「えータクマ~ミツキの応援行かないの~?」
「どうせウチが勝つだろ。いいよ別に」
「ミツキ、タクマの応援ホシイんじゃない?」
「先輩は俺がいようがいまいがこの大学1の選手だぜ!心配いらないよ」
「ソウいえバ今年入っタ、新入生の『キタガワ』だっけ?なんかスゴイらしいよ」
「夏アタリから頭角をアラワシテ、イマ注目の1年ナンだって!」
「あの娘カワイイよね~シカも男子バスケ部主将の『オオタニ』と付き合ってるラシイよ」
「ウラヤマシイわ~」
「リラ先輩もシリカ先輩も彼氏いるでしょ」
「あ~オオタニと付き合えるなら即changeよ」
「Me to!」
「彼氏さん可哀そう」
「おいタクマ行くゼ」
「今行く!じゃね」
「ほどほどにねタクマ!あんた弱いんだから」
「は~い」
「タクマ!お疲れナモウ1軒行くカ?」
「悪い、用事がある」
「OKだ、また明日ナ!」
遊び歩いたその足でとある場所に向かう琢磨。
「ごめんね、待った?」
「お疲れ様。今着いたところだよ…………みっちゃん」
「………またケビン達と呑んだの?」
「あれ、臭う?」
「顔赤いし………そんなに強くないんだから止めなさいといいたいけど、そんなに遊び呆けてもしっかり成績取ってるからキツく言えないのよね」
「まぁね。いくら遊び呆けてもやることはやらないとね。みっちゃんの隣にいるんだからそれくらいはしっかりやらないとね」
「たっくん………そんなに想ってくれるんだったら、一度でいいから応援に来て欲しいな〜」
「…………。わかった次の試合は応援行くよ」
「やった!じゃあ来週の試合は絶対応援しに来てね」
「わかった」
「う〜寒い。こんなところで立ち話もなんだし場所移そっか」
「そうだね。なんか食べに行く?」
「…………お腹に入るの?」
「軽食なら」
「バスケ女子の胃袋舐めるな〜」
「食べたいだけ、食べなよみっちゃん。」
「そう言われるとそれはそれで………恥ずかしいな」
「ごめん、ごめん行こ」
「うん」
互いに手を繋ぎ夜の街に紛れ込んで行った。
約束を果す為に試合会場を訪れた琢磨。
(応援か………)
いざ会場まで来たものの、一歩中に踏み出すのを躊躇う。
「あれ、琢磨?」
そこで思わぬ人物に声をかけられる
「東条!どうした?」
「どうしたって、『ディベート同好会』のマドンナの応援だよ。」
「そうか」
「しっかしようやく会えたぜ会場で」
「えっ?」
「北川が試合に出るようになってからちょいちょい応援に来てるけど、お前に一向に会わねーんだもん」
「俺にも用事の1つや2つあるからな、そういうお前は仕事は大丈夫なのか?」
「ようやく慣れたところかな、順調ちゃ順調だ」
「そうか、いきなり社長とか似合わないことになったから気になってた」
「おや〜琢磨く〜ん。心配してくれるんですか?」
「フン」
「大丈夫だよ、社長っていっても零細企業だし親父から継いだっていっても一人前になるまで親父がサポートしてくれるから」
「そうか」
「なぁ、お前らなんかあったのか?」
「なんの話しだよ」
「この前北川が知らない男と一緒にいるのを偶々見かけたからよ、珍しいなと思って」
「部活の人だろきっと」
「お前の話しちっともしないし」
「俺の話?」
「あぁ、2人で話すときいつもお前の話題になったのに、最近全然話さないからよ」
「…………お互い忙しいんだよ」
「そうか…………。まあなにはともあれ今日はその忙しさってやつから解放されたからここに来たんだろ?」
「まあ……な」
「じゃあこれまでの分も応援しなきゃだな」
「そうだな」
熱烈な応援、キュキュと響くバッシュの音、ボールが地面に叩きつけられる音…………久しぶりの試合の観戦にどこか懐かしさを感じた琢磨。
「なぁもっと近くでみようぜ?」
「いいんだよ、この距離でこうした方が全体を隅々まで見れるから」
「あら、いつの間にバスケ通に」
「ほっとけ」
ビーーー
試合開始のブザーがなる
久しぶりに見るからか、カテゴリーの違いか試合の練度に圧倒される琢磨。
(みっちゃんは当然として、あいついないじゃんか…………控えか?)
「なんかスゲーよな」
「なにが?」
「高校と大学でここまでレベル違うのかって未だに思うんだよな」
「確かにな」
試合は琢磨達の大学がリードを維持し試合を進める。そんな試合展開のなか第3Qで動き出す
「選手交代………おっあのNOは!」
(出てくるのか)
一際盛り上がる歓声
「北川!北川!!」
「みなみ〜〜」
「みなみちゃ〜ん」
「相変わらずの期待のされ方だな」
「そうだな」
久しぶりに見るユニフォーム姿で躍動する彼女。気がつけば琢磨はその姿を夢中で追っていた。
「北川大活躍だったな」
「そうだな」
「いや〜良い気分転換になったわ。………あっもうこんな時間」
「仕事か?」
「そうだ。ゆっくり琢磨とも話したいが、また今度な」
「おう。頑張れよ東条」
「サンキュー。じゃあな」
駆け足で去る東条。
「知り合い?」
「みっちゃん。お疲れ。うん高校の同級生」
「ほ〜、たっくんの友達か興味あるな!」
「いずれね」
「ちゃんと観に来てくれたんだ。客席見渡しても見つけられなかったから来てないのかと思ったけど、ちゃんと約束守ってくれたんだ」
「当たり前じゃん。客席の一番後ろで観てたから見つけられなかったんだよ」
「そうなのね。もっと近くで見ればいいのに」
「試合中に人探ししてるようじゃあ、見つけた時試合に集中出来ないんじゃないかって気を使ったんだよ」
「あ〜ヒドいな。その辺の切り替えはしっかりと出来ます。むしろ見ててくれてるってわかった方がもっとやれたのにな……きっと」
「じぁあ次回からそうするよ」
「どうだった?私のプレー」
「どうって………俺素人だし」
「そんな細かい指摘じゃなくていいよ、感想よ感想」
「感想ね………生き生きとして元気貰った」
「ホント!良かった」
「…………この後どうする?」
「そうね………既に現地解散になってるし、このまま遊びに行きましょ」
「いいよ」
「じゃあちょっと待ってて」
「えっなんで?」
「嫌だな、シャワー浴びたいの。私だって乙女の端くれなんだからね」
「わかった。焦らずに浴びてきなよ」
「うん。じゃあ待っててね」
「わかった。……………くそ、来るんじゃ無かった。」
思い返す琢磨。その目に浮かぶプレーの中心にいたのは、幼き日から憧れていた人では無く、共に青春を謳歌した仲間であった。
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