第34話 決裂
キャンパスライフになれた琢磨。ハイテンションなゼミの先輩達にも大分慣れていた。
「イイゼタクマ!最高だ!!」
「ケビンのおかげだよ」
「嬉しいコト言うじゃナイか!」
「今日のゼミハこれデオシマイダ」
「タクマ!また明日ナ」
「お疲れ様っす。明日もお願いしやす」
「たっくん、ちょっといい?」
「みっちゃん?」
ゼミの終わり美月に呼び止められついていく琢磨。
「なんでわざわざ大学出てなの?」
コーヒーを啜りながら琢磨は意図を探ろうとする琢磨。
「大事な話なの」
「そう・・・・なんだ」
「北川と何かあった?」
「えっ北川と」
「あの娘。急に元気無くなってさ部活にも集中出来てないみたいで、期待の後輩だけに心配なのよ」
「それがなんで俺と?」
「・・・・・不調そのものはここ1週間からなんだけど、異変自体はあの日の翌日からなのよね」
「あの日?」
「たっくんと話してる時に偶々練習終わりの北川とあったじゃない?その翌日からなんか悩んでるようだし、どんどん持前の覇気が無くなっていくし、仕舞にはあの娘のレベルでしないようなミスも連発するようになっちゃって、完全に悪循環に嵌ってるのよ」
「そういえば、最近元気ないですね北川」
「あの日からだからもしかしてたっくんと関係があるのかなって思って」
(そういえば最近妙に避けられてる気がするんだよな・・・・・)
(・・・・・)
(・・・・・)
「心当たりは無いんですよね」
「そっか。わかったありがとう。なんか気がついたことあったら教えてね」
「わかった」
「じゃあ、私これから部活だから。これ」
「えっいいのに」
「よくないよ、私が相談に乗って欲しいってここに連れてきたんだから。じゃあね」
「うん。部活頑張って」
「ありがとう。たっくん」
お金を余分に置き席を離れる美月。
(北川が元気がない原因が俺に・・・・あるのか?)
(本当にわかんないのか、琢磨)
「なんだお前はわかるのかアク?」
(俺だけじゃない。テンもわかってるぞ、きっと)
「そうなのかテン?」
(・・・・・)
「テン?・・・・・なんだよお前ら、最近おかしいぞだんまり決め込んで」
(もともと俺らは憑依者に干渉しないのが鉄則だ)
「よくそんなこと言えたな、勝手に人を乗っ取てかき乱してきたくせに」
(んだと)
「事実だろ」
(やめましょう。アクさん。人の気持ちを考えることすら出来ないそこの最低男には今はなにを言っても無駄です)
「珍しく随分毒ずいてくるじゃないかアク?」
(今の貴方と会話することすら煩わしい)
「なんだよ、お前らいきなり・・・・・俺はお前らになにかしたか?」
(・・・・・)
(・・・・・)
「お前らいい加減にしろよな!?自分達の都合ばかり押し付けやがって!!」
ザワザワざわざわ・・・・・
「・・・・・すみません」
急いで店をあとにする琢磨。
「ったくなんなんだよ!ここ数ヶ月やけに大人しいと思ったら言いたい放題いいやがって」
(琢磨。なんでお前あの時誤魔化した)
「誤魔化した?」
(あの女に2人の関係を聞かれた時、貴方嘘つきましたね)
「嘘・・・・・ってなんだよ」
(自分の気持ちに嘘ついただろって言ってんだよ!!)
「俺の気持ちだ?」
(とぼけんな!?俺達はお前の内面にいるんだ。お前の本心がわかんだよ)
「・・・・・・。」
(貴方、あの女との関係が崩れるのが嫌で『仲間』って言葉を建前に使いましたね)
「別に、北川と付き合ってるってそれこそ告白すらしてないんだから嘘だろ」
(告白する気はあるんだろ?)
「!?それは・・・・・」
(なんで、なんであの時『含み』を持たせなかったんだ!)
「含みだと?」
(突然の言及で正直に本当の気持ちを言えなかったことはわかる。だがなんでせめてあの時恥じらいを持った言い方をせず、当たり前のように言った?)
「なっそんなこと」
(あの発言。恐らくあの小娘は自分に『脈は無い』と判断したでしょうね・・・・流石にあの小娘に同情しますわ、貴方も気が付いてましたよね?あの小娘は自分に好意を持ってると)
「・・・・・。」
(そして貴方もそれに好意的なアプローチで応え続けた。あとはその本心を伝えるタイミングを伺っていた。これまで何回かあったとは思います。けどそれは仕方がありません。なにせ貴方は元々その手のことに弱く。【自分の本心を相手に見せる】ことが苦手だったから)
「わかってるんじゃんかよ」
(私はあの場面は貴方が本当の意味で【殻を破るチャンス】だったと思います。)
「【殻を破る】だと・・・・・」
(確かにあの女は貴方の幼少期の支えでした。貴方があの女に恋をしていたのも・・・・・存じています。ですが・・・・ですが)
(テン・・・・・)
(『御使琢磨』を今の『御使琢磨』にしたのは誰ですか?)
「今の俺に・・・・・」
押忍、琢磨!今日は元気か?
そうだね!行けるとこまで行きたいよ!
でも、私達となら来てもいいって思えたんだ?・・・・そうか、なんか嬉しいな
そっか………どう、だった?
今?楽しいか?・・・・・そっか、良かった
ありがとう琢磨。お陰で少し気が楽になった
「それは・・・・・」
(わかってんだろ?お前が掴み取るべきは過去じゃない、未来だ)
「うるさい」
(なっ)
(・・・・・)
「これは俺の人生だ!お前達が勝手に憑依して俺の人生を引っかき回したんだろ!俺の選択に口出しするな!!」
(・・・・・琢磨お前)
(そうですか、アクさんもういいです。少しでも望みを持った我々が愚かでした)
「・・・・・」
(約束も忘れ、私達が力になりたいと思った『御使琢磨』はもういないようです)
「約束・・・・・」
(さようなら、もう2度とお会いすることはないでしょう)
(・・・・・達者でな、琢磨)
「なんだよ、あいつら好き勝手言って気配消しやがって・・・・・」
2体の言い分が引っかかっていた琢磨は美波の練習終わりを待つことにした。
(そろそろだと思うんだけどな・・・・・あっ)
練習を終えた美波が体育館から出てくるのを確認する。
「おーい!きたが・・・・・!?」
するとそこには見知らぬ男の腕に抱きつく美波の姿があった。
「えっ、あいついつの間に・・・・ってなにショック受けてんだよ。俺とあいつは青春を謳歌した『仲間』で・・・なか・・・ま・・・・あれ急に視界が・・・・なんで」
雨は降っていないのに琢磨の周りに水滴がポツポツと落ち続ける。
「なんだよそれ、結局俺達の想い過ごしのようだぞ!テン、アク・・・・・なあお前ら聞いてくれよ。俺の話・・・・聞いてくれよ!テン!アク!!」
打ちひしがれる心を慰める者はもういない。以来2体の気配を琢磨が感じることは無くなった。
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