第33話 悪戯

「おはようございます」


いつものようにゼミを訪れる琢磨。


「タクマおはよう!」


「今日はチャンと講義に出たカ?」


「ちゃんと全部出てますよ、あの日以外は」


「オーエラいエラい」


「…………。」


「オウタクマ、Sorry怒るなヨ」


ゼミを見渡すとあの人がいなかった。


「どうシタノタクマ?」


「橘先輩は?」


「ミツキは部活ね」


(みっちゃん部活入ってたんだ………)


「ナンダタクマ?ミツキが気になるのカ?」


「いや、そういう訳じゃ」


「ホータクマはミツキみたいナ女性ガタイプか」


「アラ残念」


「そっそんなんじゃないです!………ゼミ始めましょう!」


「ハハハ!ウブだなタクマ。よし今日の課題ハ」


「ったくあの先輩達は」


ゼミを終え帰路につこうとする琢磨。


「あれ?たっくん?」


ジャージ姿の美月に会った。


「みっちゃん」


「ゼミ終わり?」


「うん、あの先輩達俺1人には手に負えないよ」


「ごめんごめん、でも時々こういう日もあるから頑張って!」


「…………。」


「どうしたの?」


「…………実は」


「……………サークルね〜」


「うん。」


「…………フフフ」


「みっちゃん?」


「あのたっくんがサークル活動に興味かと思って」


「変かな?」


「うんうん。そうじゃなくて、自分から何かに関わりに行こうとする今のたっくんって私の知ってた昔のたっくんからは想像出来ないから嬉しくって」


「…………」


「ただ、そういうのは尚更自分で見つけた方がいいと思うな〜」


「そうだよね………」


「たっくんに合いそうなサークルならいくつか心当たりがあるけど」


「教えて!なんか沢山あって絞れなくてさ」


「そうね………」


「お疲れ様です!橘先輩!!」


「えっ」


美月に声をかけた元気な女性。それは琢磨と青春を共に過ごした人………。


「北川」


「あれ?琢磨じゃん!」


「お疲れ」


「ありがと…………なんで橘先輩と?」


「あら、2人とも知り合い?」


「うん。中学からの同級生なんだ。っていっても仲良くなったのは高校からだけど」


(なにこの胸騒ぎ………こんな琢磨見たことない)


「そうだったのね!そんな珍しい事もあるんだー」


「もしかしてみっちゃんバスケ部なの?」


「!?」


「そうよ。北川は有望な私の後輩」


「そうだったんだ!?」


「あの………2人の関係は?」


「幼馴染よ」


「えっ!?」


「私が家の都合でオーストラリアに引っ越すまでたっくんとはよく遊んだわね」


「いや、そんなしょっちゅうじゃ」


「まぁ、たっくん人を避ける傾向があったから半ば無理矢理遊んでたっていうのが正確なところかな?」


「そう………なんですね………」


「もしかして、2人共付き合ってる?」


「!?」「!?」


(………!?琢磨)


(待って琢磨さん!)


「そっそれは」


「う〜ん。共に青春を過ごした仲間………かな?」


(あちゃー)


(琢磨さん………)


「!?………そうだね」


「………そっか、これも何かの縁だね!」


「そうかもね」


「…………」


「………。じゃあ、たっくん行くねオススメはこの後にメッセージ送るね」


「わかった。また明日」


「お疲れ、北川」


「お疲れ様です。橘先輩」


手を振りその場を美月は立ち去った。


「どうした北川。急に元気無くなって」


「!?そんなことないぞ。何いってんだよ琢磨」


「そうか、ならいいけど。どっかでご飯食べて行くか?」


「いや、この後用事があるんだ」


「そっか、じゃあまた明日な」


「うん………また明日」


その場に留まる美波。自分の心の葛藤にその日は抗い続けた。






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