第32話 花園
「確かこの辺だよな」
翌日、琢磨は美月に紹介を受けたゼミを探していた。
(楽しそうだな琢磨)
(浮かれ過ぎではありませんか?)
(キャンパスライフってこんな感じなんだろ?)
(今朝のあの娘………少し寂しそうでした)
(確かに、琢磨若干上の空だったもんな)
(同じ大学とはいえ、学部が違うのです。折角出来たご友人を幼馴染との再会があったとはいえ無下にするのは私は許しませんわ)
(無下って大袈裟だろテン)
(…………)
トントントン
「失礼します」
扉を開けると1人の男性が窓の外を眺め寛いでいた。
「オヤ?見ナイ顔デスね」
「はっ、はじめまして。橘美月さんの紹介で来ました。」
「オオ!今朝ミツキから連絡がアリました。新入生を1人紹介シタと、では君ガ?」
「はい。御使琢磨といいます。」
「ミツカイ珍しい苗字ダネ?」
「よく言われます」
「私は『アルベル·リチャード』ヨロシクね、タクマ」
「よろしくお願いします。アルベル教授」
「オー、教授ダナンて久しぶりにヨバレマシタ。ミンナFriendlyにアルベルと呼ぶノデ」
「そうですか、ですが自分は慣れるまでは教授と呼ばせていただきます。」
「OKだタクマ。楽しみにシテイルよ」
アルベルの研究室を出た琢磨。
「アルベル。面白そうな先生でしょ?」
扉の隣で美月が待っていた。
「みっちゃん。あの人日本語上手いね」
「奥さんが日本人らしいわ、来日して6年………なかなかの日本通よ」
「へぇ………」
「さあ行こたっくん」
「何処へ?」
「どこってゼミよ。皆を紹介するわ」
美月に連れられとある教室に入る琢磨。
「皆ハロー」
「ミツキ!ハロー」
「あれその子は?」
「今日からゼミの一員になった琢磨よ」
「ハ〜イタクマ!私『リラ·ベルサール』よろしくネ」
「私は『シリカ·パーパシー』よよろしく!」
「あとは男組ね2人は?」
「さぁ?またナンパじゃない?」
「ったくあの2人は」
すると教室の扉が空いた。
「マタね〜アトで連絡スルよ〜」
「ケビン。あの娘達いいね」
「だろ?マルコ…………ってどうしたミツキ?」
「ケビン!マルコ!!またナンパして、ヤメてよね軽々しくそういうことするの」
「ミツキ………俺達はイツも全力ダゼ」
「アレか嫉妬ってヤツだろミツキ?]
「マルコ!」
「おーコワってダレだそいつ?」
「今日からゼミの仲間になる琢磨よ」
「なんだミツキお前こそ引っ掛けテルじゃナイか」
鋭い視線が2人に突き刺さる。
「タクマ、ヤバい女に目をツケラれたな。俺はケビン。『ケビン·ラルトス』だ」
「『マルコ·アロンソ』だ。よろしくタクマ」
(流石国際学部のゼミ、アフリカ系、欧州系、南米っぽいの………国際色豊かなゼミだ)
「因みにリラはケニア出身でシリカはスウェーデン、ケビンはドイツでマルコはアルゼンチンの出身よでもってあのアルベルはアメリカ生まれだそうよ」
「おいおいミツキ、そういうお前はオーストラリアだろ?」
「えっ!?」
(帰国子女って、マジか!?)
「私の生まれはこの国よ!確かにオーストラリアは6年住んだけど私は日本人よ」
「オー!早速賑やかデスね〜」
「アルベル!!」
4人はまるで示し合わせたかのようなタイミングでアルベルに反応する。
「今日はタクマの歓迎会ダ、好きにゼミの時間を使うとイイ」
「Yes!!サンキューアルベル!!」
「最高だぜ!!プロフェッサー!!」
「ドコ行く?」
「ナニする?」
「琢磨なにしたい?」
「えっとあのその………」
5人の視線が琢磨に集まる。
「ウェーイ!!」
「………ったく、あんた達!琢磨の歓迎会なんだからね」
「サァータクマ呑めノメ!!」
「あの、俺未成年なんで………」
「世界にはネ、18かラ呑めル国もアルよ」
「ここ日本です…………」
「細いコトは気にスルナ。タクマ!」
「ちょっとリラ!シリカまで………」
「そんなコト言って一番の酒好きはミツキだろ」
「!?」
「ちょっと変なこと言わないで!」
「カマトトぶってル。」
がっちり取り押さえられる美月。
「リラ!シリカやめて~」
「さあ本性を出せミツキ・・・・・」
「あっ・・・・」
「サア、タクマお前の番ダ」
「ちょっちょっちょっ・・・・・」
「くん、た・・・・くん、たっくん!」
「ここは!」
「ゼミの教室よ」
「日が・・・・暮れてる」
「皆さんは?」
「帰ったよ随分前に」
「・・・・・・」
「どうしたの?たっくん?」
「入学早々、講義サボっちゃった?俺」
「・・・・・ごめん!普段はちゃんとゼミらしく活動してるんだけどね。親睦を深める為のゼミに新しいメンバーが入った時のお約束なの」
暫く天を仰ぐ琢磨。
「たっくん・・・・」
「1ヶ月」
「えっ」
「1ヶ月みっちゃんを信じてこのゼミにいる。もしそれでも印象が変わらない時は・・・・」
「たっくん・・・・」
「ちょ!みっちゃん。」
美月が琢磨を抱きしめる。
「ありがと、信じてくれて」
「・・・・・まあ、みっちゃんの意外な一面見れたし」
「!?なんでそれだけ覚えてるのよ」
「余程のインパクトだったみたい」
「忘れなさい~」
「じゃあね!みっちゃん。」
「こら~たっくん!」
その後、なんだかんだで琢磨はこの『アルベル』ゼミに籍を置くのだった。
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