第27話 激震
暑い日差しも鳴りを潜め、葉の色に変化が見えだした頃
2体が騒がしくなった。
「お前ら煩いぞ、こっちに集中させてくれ」
(そんな悠長なこと言ってる場合か琢磨)
(どうしましょう・・・・・どうしましょう)
えらく慌てる2体に琢磨は身に覚えがあった。
「また来るのか?」
(そうなんだよ(です)!来るん(です)だよ!!お袋(お母様)が!?)
「……………静かにおもてなししててくれよ」
(なぁーどうするんだよ!前回お袋には俺達の変化伝えきれてないんだぞ!多分)
(そうですわ。下手したらお父様の時より大事に…………)
「あの2体より凄い?あの2体世界を滅ぼす力を持ってるんだろ?」
(考えてみろ琢磨。その2体の妃として尻にしいている女達だぞ)
とてつもなちパワーワードに日汗をかき始める琢磨。
「取り敢えず、静かにしててくれ。俺は今大事な時なんだ」
(騒ぐな言われてもな、俺達いるの琢磨の中だし)
(必然的に琢磨さんにも私達のやり取りは聞こえてしまいますわ)
「…………そうだったな」
(手伝ってくれ琢磨!)
(お願いします琢磨さん!)
「手伝ってなにを?」
(墓穴を掘りそうな俺達のフォローだ)
「墓穴?」
(前回親父達が来た時、俺達自分達の状態を忘れて危うくバレちゃうとこだったろ?)
(御父様達はなんとかなりましたが、御母様達は鋭いですわ)
「そうは見えなかったがなそれより、正直に話した方がいいんじゃ」
(俺達はあくまでビジネスパートナー………本来悪魔と天使は対立関係にあって親睦を深めることは禁忌とされているんだ)
(ですから、こんな入れ替わりなんてもっての他………バレたらどんな罰を受けるか………)
(馬鹿テン!変な想像させるな〜)
(あ〜どうしましょう)
(テーンちゃーん!!)
(!?)(!?)
勢いよく天使がテン(?)に抱きつく。
(アハハハーお母さ〜ん)
母に抱きつかれ顔がノロけるテン(?)を鬼のような形相で見るアク(?)それを察し急いで身体かは離れるテン(?)
(おっお母様、おっお久しゅうございます)
(元気でした?テンちゃん。お勤めは順調ですか?)
(はっはい!憑依者の御使琢磨は順調に成長しており………ますわ!あのおっお母様。本日はどうしてこちらに?)
(…………天使長様と貴女の様子を見に来た時にあのおじいさんテンちゃんを愚弄したでしょ?あの後テンちゃんとのお約束通り天罰くだしたらやり過ぎちゃって。最近まで天使長様の代理で職務をしてたのよ)
(へっへぇ〜)
(ようやく天使長が復帰したから、あの時テンちゃんとしっかりお話し出来なかったし、遊びに来たの)
(世界を滅ぼす力を持つ天使長を半年以上寝込ませるってどういうことだよ!?)
テンの母を名乗る天使はキョロキョロと周りを見渡す。
(おっお母様。どうされましたか?)
(テンちゃんの憑依者さんにご挨拶をと思ったのに…………何処かしら?)
(琢磨〜ヘルプ〜)
「……………。」
琢磨が瞳を閉じると、3体が琢磨を視認した。
(あら、貴方がテンちゃんの?)
「初めまして、御使琢磨と言います。」
(天使長『ゼウス』の妻にして貴方に憑依している天使『テン』の母。名を『ヘラ』と申します。以後お見知り置きを)
(見た感じはおしとやかな方なんだけど、現れた時のあの感じ………なんか危険な感じするんだよな)
「こちらこそ、よろしくお願いします」
(憑依者の方とは上手くやれてるみたいねテンちゃん。安心したわ)
(まっまぁね!アハハハ………)
(…………。)
(どうしたアク?母さんが恋しかったか?)
テン(?)とヘラの様子に嫉妬の目を向けていたアク(?)に妖艶な女性が耳元で囁く。
(!?おっお母さん!!)
(なんだい?そんな驚くことかい?それに随分可愛らしい感じで呼んでくれるじゃないか。)
(えっと、その…………)
(まぁそんなことどうでもいいけどさ、元気そうで何よりだよアク)
(まっまあな、俺を誰だと思ってるんだよ。おっお袋)
(そりゃあ私の自慢の息子さアク。たださこういう試練をズルするヤツって…………いるんだよな〜)
(!?ズルってなっなんだよおっお袋)
(いるんだよな〜憑依者に自分の主張を押し付けるヤツとか、憑依者を乗っとって思いのまま言動して憑依者の道を勝手に決めてしまうヤツがさ)
(!?)(!?)
(まぁ自慢の私の息子に限ってそんなことは無いはずだけどな………なんだアク?むこうの天使と目配せして)
(なっ、目配せだなんて!気の所為だよ母さん)
(なんだなんだ〜やめてくれよ、種族を越えた愛とか)
(そんなんじゃありません!)
アク(?)の堂々とした反論に思わずアクの母は驚きを隠せない。
(なんだ〜冗談じゃないか、そんな真面目に反論するなよ)
しかし直ぐに笑い飛ばしアク(?)の肩を叩く
(そっそっか、それでおっお袋どうしたんだ?)
(な〜にあちらさん同様お前の様子を見に来ただけさ、前回はちょっと顔出して終わったからね)
(そう………でしたね)
(あっ、お前の親父は約束通りあの後とっちめておいたからな)
(そっちもかよ!?)
(そう………なんですね………アハハハ〜)
(ったく自分の倅を疑う親とか………最低過ぎだろ。………あ〜思い出しただけでムカついてきた)
(おっお袋!もういいから………な)
(当たり前だよ。あの男再起不能にし過ぎてその間あの男の仕事がこっちに回ってきてエラい目にあったからな)
(それは、お疲れ様でした)
(いや、疲れてないぞ?その間はウチにいるお前の兄妹達に任せてたから)
(えっ?)
(まぁ〜そのせいで大分職務が停滞したって聞いたけどな、今頃サタンの奴。そのツケを払ってる頃だろうよ!)
そう高笑いするアクの母に周囲は凍りついた。
(でっ、お前さんがアクの憑依者か)
「御使琢磨と言います。アクくんにはお世話になってます」
(琢磨か、あたしゃ『アク』の母親の『リリス』ってんだ。よろしくな)
「はい。お願いします」
(にしてもまたしても息子に会いに行くタイミングがダブるとは、どういうつもりだ?天使さんよ)
(たまたま重なっただけでしょうに、そんなに気になることですか?悪魔さん?)
(あ〜気になるね。そっちが押し付ける偽善じみた言動が目障りでね)
(あら、こちらとしても貴女の身勝手な言動は悪影響ですので、即刻お引取り願いたいくらいですけど)
(んだと)
(あら、武力行使ですか?………私に勝てるとでも?)
(おっ、落ち着いてくれお袋!)
(そうですわ、落ち着いてくださいお母様)
(あっ)(あっ)
「…………なにやってんだか」
(…………)(…………)
(おっお袋、これはえっと…………)
(お母様。あのですのこれは…………)
(…………)(…………)
沈黙が場を支配し、琢磨も思わず息を呑む。
(フッ…)
(クッ…)
「あの………」
顔を地面に向ける2体に対して琢磨は心配になり声をかける。
(フフフフフ)
(アハーハハハァー)
1人と2体は思わず顔を見合わせる。
(なんてひ弱な声を出すんですか?テンちゃん)
(アク!傑作だ!!アヒャヒャヒャヒャ)
(…………怒ってない?)
(…………よう、ですわね)
(貴女達がおかしいことなんて、前回訪れた時に把握しておりますわ)
(いや〜生で見るとうけるわ〜)
予想外の反応に空いた口調が塞がらない1人と2体。
(なんでわかったんだ?)
(!?!?)
(あのですね、貴女達の親ですよ?異変に気が付かない訳がないでしょう。言い慣れてないようなぎこちない言葉使いに普段と異なる態度。それに以前訪れた際の貴女達の父親の反応)
(親父達の反応って………めちゃ怒って信用してなさげだったのに?)
(………その身体でその言葉遣い、大変不愉快ですが、今は仕方がありませんね。仮にもこの世の2大権力者が2体揃って同じ事を言うのですから、嘘なんて天地がひっくり返ってもありませんわ)
(…………)(…………)
(まぁ実際にこうして接するまでは半信半疑だったけどな)
(テンちゃん。)
(はっはい!お母様)
(貴女が今過ごしている時間は他の者には出来ない貴重な時間です。悔いのないようたくさん学び、経験しなさい)
(…………お母様)
(アク!)
(なっなんだよ?お袋)
(今の状況を楽しみな、やがてそれがお前の財産になる)
(………わかったよお袋)
(さて、娘達の元気な姿を見たことだし帰りましょうかリリスさん)
(そうだなヘラ、ってことでじゃあなアク。)
(リリスさん!リリスさん!!このあとどちらに向いましょうか?)
(そうだな………西の方に行くか!)
(いいですわね!…………)
(どうした?ヘラ?)
(…………温泉とやらに興味があるのですが、どなたかそれに関わる場所にいないかと探っております。)
(なるほどな……………!?。温泉とやらにいるうちの娘と憑依者を探知したぞ!!)
(まぁ!ではそちらに参りましょう。)
(…………)(…………)
(…………どうしましたか?)
(なんだ?揃ってキョトーンとして)
「いえ、天使と悪魔は相容れない関係だと聞いていたので、その………御二方は仲が良いんですね。」
(あ〜。その掟は暗黙の了解みたいになってはいるけど、別にうちらは全然交流あるぞ?)
(そうですわね、試練を終えた天使と悪魔はその試練の過酷さ故にお互いを称え親睦を深めることは良くあることですわ)
「そうなんですね………」
(まぁ、遺伝的に刷り込まれた互いへの嫌悪感からそんな例は余りないみたいだけどな)
(ではテンちゃん。琢磨さんとお勤め頑張ってくださいね)
(はぁ、お母様)
(ってことでアク。試練達成楽しみにしているぞ)
(おっおう…………)
(う〜んでもやっぱり、あの身体にテンちゃんがいることに違和感しか感じませんわ)
(なんだヘラ?いっちょ前なこと言って未練タラタラじゃないか?)
(…………貴女は平気ですの?リリスさん?)
(おもしれーしゃねーか!)
(全く………息子さんが不憫ですわ)
徐々に姿を消す2体。完全に反応が消えると2体は全身の力が抜けたように腰を落とした。
(……………)
(……………)
(あの親あってのコイツらのってことか)
「お前ら………その、お疲れさん」
約1年ぶりの波乱は、色々な意味で前回を凌駕し、琢磨の記憶に焼き付いた。
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