第22話 嵐を呼ぶ………

「琢磨今日は部活あるの?」


「うん。その予定」


「そう、わかったわ」


「お兄ちゃん部活始めてからなんか楽しそう」


「そうか?これまでと変わらないと思うが」


「ねぇ?お母さん。」


「そうね。帰って来た時もスッキリした表情してることが多いし、部活に入部すると聞いた時は驚いたけど、順調そうで良かったわ」


「母さん、大袈裟だよ。!?こんな時間。じゃあ行ってきます」


「行ってらっしゃい」


『ディベート同好会』を始動して1ヶ月。4人で集まる機会が減ったものの、また集まれるキッカケとなる居場所が出来た事で離れ離れになっていても琢磨は充実感に満たされていた。


そんなある日東条が下級生を図書室に連れてきた。


「誰その娘?」


「なんか『ディベート同好会』に興味があるんだってさ」


「出来て1ヶ月の部活をよく見つけたわね」


(なんか・・・・・地味な子だなテン)


(そうですわねアクさん。本当にディベート出来るのかしらこの方)


「『日笠月子(ひがさつきこ)』です。よろしくお願いします」


「まあ拒む理由も無いし、北川は部活との兼ね合いで来れないことも多くてディベートも2対1になりがちだから丁度いいんんじゃないか?なあ琢磨」


「そうだな。公平な議論をするのに人数は対等な方がいいし入部は歓迎するよ」


「ありがとうございます!御使先輩!!」


「あれ?琢磨知り合い?」


「いや、初対面」


「まあいいか。俺は東条渉!よろしくな月子ちゃん」


「西宮沙織よ、よろしくね」


「よっ、よろしくお願いします。東条先輩と西宮先輩」


「あと1人北川って奴も部員なんだけど今日は休みだ」


「北川って、あの北川美波先輩ですか!?」


「おっ、そうだぞ」


「そうなんですね。学校のマドンナの北川先輩が………あれ北川先輩ってバスケ部の主将では?」


「そうなんだ。だからほんとたまに顔を出す程度だと思っててくれ」


「じゃあ部活始める?一応今日は【部活する日】でしょ?」


「【部活する日】ですか?」


「あぁ『ディベート同好会』は建前で、この部活は放課後集まって好き勝手過ごす部活だと思っててくれればいいぜ月子ちゃん」


「はぁ………」


「ただ部活動を名乗る以上しっかり部活として活動する必要もあるからな、週1でディベートしてるって訳さ」


「本格的な部活を想像してたならゴメンね」


「そんな西宮先輩とんでもないです!むしろ好都合です………」


「あら?何か言った?」


「いえ!なんでもありません。」


「じゃあ今日の議題は何にする?」


「ここは月子ちゃん入部記念も兼ねて月子ちゃんに議題を決めてもらうってのはどうだ?」


「えっ!私ですか?」


「あら、いいじゃない?下僕にしては良い案ね」


「ハッ!ありがとうございますお嬢様」


「お嬢様?下僕?」


「あー日笠さん気にしないでくれ、コイツらの悪ノリってヤツだから」


「はっはい。では…………」




「いやー、凄かったな月子ちゃんスゲーしっかり考えてるじゃん」


「『人を形成するのは遺伝か環境か』なんてまた難解な議題をと思ってたけどしっかり自分の意見持ってたわね、あんた見習いなさい下僕」


「いやー手厳しい」


「なんか、必死に図書館の書物を読んでる姿を見てたら、なんか俺達の不純な動機での部活動が申し訳なく思えたよ」


「だよな〜」


「確かにね」


「創設1ヶ月にして方針転換かこれ?」


「検討が必要かもな」


「まぁあの娘が続けるかもわからないし、焦らず様子見でいいんじゃない?」


「そうだな」


「あっ、私用事あるからこの辺で」


「俺もこの後用事あるからまた明日な琢磨」


「また明日な2人とも」


それぞれの道を帰る3人。暫く歩くと琢磨の前に日笠が現れる。


「お疲れ様です。御使先輩」


「あれ日笠さん。どうしたの?」


「えっとあの先輩とお話したくて」


「えっ」


「やっと二人きりになれましたね」


(この流れまさか)


(そっそんなまさか琢磨さんに)


「えっと、あの日笠さん?」


「先輩…………」


胸の鼓動が高鳴るのが自分でもよくわかった。


「今日はご挨拶です。私達2人だけの秘密の関係を記念して」


「秘密の関係?………!?」


月子の後ろに見覚えのある姿の2体が憑いていた。


(はぁ?)


(なっなぜですの?)


「日笠さん………君」


「ヤダな先輩。東条先輩みたいに月子って呼んでくださいよ〜。」


不敵な笑みを浮かべる日笠。


「私も【天使と悪魔】憑いてるんです」


急に現れた後輩は唯一自分の秘密を共有する唯一無二の存在だった。





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