第21話 4人の居場所
「ふむふむなるほど、それで私に?」
「はい。先生はここの教室の管理責任者だとお聞きしました。ですので先生に顧問をお願いしたいです。」
深々と頭を下げる琢磨。
「………使用目的も、活動内容も理解しました。いいでしょう。認可し校長に掛け合いましょう」
「ありがとう御座います。」
「但し、この活動形態は本来の趣旨から外れやすく活動によっては直ぐに廃部になります。くれぐれも忘れないように」
「………肝に命じます」
職員室を後にする琢磨。
「どう…だった?」
階段に連なる廊下の影から東条が顔を覗かせる。
「…………。」
親指を立ててアピールする琢磨。
「よっしゃ〜!早速、2人に伝えてくるわ!!」
「廊下は走るなよ」
琢磨の声掛けなど等に聞こえない程勢いよく階段を駆け上がる東条。
(琢磨が部活か………)
(アクさん………何故泣いてますの?)
(テンよ〜あの琢磨が部活だぜ?部活!学生時代の青春って言われてるやつだぞ?あのボッチだった琢磨が部活を経験する日が来ようとは………感動しないはずないだろ?)
(!?ちょっとなんですかそのグチャグチャな顔は!人の顔でそんな表情しないでください!!)
その日の放課後。認可を貰った教室に集まる4人。
「………という訳で校長先生の認可が下り次第。『ディベイト同好会』は活動して行けることが決定した」
「よっしゃー」
「下僕煩い。場所を考えなさい」
「…………どうした北川?そんな嬉しそうな顔さて」
「あっ……いや、なんか部活の活動場所として琢磨がここを選ぶとは思わなかったから。嬉しくて」
「この一言発するだけで冷酷な視線を突きつけられるこの教室を?」
「うん。ここ琢磨が私達と一緒に行動するようになる前のお気に入りの場所だったから」
「へぇー知らなかったわ」
「俺も」
「北川。余計な事を言うな」
「ごめんごめん。そういう聖域みたいな場所に入られるの琢磨嫌なんじゃないかなって思ってたから、そこを琢磨自身が選んだのがなんか嬉しくってさ」
「でもなんで『ディベート同好会』なんだ?」
「3年生の受験という大事な時期に部活未所属の俺達が部活動を作りますって言っても大抵の部活だと認可どころか、[大切な時期に部活とは何を考えてるんだ!?]説教されるだろうな。けど『ディベート』ってのは1つのお題を賛成と反対に分かれて議論する討論みたいなものだ。将来的に必要になりそうな要素が目に見えてわかる活動内容だからこんな時期に立ち上げる相談をしても乗って貰えると予想した。」
「なんか意見言い合うのって面白そうだな」
「言い合うだけじゃない。そのお題について結論まで出して『ディベート』だからな東条」
「おっおう」
「『ディベート』をやるにも騒がしい場所では集中出来ないからな図書室は資料として活用出来る本も山の様にある。部費もかからない一石二鳥にも三鳥にもなるって訳だ」
「お〜おーーー!」
「仮にただくだらない会話ばかりで活動してる?って思われても『ディベート』なら誤魔化せるわね」
「そうだ。そして同好会となったのは北川をバスケ部と両方所属させる上で同一人物の複数部活動への所属禁止の校則に則った必要な処置ということだ。」
「琢磨………ありがとう」
「おう」
「顧問も図書室の管理を担当してる白石か………あまり干渉してくる印象の無い先生だし伸び伸びと活動出来そうね」
「あぁ、部活と違って時間的拘束も必要としないからな集まりたい時に集まるってのも可能だ」
「うぉ〜なんて自由な部活動なんだーーー」
「東条煩い。ただ部活動として活動している姿をアピールする必要もある。だから週1で『ディベート』をして活動しているという記録を残す。それは覚えておいてくれ」
「わかった」「了解」「OK」
「ということで、多分明日からかな?『ディベート同好会』始動だ」
起死回生の一手は4人がこれまで通り集まり、学校生活を謳歌出来る居場所を手にすることに成功した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます