第17話 聖夜の激走
「惜しかったな。試合」
冬休みに入り1つの部活動の活動が終わりを迎えた。
「私のせいで、先輩達を全国に連れて行けなかった。」
「美波。貴女この試合の得点の1/3決めたのよ。十分やったわむしろ先輩達が後輩の貴女に頼りっぱなしで情けないわ」
「先輩のこと悪く言わないで」
「ごめん。美波」
「最後のフリースローだっけ?あれだって北川じゃなくて誰でもよかったんだろ?たまたまあそこで北川が放っただけで、あそこに誰がいても結果は一緒だったんじゃない?試合後の先輩だって感謝してたじゃん。北川に」
「他の人なら決めてたかもしれない」
「悔しかったら、練習あるのみだな」
「うん・・・・・」
重い沈黙が流れる帰路。
「あ〜〜辛気臭い!こういう時はパーッと遊ぼう!」
「短絡的だな東条」
「そう言うなって、気分転換だよ」
「私そんな気分じゃ・・・・」
「明後日どうだ!俺あのショッピングモールのあのイベント気になってるんだよね」
「あのイベント?」
「ほら『聖夜の氷走祭』ってやつ」
「なんだそれ?」
「氷走って言うくらいだから氷が関係してるのよね?」
「景品がレストラン街1万円分お食事券だってさ」
「・・・・・ミシュラン1つ星の高級レストランもあるじゃない。そんなとこも入れれるの!?」
東条は得意気に指を振る。
「それがですね、お嬢様。あの有名シェフ監修のレストランや有名料亭もあります」
「ふ〜ん。ワンちゃんそれらが食べれるのね」
「そうなんです」
「別にショッピングモールなら買い物とかでいいんじゃないか?」
「折角高級メニュー食べれるチャンスなんだぞ!参加しないという選択は無い!!」
「あっそ、どうする北川?」
「…………。」
「まぁ、無理に参加することはないぜ北川。もしその気になったらでいいから」
「わかった。」
「じゃあ、私達こっちだから」
「じゃあお嬢様また明後日」
「はいはい」
「2人とも応援ありがとうな」
「おう」
「お疲れ北川〜………ってことで御使くん?」
「…………お前の『くん』づけはろくな事がないから嫌だ。」
「そういうなよ、お膳立ては整えた。あとは君次第だよ?」
「なんのことだよ?」
「あんな冷たい励ましあるかよ、あれは北川からのポイントだだ下がりだぜ?」
「変に優しくされるよりはいいと思ったけどな」
「ドライ!ドライ過ぎだ御使。お前みたく人をなかなか褒めないヤツが優しく声かけることが傷心のオナゴの心に響くんだよ!」
「そういうものか?」
「そういうものだ。だから明後日頼んだぞ?」
「頼むって何を?」
「北川を立ち直らせられるのはお前だけだ」
〜
「なんで俺だけ?」
「…………だぁ〜とにかく明後日頼んだからな」
「おい」
迎えた当日。ショッピングモールは大勢の人で賑わっていた。
「すげー人の数」
「まさか、これ皆目的は同じ?」
「まさかな」
お祭りの会場に向かうと
「スゲー!スケートリンクじゃん!?」
一面に特設の氷の床が広がっていた。
「はーい!そちらの4人組は今回の『聖夜の氷走祭』参加されますか?」
「はい!」
「ありがとうございます!こちらへどうぞ」
スタッフに案内され会場の中に入る4人。スケートリンクの利用方法やスケートの滑り方などをレクチャーしてもらい。氷の大地に立った。
「お嬢達上手いっすね」
「まぁ私は経験あるし」
「スタッフさんの説明わかりやすかったね」
美波の反応に苦笑いの2人。
「おわ!」
「おい御使!掴むな!!」
盛大に転げ落ちる2人。
「あんた達。そんなんで『聖夜の氷走祭』参加出来るの?」
「ハハハ、イベント開始前にはなんとかします」
「・・・・ハア。下僕、私が滑り方を叩きこんであげるからついてきなさい」
「ありがとうございます。お嬢様~」
「美波!御使を頼むね」
「えっ!私スケートなんて教えれないよ」
「サポートすればいいのよ」
「わっわかった。じゃあ琢磨よろしくな」
「いやこちらこそよろしく」
(いい感じじゃないか)
(本来なら琢磨さんがリード出来たら良かったのですが、こと運動面に関しては致し方ありませんね)
練習開始から1時間。ようやく立てるようになった琢磨。
「そうそうそんな感じ」
恐る恐る1歩踏み出す琢磨。
(2人とも無意識の内に手つないでること忘れてるな)
(よい兆しですわ)
「どうだ?琢磨」
「正直1人で滑るのは怖いな」
「大丈夫だ。私がついてる」
「・・・・。」
「・・・・・!?そっそういうことじゃなくて私が滑れるまでサポートするって意味だかんな」
「おう、ありがとう。・・・・・にしても流石東条早いな」
「どんな教わり方したらあんなに滑れるようになるんだか」
「ウオー!お嬢様ストップ!ストップ!!」
「休んでる暇なんてないわよ!下僕」
「はい~~~」
氷の大地を縦横無尽に駆け回る2人を唖然と眺める2人であった。
イベントに参加して3時間。遂に『聖夜の氷走祭』が始まった。
年少の部の様子を眺める4人
「わぁー楽しそう!」
「可愛いわね」
「こんな無邪気に滑る子ども達を尻目に景品かけて競走するのか俺達」
邪念に駆られて参加していることに胸を痛める一同。
「優勝。するわよ」
「西宮?」
「このもやもやした気持ち。優勝という最高の結果で晴らそうじゃない」
成人の部は男女に別れ1グループ4人が4組あり予選1位通過者4人が優勝を賭けて走るという内容だった。
「男女5000円の計1万円か」
「どうやら予想より参加者が多かったみたいね」
「幸い4人とも別々のグループなんで、まだ総額獲得のチャンスはあるな」
「あんた達必ず勝ちなさいよ」
「勿論です!」
先に女子の部が始まる。
「どうした?御使見ないのか?」
「まだしっかり走れるわけじゃないから、少しでも練習しとかないと」
「そうか。任せろ2人の応援は俺がお前の分までしてやる」
(ようやく滑り出せるようになったんだもんな。正直まだ競走なんて出来るじょうたたいじゃないよな)
(あの猿が優勝出来るならこんなにも琢磨さんが追い詰められる必要はないのですが、所詮あの猿も付け焼刃。期待は出来ませんものね)
「御使!やったぜ、お嬢様が優勝だ!!」
「そうか、じゃあ後は俺達の番だな」
「おうよ!」
準備に取り掛かる2人。
「琢磨。無茶すんなよ、まだしっかり走れるわけじゃないんだから」
「北川。ありがとう。ここまで来たらベストを尽くすさ」
(とは言ったものの、このままじゃ大衆の面前で恥をかくだけだ。どうする………)
「だぁーダメだった〜御使頼んだぞ」
「………。最善は尽くす」
スタート位置に立つ。腹は括ったはずだが、数多の負のイメージが頭の中を巡る。
(………任せろ)
(アクさん、まさか!?)
「よーい、ドン!」
審判の笛の合図と共に一斉に走りだす。
「御使………走れてるじゃねーか!」
「行けー琢磨!頑張れ!!」
先程までが嘘のように力強く走る琢磨。ギリギリではあるものの他の走者の転倒もあってなんとか予選を通過した。
「やるじゃねーか御使!」
「最初から本気出してよね、ハラハラしたじゃない」
「土壇場で凄いよ琢磨!!」
「ハァハァ、まっなんとか、なったかな」
「次の決勝も頼んだぜ御使!」
「あぁ………」
(御膳立ては整えたぜ、琢磨)
「…………」
(琢磨さん………)
「…………助かった」
(!?)(!?)
「次やったら………一生口聞かないからな」
(ヒーローになってこい!琢磨)
(行ってらっしゃいませ)
再びスタート地点に立つ琢磨。3人とも期待もあってか応援に熱が入る。
「よーい、ドン!」
「ッツ!!」
景品に向けて走者が一斉に走り出した………
「乾杯〜!」
『聖夜の氷走祭』を終え食事を摂る4人。
「残念だったな、結局お嬢の5000円か」
「御使、盛大にスタートで転けたものね」
「…………笑うな」
蒸し返えされ赤面する琢磨。
「なんで予選であんな滑れたのに決勝であーなるかね?」
「緊張し過ぎて足震えてたり?」
「もう!2人とも止めようよ〜」
「なによ、そういう貴女だって大笑いだったじゃない美波?」
「それは………そうだったけど」
「それよりも、下僕」
「!?はい」
「私が手取り足取り教えて決勝すら行けないってどういうことよ」
「それは……その……」
「今日のご飯のオーバー分は全部東条持ちだから」
「そっそんな〜お嬢様〜」
笑顔に包まれる4人。
「………でも良かったかも、結果こういうファミレスみたいな場所になって」
「北川?」
「だってミシュランの店とかでこんな大はしゃぎ出来ないじゃん」
「確かに」
「値段の高いところで、優雅に食べるの確かに憧れるけど、今はまだ皆で騒ぎながらご飯食べてるほうが私達らしいかな」
「………それもそうだな」
「そうね」
「良かった、北川がリラックス出来て」
「うん。ありがとう皆、私来年に向けて頑張るよ」
「その意気だ北川」
「頑張れよ。バスケ部のエース」
「うん」
「よし美波!じゃんじゃん食べなさい。東条の奢りよ」
「ありがとう。東条」
「なっ、待ってくれお嬢!北川もノリに乗るな〜」
美波を励ます為に参加したイベント。しっかりと美波の元気を取り戻すことに成功し、また1つ掛け替えのない思い出の1ページとして刻まれた。
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