第16話 勝負の最終日
予定数売切れ無かった2日目。最後の3日目琢磨の気合は人一倍だった。
「琢磨。よろしくな」
「あぁ、よろしくな北川」
琢磨の熱の入りように、美波が驚く。
「なんかえらく気合入ってんな」
「目標達成には今日しかないからな」
「無茶すんなよ。私達もいるんだからさ」
「そうだな………」
急に琢磨のテンションが下がる。
「どうした?」
「いや、その昨日は楽しかったのか?」
「昨日?………えっ!?琢磨見てたの?!」
「あぁ、西宮に行って来いって休憩貰ったんだその時だけ」
「そっか………どう、だった?」
「楽しそうで、いいステージだったよ」
「…………。まぁ、私みたいな人気者が衣装着てステージに立ったら皆イチコロよ!」
「自分で人気者言うなよ。でもおかげでリフレッシュ出来たよ」
「そっそっか!………良かった」
美波は恥ずかさそうにソワソワする。
「おーい北川、御使!そろそろ始まるぞー」
「!!じゃあよろしく北川」
「おっ、おう!任せとけ!!」
最終日。スタートからトップギアの忙しさとなった。
「プレーン3、チョコ2。次がプレーン2その次がイチゴ2、チョコ1…………」
「なんでスタートからこんなに入るんだよ〜まだ昼前だぞ」
「弱音吐いてないで焼け平野」
「助けて〜」
(前日までの傾向を鑑みて種類を3種類に減らしたから作りやすいはずだけど、なんだこの入り方前日までと全く違う)
「君!昨日のステージの娘だよね?良かったよ」
「ありがとうございます!」
「ここの店君のクラスの出し物なんだ〜。よしプレーン2枚」
「ありがとう御座います!」
(なんだなんだ、大盛況じゃないか)
(あの娘が受付している効果のようですね、並んでいる男共の目の色が嫌らいしですわ)
(確かに昨日のステージ良かったもんな、惚れ惚れしちまったもんな)
(…………。)
(なんだよテン?)
(ここにもいましたわ汚らわしい)
「琢磨!平野のサポートしてあげて。私と環奈でトッピングするから」
「助かる!けど接客は?」
「私が掛け持つ!大丈夫。私目当ての人は多少遅れても私が動き回る姿で誤魔化せる」
「わかった。頼む」
途切れることのないお客。スタートから総力戦になっていたメンバー達に次第にミスが目立つ
「ごめん。トッピング間違えた」
「大丈夫。慌てず作り直そう」
「すみません。頼んだモノと違うんですけど」
「ごめんなさい。すぐ作り直します。」
「御使。あと何枚焼けばいい?」
「平野。遅れてるから多めに焼いておいてくれ」
「わかった〜。でもプレートが足りないよ〜」
(列はまだまだ続いてる。このままでは今並んでくれているお客さんも離れてしまう。目標達成にはこの列を途切れさせるわけにはいかない・・・・どうする?)
(お客さんの制限かけた方がいいんじゃないか?案内のやつに事情を説明させて目安時間伝えてコントロールしたほうが)
(そんなことしたら目標達成出来ませんわ。ここまで見た目に拘り過ぎたように感じます。多少見た目不揃いでも出来たモノを出していっては如何ですか?)
(こういうのはしっかり出さないとお客さんの信用無くすんだよ)
(お客さんなんて・・・・・今日までじゃあありませんか。ならば出せる分出した方がよいのではありませんか?)
(・・・・・琢磨?)
(完全にご自身の頭で堂々巡りしてますわ)
(・・・・・よし。決めた)
(アクさん?・・・・まさか!?)
「おい!まだかよいつまで待たせるんだ!?」
「すみません。もう出来ますので!どうする琢磨このままじゃ・・・・・琢磨?」
「ウォッシ!立花。焼に入ってくれ」
「このタイミングで!?」
「美波すまん。少し負担かけるぞ」
「えっ琢磨!?」
出来たパンケーキを何枚か持ち出す琢磨(?)
「お並びのお客さんでプレーンを買うつもりの方1枚400円ですどうぞこちらからもどうぞ」
「私、プレーン1枚だけなんだけど」
「どうぞ!ここから買えますよ!」
「いいのじゃ頂戴!」
「私も!」
「僕も!」
「ありがとうございます」
すぐに次の補充に戻る琢磨。
「次焼けてるか?」
「うっうん。でも琢磨前に並んでるお客さんほったらかしてはマズくないか?」
「焼けた分の一部こっち回してくれ。美波悪いけどそのまま接客とトッピングを頼む」
「それはいいけど、私が変わろうか?」
「いや、前に並んでくれてるお客さんに失礼なことしてるからな。お前の魅力で精一杯紛らわしてくれ」
「みっ魅力って、わっわかったよ」
「2-Bのパンケーキ出張販売です!プレーンのみですが如何ですか?」
「並ばなくていいのか、俺1枚くれ」
「ありがとうございます!」
「イチゴのやつ食べたいんだけど無いの?」
「すんません。チョコとイチゴは並んでください」
徐々に列は減るものの変った販売方法を聞きつけてかお客さんは途切れる気配を見せない。
「あれ、君あの時の?」
「あっ、先日はどうも」
(駅前のパンケーキ食べた時に一緒に騒いだ人・・・・)
「はじけてるね!そういうのもう一人の彼がやると思ってたよ」
「いや~能ある鷹は爪を隠すって感じですかね!」
「ハハハッ、なるほどね、パンケーキ買える?」
「プレーンでいいなら」
「約束通り食べ比べさせてもらうよ」
「ありがとうございます!」
突然後ろから肩を掴まれる琢磨(?)
「西宮。どうした?」
「あんたこんなところでなにしてんのよ」
「出張販売だ。」
「店は?」
「カツカツだ。西宮悪いんでけど入ってくれないか?美波が孤軍奮闘中なんだ。最大限売り切ろうと思ったらこれしか思いつかなかった」
「ったくあんたはどうして急にらしくないことやりだすのかしらね」
「さっさあ~」
「下僕」
「ハッ!お嬢様」
(この猿!どこから出てきた!?)
「御使を手伝いなさい」
「ハッ!ってこった御使。少し分けてくれ」
「・・・・・東条どうした?ってあれなんで俺パンケーキ持って店の外に?」
「なんだよ御使笑かすなよ」
「パンケーキ頂戴!」
「えっあの」
「・・・・・代われ御使」
「東条。」
「出張販売は俺がやる」
「あぁ、助かる」
「琢磨次焼けてるぞ・・・・琢磨?」
「なによ突っ立って」
「いや・・・・・北川。出張販売代わってくれ」
「えっ、でも待たせてるお客さんをどうにかしないとって琢磨が」
「東条と西宮が入ってくれた。人は足りる。だから北川は店に近い距離で出張販売してくれ案内と兼任。西宮は案内メインでトッピングをフォロー。俺がトッピングメインで入る最後のスパート皆頼んだ!」
お昼も終わりかけてもぞくぞくやってくるお客さん。終日盛況で最終日の販売を終えた。
「827食か、2日目がひびいたな」
「あぁ・・・・」
片付けも終わり、琢磨は東条と沈みかける夕陽を見ながら腰を下ろす。
「でも屋台出店したクラスで売り上げ2位だぜ。それってスゲーことじゃないか」
「・・・・・。」
「俺、御使に感謝してるよ」
「?」
「文化祭ってただ遊ぶだけの行事だと思ってたからさ、正直屋台とかめんどくさいと思ってた。でも御使の取り組む姿勢になんか感化されて手伝ったり、屋台で働いたりして。スゲー楽しかった。ありがとう。」
「お前・・・・。」
「来年は立てた目標達成出来るといいな」
「そうだな」
クラスの目標には届かなかった。だが琢磨はこの文化祭でなにかを得ることが出来た。少なくとも2体はそう感じた3日間であった。
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