第15話 荒れ狂う中日

(懸念的中か…………)


2-B組の2日目は大荒れであった。


「だから先にチョコとイチゴって言ってるでしょ武田!」


「うるせーもっとわかりやすい注文の取り方しろ上杉!」


「お客さんの注文に文句つけんじゃないわよ。………すみません。もう少々お待ちください」


「雪。煩いお客さんに迷惑よ」


「ちょっと沙織。なんで私なのよ?煩いのはコイツでしょ!」


「なんだと、お前は客に愛想振り撒いてろ」


「雪は接客に集中して、武田はトッピング間違えないで。パンケーキ焼く方の身になって」


「んだと!ならそこ代われ西宮。俺が焼く」


「貴方が焼くと基本焦げたモノしか焼けないから駄目よ」


「3人とも各々の役割に集中してくれ………またか」


「おい御使どこ行くんだよ!」



「おっ!パンケーキ?何処でやってんの?」


「えっと、あっちです」


「あれ上手い?」


「クラスの皆で一生懸命作ってるので是非食べてください」


「お嬢さんが食べさせてくれたら何枚でもいけちゃうんだけどなー」


「えっとあの、そういうのはちょっと………」


「うちのクラスメイトになんか用事ですか?」


「!いえ」


「良かったらどうぞ列に並んでください」


「…………ありがとうございます。御使さん」


「気にするな落合。じゃあ俺戻るから」


(武田と上杉。このクラスで一番自己主張の激しい男女をよりによって同じ時間の一番売り時に配置するしかなかったのが痛い。案の定作業効率が悪くて見た所いくら時間のかかるパンケーキでも提供の遅さに苛ついてるお客さんも若干数いるか。西宮が仲裁で入ってくれたけど視点が第三者だから感情的になりやすい2人に余計な油を注いでしまってるな。落合を入れようにも。2人に苦手意識を持つ落合をあの荒れた現場に入れるのは酷か)


「なにやってんだよ!御使さっさと手伝え」


「ごめん」


「ねー、早く出してよ、お客さん怒ってるんだけど」


(武田の接客はお客さんに不満を抱かせてたから出来れば接客に戻したくないが、原因は明らかにこのトッピング。武田が苦戦してるからだろう………どうする?)


(全員で一致団結して出すのがいいんじゃないか?)


(ただでさえ現在不満を抱いているお客様もいらっしゃるんですそんなことしたら、お客様を放ったらかしたなんて思われ余計に不満に溢れてしまいますわ)


(この男子を案内に回せば)


(案内の娘がこの自己主張激しい女に苦手意識を持ってるんです萎縮して逆効果ですわ、それにあの男。案内の仕事を放棄してどうせナンパしますわ)


(それはわかんないだろ?)


(昨日、自分のグループの輩と女性をナンパしていたのを目撃してますわ)


(じゃあどうすんだよ!)


(それを考えてるところですわ)


「あ〜〜糞」


「なんだお前いきなり」


「あっごめん」


「勝手に苛つかないでよね、ムカついてんのはこっちもなんですけど、ねえ先頭のパンケーキまだ〜」


「御使。変わって」


「西宮?」


「いいから早く!」


「わかった」


「雪、トッピングに回って」


「はぁ〜?なんで沙織が仕切ってんのよ」


「ここが遅れてるのは目に視えてるでしょ!あんたの揉める姿はお客さんに悪印象なの、だから武田と一緒にさっさと用意して」


「私がなんでこいつと」


「俺もコイツとはごめんだね」


「私が接客しながら、トッピングもフォローするから早く!!」


西宮の普段は見せない気迫に2人は押される。そして西宮はそれを卒なくこなした。


(西宮………)


「おい、御使!パンケーキ遅れてるぞ」


「ごめん。」




「お疲れ様。皆、次の人達に引き継いでくれ」


「いや西宮お疲れな、お前のお陰で助かったよ、じゃあな」


「沙織があんなにムキになるとはね。お陰で助かったわ、一緒に出し物周りましょ?」


「あとから合流するね」


「そう。じゃあ用意出来たら連絡してね」


「えぇわかったわ」


「お2人ともお疲れ様でした。」


「落合さん。案内ありがとう」


「いえいえ、寧ろ大変な時に力になれず、すみません。」


「あの2人、気難しいし現場にいても大変だったと思うわ。それに落合さんのお陰で途切れずお客さんが来たのだもの自信を持って」


「御使さんが私に気を配ってくれたお陰です。お陰で人と話すの苦手な私でもなんとかやれました。」


「いや、俺は大したことは」


「さっ、落合さんも文化祭楽しんで来て」


「はい。お2人も頑張ってください」


「えぇ」


「…………」


「どうしたの御使?」


「助かったよ西宮。ありがとう」


「あの2人をコントロールするのはなかなか手が焼けるからね、でも出来たらあの判断は貴方にやって欲しかったわ」


「お前が接客をやってくれるとは思わなかったよ」


「嫌だけどね、いざとなればやるわよ」


「…………そっか」


「……………辛気臭いわね。あんたちょっと休みなさい」


「えっ」


「1人で背負い過ぎなのよ、たかが祭りで」


「でも」


「丁度、体育館であの娘が出番ね行ってきなさい」


「西宮………」


「誰にでもリフレッシュは必要よ。その間は見ててあげるから」


「わかった。ありがとう。」


失意の中で体育館へ向かう琢磨。扉の向こうは大いに盛り上がっていた。


(なんでこんなに盛り上がってるんだ?)


扉を開けるとそこは別世界が広がっていた。


(なんだこれ?部活の演目なのか?何部の?)


そこには彼女がいた。


(コンサートなのか………北川楽しそうだな)


会場に残る熱気。無邪気に踊る美波。その姿に琢磨は文化祭の本来の楽しみ方を楽しむことが出来た。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る