第13話 祭り前夜
「ついに明日からだな御使」
あれから順調に準備が進み文化祭は明日に迫っていた。
「まさか御使が主導することになるとはな」
「それはお前の悪ノリのせいな」
「いいじゃんか、こうして手伝ってるんだから」
紅の輝きが水平線へ沈む頃、準備する教室は2人だけとなっていた。
「でも良かったのか?皆帰して、作業まだ残ってるんだろ?」
「屋台の用意は終わってるし、今やってるのは明日使う機材の確認だ。人出はいらない。皆には明日から頑張ってもらうさ」
「そうか。でもよ流石にお前ずっと屋台番するってどうなのよ?」
「なにかトラブルがあった時迅速に対応した方がいいからな、それに実際に作業する時間は皆と変らない。」
「そんなことしてたら都合良く駆り出されるぜ」
「俺は結局誰かさんのお陰で今回の責任者になったからな。それくらい当然だ」
「余り抱え込み過ぎるなよ」
「抱え込んじゃないさ、現に今東条の力を借りてる」
「調子のいいこと言ってんじゃねーよ」
「フッ・・・。」
「お前らお疲れー」
扉が開くといつもの二人だった。
「北川に西宮。帰ったんじゃなかったのか?」
「部活のミーティングに参加してたの」
「確か、志望した部活が体育館でパフォーマンスするんだよな?バスケ部もやるのか?」
「そうだよ!バスケ部は2日目かな」
「あれ?西宮もバスケ部だっけ?」
「美波を待ってたの。あんた達はなにやってるのよ?」
「御使が機材の点検をするって言うから付き合ってるんだわ」
「なによ。嫌そうだった割に、結構ガチじゃない」
「こいつのせいとはいえ、責任者だからな俺は」
「手伝えることあるか?」
「ありがとう北川。大丈夫。これで終わりだから」
「そっか、なら一緒に帰ろうぜ」
「俺腹減った。どっかで食べていかねーか」
「いいね!行こー行こー」
「どこにすっかな〜」
「俺………行きたいところがあるんだがいいか?」
「!?」「!!?」「!!!?」
駅前にやって来た4人
「お待たせしました。当店自慢のパンケーキで御座います。ごゆっくりどうぞ」
4人の目の前に話題のパンケーキが置かれる。
「なぁ、夕飯にパンケーキってもの足りないんだが」
「でもラッキーね、ここパンケーキ夜には売り切れってこともあるのよ」
「でもまさか琢磨がパンケーキ好きだったとはな。なんか意外。」
「俺、この店始めて」
「えっ!尚更なんでここ?」
「味を知らずに比較出来ないなってずっと思ってたんだ。」
「味の比較って………ここでも明日のことかよ」
「悪いな」
「いや、そこまで明日の文化祭に賭けられるってスゲーなって」
「なんでもっと早くしとかなかったのよ?」
「…………こんなとこ1人で来るの俺のガラじゃない」
これまた余りに意外な理由におもわず吹き出す3人、琢磨の顔はトマトのように赤みがかる。
「ここへ来てなんだよその理由ー」
「うるせー」
「でも、私達となら来てもいいって思えたんだ?」
「………まあな」
「…………。」
「そうか、なんか嬉しいな」
「東条?」
「俺の御使との付き合いはホント最近だけど、あの一匹狼がそこまで思ってたんだなって」
「確かに、誰が唆したんだか」
「なっ、私は琢磨がクラスに早く馴染めるように話しかけてただけだよ」
「そういうことにしておきましょうか」
「ほっほら!折角のパンケーキ冷めちゃし食べようぜ」
「だな!俺ペコペコなんだよ」
夕飯に手を伸ばす4人。
「どうだ?琢磨」
「……………。」
「琢磨?」
「俺達が作るやつも負けてない」
「!?ずいぶん大きく出たな」
「俺達の値段設定でここまでこのパンケーキに近づけたなら。悪くないと思う」
「なるほどね。確かに私達の値段設定でこの味に彼処まで近づけることが出来ているなら。悪くないでしょうね」
「いや〜でもやっぱりここのは格別だよ〜」
「俺らのと比較するのが恐れ多いぜ」
「お待たせしました。ハンバーグセットです」
「えっ、誰か頼んだ?」
「あっオレオレ!」
「あんた、今からそれ食べるの」
「俺の本番はここからです。お嬢様」
「はぁー呆れた」
「ハッハッハ」
「フッ………」
「琢磨」
「なんだ、北川?」
「成功するといいな」
「成功させるさ」
4人だけの前夜祭その盛り上がりは気がつけば店内の人々をも巻き込み、笑顔に包まれた。
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