第12話 一歩前へ
「うちのクラスは屋台か」
秋の中間考査も終わり学校は文化祭の準備でもちきりであった。
「なんで、パンケーキなんて手間なモノにしたんだか。焼きそばとかたこ焼きで良かったんじゃないか?」
「そこはしょうがないだろ、うちのクラス女子の方が発言力強いし」
琢磨達クラスの出し物は決まったが、正直納得出来なかった
「あら、不満なのかしら」
「いえ、そんなことは御座いません。お嬢様」
「もっと手間が省けるモノでもよかったんじゃないか?」
「あら御使。決まり事に文句を言うのは勝手だけど決まった以上はしっかり従ってもらうわよ、それに反対ならその場で皆を納得させる意見を言わないと。傍観者として議論に参加しなかった貴方が悪いんだから」
「………。」
「これからは、思ったことはハッキリと伝えることね」
「………そうするよ」
「楽しみだね!屋台」
嫌な空気を察したのか美波が琢磨達に声をかける
「北川。楽しそうだな」
「そりゃあ文化祭楽しみだしな。ほらどんなパンケーキ作るか話し合ってるから3人も参加しよ!」
(琢磨。確かにあのお嬢さんの言う通りだと思うぞ、こういう場でしっかり自分の考えを伝えようぜ)
(アクさん。でも琢磨さんの考えていることの議論は終えてしまいましたわ)
(そんなことはわかっている。ただ聞いている限り、目標1万食とか値段1000円だのノリで決めている感じが凄いだろ?ここは琢磨みたいにもっと理論的な視点でだな)
(あら高みを目指そうとするのは悪いことではありませんわ。それに見合った食材を使えば値段もそれ相応にしてもよいのでは?)
(自分達の現状を把握した設定にしないと、残るのは借金だけだろ)
(借金とは大袈裟な、学生のお祭りなのですから好きにやらせてみては?)
(無責任なことを言うなテン。今のうちから社会勉強の一貫としてだな)
(だから物分かりが悪いですわね、アクさん。お祭りなのです好きにやればよろしいのです)
「お前ら喧嘩するな」
視線が琢磨に集まりやってしまったと琢磨は蹲る(うずくまる)。
「喧嘩?なに言ってる御使。方向性も決まって大盛り上がりじゃないか」
「なんだ御使。またお得意の独り言か?」
「辞めてよね突然。ビックリするわ」
クラスメイトは冷やかしの目を向ける。
「いや、俺はその………」
「そういやぁ御使。お前なんか意見ないのかよ?」
(東条お前………)
「なんか見たところ不満そうじゃないか?」
(俺を巻き込むな)
「不満って何?」
「出し物?それかパンケーキ?」
「…………。俺はその………」
「なんだよ御使。ハッキリ言えよ」
これからは、思ったことはハッキリと伝えることね。
「琢磨?」
「皆。はしゃぐ気持ちはわかるがもう少し現実的になろう」
ざわめくクラスメイト。
「3日で1万食って、まずこの文化祭で予想される来場者は何人の予定なんだ」
「えっと、過去の文化祭の平均来場者数は4560人ね」
「それは1日でか?」
「いや3日間の合計ね」
「平均で目標の半分も来場者が来ないのに1万食は余りにも非現実的な目標だ」
「来るかもしれないだろ」
「過去の平均でそれだけしか来てないのに来るって根拠はどこにあるんだ?だれか有名人でも宣伝してくれるのか?」
「いや………」
「多く見積もって目標を立てるにしてももう少し現実的な設定をしよう」
「じゃあ何食だよ?」
「例えば3日で5000食売ろうと思えば1日1700食な訳だけどどうだ?」
「1700食ってヤバくね。俺飲食店でバイトしてるけど1つの商品が1日300食売れるだけでも相当大変だぜ」
「ということだ。」
「そうなんだ。ということは3日間で1000食でも売れたら結構凄いってこと?」
「そうだ。俺は高い目標を立てるならそれくらいが現実的だと思う」
「確かにな」
「あと1食1000円って、俺達はミシュランに乗るようなパンケーキでも作るのか?あのテレビで紹介されたことある駅前で人気のパンケーキいくらだ?」
「確か800円くらいだったような」
「俺達素人があの駅前のパンケーキより上手いパンケーキを作れるのか?」
「結構厳しいかも」
「流石に無理じゃね?」
「私800円でも高いかもって思うもん」
「それにこの文化祭の屋台の平均設定価格知ってるか?」
「500円以上とか全然無いよな」
「それだけの価値あるパンケーキを俺達で作れるか?」
「無理だな」
「あー無理かも」
「でもよパンケーキ500円以下ってそれこそ作るだけで赤字じゃないか?」
「だから俺は今出ている何種類もパンケーキ作るって案はいいと思う。500円をベースに使う食材によって+αで値段設定すればいいと思う。」
「なるほどな」
様々な意見が飛び交うようになったクラス。それを見た琢磨は我に返ったように引っ込んだ。
「やったな御使。」
「東条お前、余計なことしゃがって」
「やるじゃん琢磨」
「北川。ごめん皆盛り上がってたのに」
「いいんじゃないか?悪ノリしてる感じあったしストッパーは必要だったよきっと。それに焚き付けたの私だし」
「なによ、しっかりとした意見あるんじゃない」
「西宮ありがとう。お前のお陰だ」
「あらそう」
「でもあれくらいの意見。お前でも出そうだと思ったけどな」
「私こういうとき割りとノリに任せる方よ」
「そうなのか」
「貴方のような一歩引いた視点はこの悪ノリしやすいクラスには必要なんじゃないかしら?」
「だといいけどな」
「御使。もっと意見を聞かせてくれ」
「材料なんだけど、どっち使った方がいいかな」
「えっ、いや、その」
(なんだ琢磨。オドオドして)
(無理もありませんわ、琢磨さんこうやって誰かに頼よられた経験あまり無いですし)
(確かにな)
クラスメイトに囲まれ意見を求められる琢磨。その光景を2体は微笑ましく見守った。
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