第11話 あの日見た空

「もうすぐ祭りだな〜」


夏の終わりも近づき、ファーストフード店で課題を進める2人。


「課題に集中しろ東条」


「琢磨くん〜。わかってないね。いかに祭りというものが重要なものかを」


「自分の将来を決めるで大きな目安になる勉強の方が、俺には大事に思えるが」


「いやいや、夏の終わり各々の思い出の締め括りとして夏祭りは外せないでしょうが」


「いや、別に」


「なんだ〜ノリ悪いな御使くんよー。まさか………俺だけだからか?他に呼べばいいのか?」


「いや、そういう意味じゃ」


「あれ、琢磨達じゃないか?」


席を探す美波と沙織に出くわした2人。


「あれ?2人ともどうした?」


「美波の部活の応援」


「どうだった?」


「当然勝ったよ!」


「今年のバスケ部強いよな!これは冬のインカレ期待値高いんじゃないか?」


「そうだね。行けるとこまで行きたいよ」


「おーその勢いだぜ北川!」


(琢磨。なんかボーッとしてるな)


(あらあの小娘眺めてどうされたのですか?)


(もしかして琢磨。あの子の笑顔にやられてるんじゃ)


「うるさいぞ、お前達」


頭のなかで探りを入れてくる2体に思わず反応してしまう琢磨。


「なっなんだよ突然」


「あっ、すまん。独り言だ」


「脅かすなよ」


「だから、ごめんって」


「じゃあそういうことで」


なにかの話に一区切りがついていた。


「やったー、イカ焼き、綿飴、チョコバナナ〜」


ウキウキとした表情をする美波。


「あんた食い意地張り過ぎよ、美波」


「なんの話しだよ」


「なんだ御使聞いてなかったのか?祭りの打ち合わせだよ」


「いや俺は行くなんて…………」




「なんだかんだ、ちゃんと来るんだな」


「まぁ約束したからな」


「素直じゃないねー」


「余計なお世話だ」


「お待たせ」


浴衣姿の沙織に何故かノースリーブと短パンの美波


「えっ北川どうした?その格好」


「うん?いやー浴衣って動きにくいから苦手なんだよ」


「…………。」


「わからなくもないけど………」


「あら下僕。私の浴衣だけじゃ不服?」


「滅相も御座いません。お嬢様!」


「じゃあ行くわよ」


「はっ!」


「もう2人ともそのやりとりやめてよね。痛々しい」


「あら、美波嫉妬?」


「なっ、そんなんじゃないよ」


「冗談冗談。さあお祭り楽しみましょ」


「全く。あの2人は」


「よくあのやり取り続けてるよな」


「少しは周りの目を考えてやって欲しいよ」


「同感。」


「…………琢磨はあーゆーの好きか?」


「?なんか言ったか北川」


「なんでもねーよー。ほら私達も行こうぜ」


「おっ、おう」


射的や金魚掬い、屋台のご飯…………各々がまた新たな思い出を刻み込んでいった。


(琢磨。こんなところで休んでお前は踊らないのか?)


(皆さんと混ざるのにまだ抵抗がお有りですか?)


「ただ疲れただけだよ、あとガラじゃない」


(とは言いつつ、楽しそうに踊る3人を眺め続けるのな)


(素直じゃありませんのね)


「だから本当に疲れたんだよ。…………。」


(考え事か?)


「あぁ、こうゆう夏休みって始めてだったなと思ってさ」


(確かにそうですわね。琢磨さん家からほとんど外に出てませんでしたし)


「誰のせいだと思ってるんだ?」


(すみません。失言でした)


「でもさ、お前達の秘密を知って。お前達が少なからず助けてくれたのも少しはあるんだよな」


(!!まぁ俺の助けがなければ、琢磨も急にここまで友達増やすことは難しかったかもな)


(あら貴方はただ琢磨さんの状況を余計にややこしくしたのではなくて?アクさん)


「変わらず余計なお世話が大半だったけどな」


顔を引きつる2体。


「でも、ありがとう」


(琢磨…………)


(琢磨さん…···)


「勘違いするなよ、俺はお前達を別に…………」


「琢磨ー」


踊っていた美波が駆け足で近づいてくる。


「もうすぐ花火上がるって!行こ」


「あぁ。」


輪に戻る琢磨。夜空に咲く焔の花を見ながら語りかける東条。


「悪くない夏だったろ?」


「そうだな、ありがとう東条」


「おうよ」


琢磨の思い出にとってこの夏は忘れられない1ページとなった。








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