第7話 ジェットコースター
「悪いな長時間こんなところで」
「いいの、いいの。で次はどうする?」
ようやく回復する琢磨。美波は黙って側についていた。
「じゃあ………」
「あれは嫌」
琢磨の視線から察した美波は即座に拒否する。
「じゃあ………あれ」
「へぇーあーゆーの興味あるんだ」
「こういうテーマパークの定番って感じするし」
「なら行こ琢磨!」
「だから引っ張るな」
(取り敢えず、良い感じじゃないか?)
(そうですわね………)
(なんだテン。どうかしたか?)
(いえ、なんでもありませんわ)
回転する馬に黙って座る琢磨。
「琢磨〜楽しいか〜」
「…………」
美波は柵越しに手を振っている。
(どうした琢磨。返事してあげろよ)
(恥ずかしいんですわ、確かに高校生がはしゃぐにはちょっと無理がありますわ)
(でもよ折角あの娘楽しそうだしここは)
(あっアクさん)
「おう美波まるで白馬の王子様の気分だ」
「そっそうか」
周囲の失笑の目が美波に向けられる
(アクさん!なんてことを琢磨さんに恥を欠かせてどうするのですか!!こうなれば……)
「美波!·…サン。一緒に乗ろうぜー」
「いや!私は………」
「えっ、乗ってくれないの?」
(うぉい!テン何してくれてる)
「うぅ………わかった。待ってろ」
「あれ、いつの間に北川隣で」
気が付くと隣の回転するポニーに美波が座っていた。
「なっ!琢磨が誘ったんだろ!?こうなったら吹っ切るまでよーイエーイ」
「おっおう、いっいえーい」
異常なテンションで遊ぶ高校生達は注目の的となった。
「なんか途中からお互い変なテンションだったな」
「………お陰様でね、でっ次は」
「そうだな………あれなんてどうだ」
「いいね!楽しそう」
次のアトラクションへ移動する2人。
「これはな、こうして回して自分達の乗る台の回転を増やすことが出来るんだ」
「なんか本体も周ってるのに………目が廻りそう」
「へぇーならこうしてやるよ」
力任せにプレートを回す美波。2人の台は周囲と比べて何回転も周っている。
「どうだ!琢磨」
(面白そうじゃないか)
「いいね美波!もっと回すぞ」
「お客様回し過ぎは大変危険ですのでお止めください」
周囲に比べて異常な回転数でアトラクションは周り続けた。
「あー楽しかった!大丈夫か琢磨?」
「おう〜」
美波の肩を借り覇気の無い返事を返す琢磨。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫、次はあれにしようかな」
「えっ」
真っ黒な建物を目の前にし美波の顔がひきつった。
「なぁ琢磨。勝手に先に行くなよ」
「わかったけどよ、もう少し早く」
「ギャー!早く行け琢磨!!」
「おい北川押すな」
(いいこと思いつきましたわ)
(おいテンなにしようと)
「ふぅ、早く出ようぜ琢磨、あれ琢磨………琢磨!何処だよ!!置いてくなよ〜」
テンの悪戯で突然姿を消す琢磨。美波は半泣きのまま一目散に出口を目指した。
「1人で先に進むなんてヒドイぞ」
ようやく出口に出られた美波は思わず琢磨に当たる。
「悪い。でも泣きながらこっち来る北川なかなか新鮮だった」
「なっ!馬鹿じゃないの」
「あっ、いやそんなつもりじゃ」
(なかなか良い感じじゃないか)
(そうですわね)
(なんで不機嫌なんだよテン?)
(別になんでもありませんわ)
その後も数々のアトラクションを楽しんだ2人。気がつけば日は沈みテーマパークを後にする人達が目立つようになってきた。
「もうこんな時間か」
「あっという間だったな」
「そうだな」
「琢磨の色んな一面が見れて楽しかったよ」
「俺も北川の学校で見ない一面が見れて楽しかった」
「最後にあれいいか?」
美波の指さす箱に琢磨は見覚えがあった。
「あれってプリクラ?」
「こういうところで遊んだ時の定番なんだよ」
「いいけど」
(これは面白そうだ!行くぞテン)
(えっ、ちょっと!アクさん)
「あー楽しかった。琢磨本当に面白いよアンタまるで琢磨が3人いるみたいで」
「そっそうか?」
「だってこの動きやこのポーズ学校の琢磨だったら絶対しないもん」
「確かにな………結構ハシャイでるな俺」
「でも楽しんでもらえて良かった」
「えっ」
「ほら、琢磨って普段人と関わることを極力避けてるようにみえたからさ。こんなに楽しんでもらえると思わなかった」
「………実際普段は人との関わりを避けてるところはあるよ」
「やっぱりそうか」
「あぁ、時々自分でもなんでって行動を無意識にするから、それを他人に見られるのが怖いんだ」
「…………」
「でも、今日は北川のお陰でそういうの気にせず楽しめた。ありがとうな北川」
「そっか、なら良かった。………じゃあ帰ろっか」
「最後に1ついいか」
「えっ、なんだよ」
少し期待を寄せる美波。
「もう一回あれに乗りたい」
「はっ!?」
(えっ)(えっ)
琢磨の指さす方向を見た1人と2体は思わず目を点にした。
「ギャーなんで締めがこれなんだよー」
「いゃーこれが一番楽しかったからさ」
「私のドキドキ返せー」
「なんだって」
「なんでもねーよー」
こうして高低差の激しい1日は幕を閉じた。
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