第6話 嵐の初デート

思わぬ形で美波とデートをすることになった琢磨。


「なぁ、琢磨はどういうアトラクションが好きなんだ?」


「こういうところ初めてだから、よくわからない」


「そうかじゃあ気になるアトラクションは」


「いや別に………」


(おい琢磨!嘘でもいいからなんか答えろ)


(いえ、興味が無いのに無理して行くのはむしろ相手を傷つけますわここは美波さんに任せましょう)


2体のガヤに答えたくなるが、グッと堪える。


「そっか、じゃあ私選んでもいいか?」


「いいぞ」


(おい!ここは男上げるチャンスだろ)


(これで琢磨さんは余計な事を考えずに済みますね)


「決めていいと言われたものの、どこにすっかな~」


「観覧車」


「えっ」


(えっ?)(はっ?)


琢磨の突然の提案に目を丸くする1人と2体。


「観覧車はどうだ?」


「ちょちょちょ、まだ早くないかー観覧車は」


(なに言ってんだ!琢磨!!)


(そうですわ!流石にまだその段階では)


「いや案内版見たところでイメージ湧かないし、実際見るには高い所からの方が全体見渡せてかつどんなアトラクションかもわかっていいんじゃないか?」


「なっ、なるほどなーそうしようか」


思わぬ角度からの提案に安堵する1人と2体。


(これまさか俺の意見を汲み取ったのか?)


(そうですわ、アクさんのせいで変な流れですわ)


「ちょっと静かにしててくれ」


「えっ」


我慢ならず思わず答える琢磨。


「あっ!すまん北川独り言だ、気にしないでくれ」


「そっか、いつもの独り言か」


「そっそうだ!」


手を繋ぐとそのまま美波は走り出す。


「なら急ごうぜ!」


「おっおい走らなくてもいいだろ」


(良い娘だな〜)


(そっそうですか?琢磨さんが困ってますわ)


早速観覧車に乗る2人。しかし状況は2体が予想した通りであった。


(これはマズイ。琢磨はとにかくあの娘もこの状況に慣れてないのか外見たりモジモジしたり落ち着きないぞ)


(どうしますの?この密閉された空間もまだ半分も到達していませんわこのまま終わりは苦痛ですわ)


(やるしかねー)


(アクさん………まさか!?)


(悪い琢磨!)


「綺麗だな、これがこの町の町並みってやつか」


「はっ?いやいたってごく普通の町並みだろ」


(アクさんなんですかそのギザな言い回しわ)


「俺はこういう場所に始めて来るからよ、この高さで観るこの町はそう………新世界だ」


「どうした琢磨?どっか頭ぶったのか?」


突然の琢磨の変容に美波は戸惑う。


「でもやっぱりこの町が新世界に見えるのは、ここに連れて来てくれたのが美波だから…かな?」


「なっ」(なっ)


「いやだなどうしたんだ急に」


美波の頬が赤くなる。


(なにを馬鹿なことをやってますの〜)


天辺に近づくにつれ顔を美波に寄せる琢磨(?)


「おっおい琢磨」


(ちょっとアクさん、早すぎですし、やり過ぎです)


「ダメー」


強烈なビンタが密閉された空間に響き渡る。


「痛てーなっなんだよ行き成り」


(いてー、憑依解除するくらいの強烈ビンタかよ)


(なにやってるんですかアクさんは、馬鹿ですか?馬鹿なんですか?馬鹿なんですね!)


(そんなに馬鹿馬鹿言わなくても………)


「いきなりって・・・・・いきなりそんなことされたら誰だってそういう反応するよ」


「………?悪い。また俺突拍子も無いことを」


「………まぁ気にするな、緊張してるんだろ」


「あっ・・・・・えっと、まぁな」


「いいか、懐の深いこの北川美波様だから、これで済んだけど他の女の子には絶対やめろよ」


「おう」


否応なくくる沈黙を美波は打開しようと試みる。


「でっ琢磨。どうだ?気になる乗り物はあったか?」


「うーんあれかな」


「えっ!?」



次の乗り物に行き着いた2人


(おい琢磨。ここは辞めた方がいいぞ、あの娘の反応。きっと絶叫系苦手だ)


(まあ絶叫系はこの手の定番ですし、私が案内するって言っていましたし引くに引けないのでしょう。このまま楽しんで苦手を克服してもらいましょう)


「美波体調悪いのか?」


「いや全然!早くのっ乗ろうぜ〜」


ぎこちない美波に流石の琢磨も異変を感じる。


「変なテンションだなお前」


「そっそうか?」


(琢磨気付け!気付け)


(…………)


「なぁやっぱり辞めておくか?」


「なっ、なんで」


「苦手なんだろ?無理するな」


「折角ここまで並んだのに勿体ないし大丈夫だよ!心配してくれてありがとうな琢磨」


(良しいいぞ琢磨)


(………)


(テン?)


「まさか、お前が絶叫系苦手なのは意外過ぎてビックリだけどな」


「!?」


(なっなにやってるんだテン!)


「にっ苦手じゃないし、何回でも乗ってやるよ!」


「おっ、じゃあ俺が満足するまで頼むな」


「えっ……」



(あれ?いつの間にこの乗り物に乗ってる。………おー早いなー。あれ?何か大切な事を忘れてるような)


隣で琢磨の腕を掴む美波


「あれ?北川こういうの苦手なんじゃ」


「そうだよ!クソー何回も乗り回しやがってーぎゃあああああ〜〜」


施設内に美波の絶叫が響き渡った。



「ハア・・・ハア・・・・・あと何十回乗ればいい?」


「すまん。満足した。ご飯にするか?休憩がてら」


「おう、助かる」


フードコートで昼食をとる2人


「よく食べるな」


美波の食べっぷりに目を丸くする琢磨。


「まぁな、食べるのは好きだ」


「そういえば北川ってバスケ部だっけ?」


「そうだよ、知っててくれたんだ」


「まぁ北川人気者だしな」


「へへっまぁーな」


「そこは謙遜しろ」


「事実なんだしいいじゃない」


(なんだなんだいい感じじゃないか………テン)


「あまり天狗になり過ぎないことだな」


「うっうん」


(おいテンなにやってんだー)


「でもそのその自信に満ち溢れた天真爛漫さが美波の良いところだけどな」


「そっ、そうかへへ」


(ちょっとアクさん!)


激しく入れ替わる琢磨の感情に美波は困惑しながら昼食を終えた。



「おーい琢磨琢磨!」


「えっ」


「食べ終えたと思ったらいきなりウトウトしだしてそんなに疲れたのか?」


「すまん。何分緊張と初めてこんなに歩き回るからなちょっとペース配分間違えたわ」


「見た目によらず体力無いのな」


「!?笑うなよ」


「ごめん、ごめん。いいよゆっくりしよ」


「あぁ、ありがとう」


ハチャメチャながら順調に進む初デート。だがジェットコースターはまだ終わらない。

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