第4話 隠された力

「おっ、おう琢磨。早いじゃん」


北川が到着すると琢磨は既に待ち合わせ場所で読書をしながら待っていた。


「まぁ、誘っておいて遅れる訳にはいかないからな」


「へぇー気遣いとか出来るんだ」


琢磨の顔を下から覗く北川。


「うるせー、でも本当に良かったのか?俺と一緒にこういう場所って」


「クラスに馴染めないクラスメイトが意を決して誘ってくれたんだから。人気者の私としてはその心意気に応えなきゃね」


鼻高らかに笑う北川。


「余計なお世話だ。あと自分で人気者とか言うか?普通」


「まっ!まぁいいんだよ、ほら行くぞ!ここは友達と何度か遊びに来たことあるから私が案内してやるよ」


思わね形で訪れた人生初のデート。しかし琢磨はあまり乗り気ではなかった。




「北川?なんで俺の連絡先知ってる?」


昨夜。突然かかってきた知らない電話番号。


相手は北川だった。


「えっ、琢磨が教えてくれたんじゃないか」


「えっ」


「それで明日なんだけど………」


「待て待て俺が!?北川に教えた?連絡先を」


「そうだよ。置いていった紙切れにここに連絡してって書いてあったから連絡したんだけど」


(どういうことだ。何故俺がそんなことを)


身に覚えのない行動に動揺する琢磨。


「それで明日ってなんのことだ」


「なんのことだって、琢磨が放課後に意図を聞きにいった私に明日時間をくれっていってさっさと帰ったんじゃないか!?」


(放課後に北川と約束?全然覚えてないんだが)


「………そうだったな」


琢磨は、取り敢えず話を合わせる。


「でぇ、明日がなんだよ」


「それは………その…………」


(デート♪デート♪)


(さぁもうひと押しですわ)


「あー煩い!」


「なっなんだよ突然叫んだと思ったら煩いって」


(しまった!?ついあいつらに反応しちまった!?)


「いや、北川にじゃなくて………あーもう。明日俺に付き合ってくれ」


「えっ」


「直ぐにかけ直すから一旦切るぞ、じゃあな」


「おっ、おい琢磨」


強引に通話を終えた琢磨。2体は冷たい視線をひしひしと感じていた。


「どういうつもりだお前達」


(なんのことだ?)


(さぁ〜?)


先程のささやきで琢磨は確信を得た。


「昼頃にお前達に説教してからその後の記憶が無い。それにさっきのちゃちゃ入れ。なにをした?」


(私は関係ありませんわ琢磨さん。やったのはアクさんですから)


(なっズルいぞテン。お前も同意してやったんだろ!)


(私は同意などしておりませんわ、あの手はアクさんが勝手にやったことですわ)


(お前だってその後の動向を茶化してただろ!)


(それは………)


「お前達の口喧嘩はどうでも良いんだ。でぇ悪魔の言った[あの手]ってのはなんだ?」


(悪魔って!?心外ですわ琢磨さん。私は天使の『テン』です)


「見た目悪魔だから悪魔でいいだろ、紛らわしい」


(なっ!見た目で悪魔と呼ばれるのは天使としての誇りが譲れませんわ)


「あー面倒くさい。おい天使!お前なにしたんだ?」


「それは家主である琢磨にも言えないな。」


「そうか………じゃあ俺はこのまま北川への連絡はしなくてもいいか」


(おいおい、それはマズいだろ琢磨。掛け直すってこっちが電話切っておいてその後連絡無しってのは)


「別にどうってことない。元々俺の意思で北川に連絡したわけでもないし」


(琢磨の意思かは別として相手を待たせたままドタキャンはダメだろ!)


「[俺の意思とは別として]ってことは、やはり北川を誘ったのは俺じゃないんだな」


(それは………。はぁしょうがない。)


(ちょっとアクさん。ダメですよ)


(仕方ないだろ?これは俺達にとってもチャンスなんだから)


(…………。どうなっても私は知りませんからね)


([アレ]をやった時点で俺達は同罪だよ。テン)


沈黙を貫くテン。アクは言葉を選びながら慎重に話した。


「話す気になったか?」


(悪かったよ琢磨。俺が一時的に琢磨の身体を乗っ取ったんだ)


突然天使(?)から言われた非現実的な現象に琢磨は驚きつつも平静を保つ。


「身体を乗っ取る?…………成る程なそれで俺には今日の記憶が一部無いのか」


(そうだ。そして乗っ取ったのには俺達にとっても大事な事情があるからなんだ)


2体に取っての大事な事情。


それは琢磨にとっても重要な意味を持つ事柄となったのである

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