第3話 嵐の前触れ

授業中の教室。突然扉が開いたことに誰もが驚いた。それもそのはず羞恥心で飛び出して数時間行方知れずの男が突然戻ってきたからだ。


「御使。どこに行ってたんだ?」


あまりの予想外の出来事に担当教師が恐る恐る尋ねる。


「先生!御心配おかけしました。御使琢磨。これより授業に戻ります」


あまりの変容ぶりに凍り付く教室。その空気をものともせず琢磨(?)は座席に座った。


「ねえ琢磨。どうしたの?」


戻ってくると思っていなかった。美波はすかさず琢磨(?)に尋ねた。


「美波。さっきは気にかけて探してくれてありがとうな!もう大丈夫だ」


「ちょっ、ちょっとやめてよ」


「えっ、美波さっきの仮病だったの?」


「しかも、御使探してたってマジ?」


「そっそんなんじゃないって!?ヤダな〜」


浮ついた予感にクラスメイトが賑わう。


「おいおいマジかよ、北川って御使のこと好きなのか?」


「そっ、そんなんじゃないって誤解だって」


「お前達静かにせんか!」


この時間は最早授業どころではなくなっていた。


周囲の興味を他所に美波は琢磨を連れ出し『琢磨の居場所』に向かった。


「どっどうゆうつもりだよ琢磨!皆変な誤解しちゃてるじゃないか」


「どうって、気にかけて探してくれた美波に感謝の意を示しただけだぞ?」


「お前どっかに頭ぶつけたのか?なんだか変だぞ!いつもの琢磨じゃないみたいだ」


「なに言ってんだ美波。俺は俺のままだぞ。」


「いやいや普段の琢磨なら絶対そんなこと言わないし、あんな目立つことしない。……でも悪くないかも」


「なんか言ったか?」


「なっなんでもねーよ、ここで頭冷やしてろ。じゃあな」


足早に立ち去った美波。


「これは………脈アリだな」


立ち去る美波を見守りながら琢磨(?)は不敵な笑みを浮かべていた。



(たっ琢磨のやつ急にどうしたんだよ。訳わかんないよ!………てかさっき私のことずっと名前で呼んでた?ついに私のこと名前で!?キャー)


一方北川は足早に教室に戻った。


「あれ美波。御使と一緒じゃないの?」


再び始まるクラスメイトの冷やかし。


「なっ!なんで琢磨と一緒前提なのさ!?」


「だって貴女が御使連れ出して行ったじゃない?告白したんじゃないの?」


「だから違うってば!冷やかさないでよ」


すると再び勢いよく扉が開く。再び2人に注目が集まる。


美波に近づく御使(?)。


「さっさっきはごめん。俺舞い上がってた、忘れてくれ」


「おっおう………」


座席に座る御使(?)。


「なんだ。変人によくある突発的なものか」


「うわーイタイわ御使。美波気をつけなよ」


「うっ、うん」


(なにそれ人に恥かかせておいてそれってなくない!?なんなのよ琢磨………あれなにこの切れ紙)


北川は不思議そうにその切れ紙の内容を確認した。



「………あれ家。いつの間に俺帰ったんだ?」


琢磨は気がつくとベットに寝ていた。


(なんか、色々とやらかしたような気がするのは気のせいか………携帯に電話?)


「もしもし」


「おっ、おう琢磨。」


「北川?なんで俺の連絡先知ってる?」


「えっ、琢磨が教えてくれたんじゃないか」


「えっ」


「それで明日なんだけど………」


翌日。なぜか琢磨は美波とテーマパークにいた。

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