第2話 昔の彼女と主人公

第2話


私の幼馴染、一崎 人識………ひーくんに出会ったのは、幼稚園の頃だ。


何でも、私のお母さんとひーくんのお義母さんが再従姉妹の関係らしく、そのお陰で私達は出会えた。


「よろしくね、ひーくん♪」

「うん、ひまりちゃん♪」


あの頃のひーくんは可愛らしかった。


一人称も僕だったし、私の後ろをトコトコ着いてきた。


私はそんなひーくんをほっておけなかった。


だから、そんなひーくんと一緒に居続けた。


────でも、そんな事が出来たのは最初だけだった。


「ムカつくのよ、アンタ。」

「え?」


理由は未だに解らない。


けれど、私は小学校に入ってから数年経った後にイジメられ始めた。


最初は抵抗したけど、次第にそんな気力は無くなっていった。


友達と思っていた人は離れ、私にはひーくんしか居なくなった。


でも、私はひーくんに心配をさせちゃいけないんだ。


────そんな思い上がりをしていた。


「うぅ………」


そんな中、私は大切なストラップを奪われ、無理矢理に捨てられた。


探しても探しても見つからず、途方に暮れていた。


「何で私がこんな目に………」


訳が解らなかった。


何で私だけが酷い目に合わなきゃいけないのだろうか?


幾ら考えても、答えなんて出てこなかった。


先生に頼っても………


「嘘を吐くのは駄目だぞ、二崎。皆はしてないって言ってるんだからな。」


────と、言っていた。


小さいながら、私は解ってしまった。


この学校に味方なんて居ないんだ、と………


「お母さん………お父さん…………」


家族には心配させたくない。


だから、こんな事を話したくない。


どうすれば………


「此処は………」


気が付けば、私とひーくんがよく遊んでいた公園に辿り着いていた。


そして、無意識でジャングルジムの一番高い所にまで登っていき………


(此処から落ちれば、楽になれるのかな?)


夜にしているお巡りさんが出るドラマで、高い所から飛び降りる人が居た。


その時はよく解らなかったけど、その人達が楽になる為に落ちてるのは知っていた。


だから、私は………


「危ない!!!」

「えっ!?」


落ちた先に、ひーくんが居た。


私に潰されたひーくんは、「ぐぇ………」と出して良い訳がない声を上げて朦朧としていた。


そのせいで、私はパニックに陥り………


「大丈夫、大丈夫だよねひーくん!?」


思いっきり、揺さぶり声を掛け続ける。


だが、全く起きてくれない。


そのせいで、錯乱していた私は………


「そうだ、キスだ!確か、こういう時は人工呼吸だよね!」


そもそも、人工呼吸は息をしてない患者にやる応急処置である。


だが、幼い上に、混乱していた私は、うろ覚えな知識でそれをやったのだ。


────今思えば、ファーストキスはもうちょっとロマンチックなのが良かった。


「うぅ、陽葵ちゃん?」

「あっ、起きた!良かったよ、ひーくん!!」


泣き喚き、ひーくんに抱きつく私。


「く、苦しいよ陽葵ちゃん………」

「あっ、ごめん。」


そのせいで、私はまたひーくんを苦しめてしまったけど………


「はぁはぁ、僕は大丈夫。それよりも、陽葵ちゃん………」

「な、何かな、ひーくん?」


この時、少し怖かった。


ひーくんに私の弱い所を見せたくなかったのだ。


「何があったの?何であんな事をしようとしてたの?」

「それは………」


答えられなかった、答えたくなかった。


でも、そんな私に………


「答えて、陽葵ちゃん!」


ひーくんは私の肩を掴み、真っ直ぐ見据えてきた。


少し興奮してるのか、肩に掴み掛かる手に力が篭ってて、少し痛かった。


でも、少しだけ、ほんの少しだけ………


────カッコいいと思ってしまった。


続く

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