19 腐人の行進-歩く血腐人-1

残酷描写ありとしていますが一応。

この話の後半部分、少し表現が生々しいかと思います。

その点に注意して、少しでも気分が悪くなったら読むのをお止めください。

――――――――――


 森の方から不気味な雰囲気と強烈な腐臭が出始めると、周囲のプレイヤーが少し顔を顰め始めた。


 少しすると、森からハイゾンビとゾンビが5:5ぐらいの割合で現れた。その中にはボスらしき姿はない。が森の奥からは纏わり付く様な雰囲気が未だ漂っているから、ボスが居ないなんてことはないはずだ。


 ゾンビたちが迫ってきてそれに対応するという、先ほどまでの焼き直しの様な光景となっている。少し違うところと言えば、迫ってきているゾンビたちの一部が何らかのオーラのようなものを纏っていて、ほんの少し強化されている点だろうか。

 何らかの術でその属性を付与されたのだと思うが、その属性が何なのかはわからない。オーラを纏っているゾンビを鑑定してみたが、強化などの情報は一切見受けられなかった。


 取り敢えずこれまで通り、タンクの弾いたゾンビや他のゾンビと距離のあるヤツなど、各個撃破で対応していく。

 普通のゾンビが強化された存在は、ハイゾンビよりは弱いがゾンビより強くなっているので、全体的に難易度が少し上がっている。が、それでもハイゾンビよりは弱いので簡単に倒すことが出来る。

 ハイゾンビが強化された奴は、普通にこれまでのハイゾンビより身のこなしが向上し、簡単には胸元の魔石を抉ることが出来なくなっていた。


 途中で、武器に魔力伝導率とかの項目があるのを思い出し、なんとなく剣身に魔力を纏わせてみた。すると魔力の色なのか少し黒い灰色を剣が纏い、その状態で強化ハイゾンビの振り上げられた腕に向けて振るうと、先ほどまでの苦戦は何だったのか、簡単にそれこそ普通のゾンビよりも柔らかいと感じるほど楽に斬れた。


 苦戦という苦戦はそれこそはじめのみで、次々とハイゾンビらを斬っていたが、前提としてこの攻撃力は魔力によるもの。魔力に限りがある以上、永遠にその状態を維持できるわけではない。

 魔力が数値化されていない以上、どのくらいの効率なのか詳しくは分からないが、感覚的に1回の魔力の補充で20体くらいは斬れているような感覚だ。普通に効率は良いと思う。


 効率は良いが体感で、3、4回補充するだけで魔力が尽きかける。現状の魔力の回復手段はMP回復薬のみだが、そのMP回復薬も無限にあるわけじゃない。今アイテムボックスにあるのみだ。

 このままだとボスが出てきたときに、疲れ切っている状態かもしれない。それはちょっとあれなので、この剣に魔力を纏わせる奴はボス戦まで取っておくか。


 取り敢えずこの技術はボス戦で使えると思うから周囲のプレイヤーに教えつつ、掲示板にも一拍遅れて投稿した。まぁ一定以上の魔力聖力操作技術が必要なのかもだけど。



     △▼△▼△


 魔力の温存をしながら、初めの通りにハイゾンビなどの相手をしていると、急に辺りの雰囲気が変化した。取り敢えず今相手をしているゾンビを片付けて森の方を見ると、暗くとも存在感のある人型が見えた。多分あれが今回のボスだろう。


「完全に空気変わったなぁ」

「そうですね」


 すぐ近くでゾンビを相手していたスヴァさんが近くに寄ってきてそう言った。それに軽く言葉を返し、森の手前に出てきた人型に鑑定を発動しようとしたが、距離があるからなのか、きちんと発動しなかった。


「この距離だと鑑定できないですね」

「まぁ鑑定せずとも、あれが今回のゾンビの親玉なんは間違いないやろ」

「それもそうですね」


 そう話しつつ少しづつ近寄ってきているその人型に集中する。近づいてくるにつれ詳しくその姿形を見ることが出来たが、推定ハイゾンビからの進化とは思えないほどに全然違う特徴が目に入った。


 その推定ボスは、頭から血を被ったように全身赤黒く染まっていた。そして右手には何らかの骨で出来ていると思しき所々赤くなっている白い剣を握っていて、左手には“何らかの手”を握っている。身長などは特段ハイゾンビなどと差はないが、だからこそ上げた3つの特徴が目立っているのか。


 そこまで観察したところで、唐突に比較的近くにいたタンクに向かって走り出し、左手に持った“手”で盾を掴んだ。“手”で盾を掴まれたタンクは急に盾を掴まれたことによって驚き、力を弱めてしまったのか次の瞬間には、盾が地面に落ちていた。それを持っていた腕と共に。


 それを為したと思しきボスは、右手の白骨剣を自身で斬り落とした腕に刺し、その状態で口元に持っていくと、そこから流れている赤いモノ――R-15G設定をしていると赤いポリゴン片――を吸い取り始めた。


「うわぁ、切り落とした本人の前で吸い取っとるやん」


 敵が食事?に集中している間に攻撃を、という気持ちはもちろんあるが、それ以上にその行為に対しての驚き呆然が勝っていた。

 ただ、何かしないと、とは思ったので取り敢えず鑑定をしてみた。


「スヴァさん、鑑定してみます」


――――――――――


名称:ロ――・―ルー―ン

種族:ブラッドウォーカー

職業:――

状態:Active、飲血

Lv.26


そのモノは血を求む。血を欲する。血を飲むために、浴びるために歩く。

お気に入りの腕を持ち歩き、お気に入りだった腕の骨で剣を作る。

甘美な味わいだったモノは次のお気に入りコレクションとなる。

お気に入りを破壊されると――。


――――――――――


《スキル鑑定のレベルが低いため一部のみ表示します》

《ワールドクエスト中につき、一部情報の閲覧を許可》


 ――ゾクッッ!!――


 鑑定をした瞬間、悪寒が走った。

 悪寒の正体であろう血を飲んでいたボス――ブラッドウォーカーの方を見ると相手も眼窩の黒い炎でこちらを見ていた。



――――――――――


お読みいただきありがとうございます。

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