18 腐人の行進-開戦-2
9/6 17話と共に更新しています。
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水矢陣から放たれた水の矢で5体のゾンビが倒れると、それに気付いたタンク達は自分の役割を思い出したのか、思い思いに盾を構えている。隣と列を合わせようとしていたり、パーティーなのかひと纏まりで構えていたりと様々だ。
そして周囲のプレイヤーは腐臭の事等忘れたかのように活気づき、雄叫びなどを上げながらゾンビに飛び掛かっていった。
それを皮切りに少し後ろの術師たちから火や水などの球体だったり、矢だったりがゾンビに向かって飛んでいく。プレイヤーに対しても、それぞれの属性のエンチャントが武器防具に飛んで来たりしている。
術を撃ち込まれながらもタンクの壁にゾンビの集団が突っ込んだが、流石にただのゾンビで崩れる様な盾ではなかったようで、容易に弾き返していた。
タンクの盾に弾かれたゾンビが足をよろけさせた瞬間を狙い、杖から持ち替えた剣でガラ空きの胸元を横に両断する。途中、硬いモノに引っ掛かった感触があったが、気にせず剣を滑らせる。
その光景を横目に、ゾンビを倒しながら考える。
ワールドクエスト中は常時戦闘中という判定なのか、スキルなどのレベルアップが起こらないらしい。すでにレベルアップしてもおかしくない量のゾンビを倒しているが、一切その気配がない。
もし戦闘中でもレベルアップしたとしても、今の基礎のレベルが8の時点でそもそもゾンビでは、もうレベルが上がらない可能性もあるが。
そういったことを考えつつもはや作業のように、両手に持った剣をそれぞれ振り上げ、タンクの弾いたゾンビを最低限の力で斬、――ろうとしたが肉だけが斬れ、骨が絶ち斬れなかった。そのことに驚き、立ち止まっていたら、そのゾンビの近くにいるゾンビに殴られ剣を手放してしまった。
今の打撃だけでHPの3割が削られてしまった。咄嗟に目の前のゾンビに鑑定を発動する。
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名称:無し
種族:ハイゾンビ
職業:――
状態:Active、憎悪
Lv.14
ヒト――悪を持ち――ら死ん――在、が―化した存――全ての――で生まれ――能性があ―。
どの―――ノにも、生――あれ――い掛―る。
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ハイゾンビ。ゾンビが進化した存在か。容姿は特にゾンビとの違いはないな。少し腐っている割合が少ないぐらい、か?
それだけ確認すると後ろに飛び退き、安全を確保する。剣は残してきてしまったが仕方ないな。
俺がその場から飛び退くと、近くの他のプレイヤーが俺の剣が残ったゾンビの胸元に直接剣を刺し、その活動を停止させた。
「はいよ。それにしても急に硬くなったか?」
「ありがとうございます。今鑑定してみましたが、ハイゾンビでしたね」
下級HP回復薬を飲みながら、拾ってくれた2本の剣を受け取る。
「ハイゾンビねぇ。ゾンビの単純強化か」
「だと思います。一応、掲示板にも投げておきます」
そう言って、掲示板にハイゾンビの鑑定情報を投げる。
全然関係ない話だが、一切知らない人だったり、目上のような人相手にはタメ口で話せないんだよな。アセヴィル相手にはタメ口のような感じで話せるのにな。まぁアセヴィルは名前呼び捨てにしていいって言ってたから、それに釣られての可能性もあるけど。
掲示板に情報を投げて、握る剣を1つにする。さっきの様に剣が無くなるような事態になっても、大丈夫なようにしておく。
その1つの剣に全ての力を込めて、次に来るゾンビを見据える。
「それにしても双剣扱えるなんてな。あ、俺はウスヴァートって言うんやけど、そちらさんは?」
「俺はイズホと言います。双剣に関しては、とある人に双剣が扱えそうとか言われたんで、やってみてるだけですね。形になってるかは別として」
「そんな丁寧に喋らんでええよ。タメ口で。俺の事はスヴァとかウスヴァって呼び捨てでいいよ。双剣は……、そうか。まぁ他の全然扱えん奴よりは扱えてたと思うで。素人目線やけど」
「じゃあ、スヴァさんで。まぁ双剣にしてたけど、今はさっきみたいな事になっても大丈夫なように1本は仕舞ったままだけど」
ゾンビが迫るまでのわずかな暇に話しかけてきたので、それに反応して雑談のようなものをする。
見たところスヴァさんのメインは弓のようだが、前線に来ている事からわかる通り、剣などの近接武器も扱えるらしい。
「俺よりスヴァさんの方が凄いと思いますけど」
「いやいや、俺なんて最低限だけの人間やから、そんな何かに特化したような人とかとは比べもんにならんよ」
「いろんなの使えるのも俺は十分凄いと思いますけどね」
そのように会話しながら、迫りくるハイゾンビの群れを少し手こずりながら相手する。
ゾンビの時よりは硬い。が、魔石のある位置をピンポイントに突ければ、簡単に活動を停止させることが出来るのでまだ面倒ではないな。
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そのようにゾンビやハイゾンビを倒して、Lv.20代のハイゾンビも頑張って倒した頃。
急にゾンビが森から出てこなくなり、プレイヤーの間でクエストクリアの空気が流れ始めた。かくいう俺もクリアまではいかなくとも、1フェーズ終了の類かとスヴァさんと話していた。
「急に途切れた?」
「いや、多分違うんとちゃうか? 最後の方に倒したゾンビのレベルって見てたか?」
「最後の方は確か、23とか24だった気がする」
「このゲームの敵対生物の進化のあれがまだよくわかってないけど、その24とかのラインがハイゾンビの進化だとして、次くらいが今回のボスなんちゃうか?」
「まぁ、確かに。今のプレイヤーの平均レベルが判らないんで、どうとも言いにくいですけど、今の俺が8なので10以上の人が居たとしたら、十分ボスたり得るのか」
「そうそう。言うておれも10ぴったやし、このゲームのレベル差はそんなにあてにならんぽいし。流石に20とか離れるとレベル差を実感するんかもやけど」
という結論になった。確かに今のレベル状況をよく知らないし、この世界のレベル差について詳しくは分からないけど、平均レベルより15くらい上の敵ならまだ何とか相手できるような、そんな根拠のない予想だけはあるな。
そうして、次に出てくるであろう敵に警戒していると、不意に森の方から嫌悪感を引き出してくるような、不気味な気配と強烈な腐臭が広がった。
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