15 腐人の行進-準備-1
1日中HP回復薬を作るといったな、あれは嘘だ。
と言ってみたかったから言ってみたものの、実際のところ回復薬を作るのに飽きてきているのは本当。ついでに魔力が底をつきそうだから休憩をしたいという気持ちもある。
という事で休憩ついでに冒険者ギルドに行って、良さげな依頼を見繕って戦ってこようと思います、と師匠に伝えてやってきたのは冒険者ギルドだ。
何かよさげなのはあるかなーと依頼掲示板を見ていると1つの依頼が目に入った。
それには『D:南東の森のゾンビ討伐』と書いてあった。前回のログインの時に確か南東の森の怪奇現象が云々といった依頼を見て、狼討伐と迷ったやつがあった気がするがそれの系列の依頼だろうか。
それにこの依頼、前回俺が行った狼討伐などの常設依頼と違う区分らしく、こう言ったら違う意味になるかもだが、期間限定依頼と言えるようなものらしい。まぁ簡単にいえば普通の依頼になるのかな。狼討伐などの常設依頼はその対象が常にその場所などで複数確認されている場合等に限り常設となる、らしい。
逆に期間限定――通常依頼は、今までその場所で確認されず新たに確認された場合や確認はされていたが複数ではなく単体や数体のみの場合などの依頼の区分らしい。その場所で確認できなくなったら日を置いて取り下げられるようだ。
これらの情報は前回狼討伐の依頼を受けるときに常設依頼について聞いたら教えてくれたものだ。それに感謝しようとしたら登録したてのすべての冒険者に教えている情報らしかったが。
閑話休題。
取り敢えずゾンビ討伐を受けるか。
依頼掲示板から重ねて画鋲で留められている内の一番上を引っぺがし、受付に持っていく。
「すみません。この依頼を受けても大丈夫でしょうか?」
「少々お待ちください。南東の森のゾンビの討伐依頼ですね。はい……。大丈夫、そうですね。早速受けていきますか?」
「はい」
俺の質問に何らかの資料を見てから答えた受付の人の質問に肯定を返す。
「それでは職業カードの提示をお願いします。はい、ありがとうございます」
受付の人は受け取った職業カードを蓋のある道具の中に入れて蓋を閉じ、その蓋の上から依頼書を押し付けている。その道具の何らかの力で依頼書の内容をカードに移しているのか? カードに依頼書の情報を写す意味としてはカードのランク以外の情報が見られるとして持ち主が死んだ場合とかで何の依頼をしていたかを知るため、とかか?
と、考察はこの辺にしとこう。この辺は時間がある時に訊けばいいだろう。
「職業カードの返却です。
この森は先日から出所不明のゾンビが徘徊しています。もしゾンビ以外の生命を見つけたり、上位の存在を見つけた場合は戦わず、報告に戻ってきてください。その場合の違約金の支払いはありませんのでご安心ください」
「解りました。では行ってきます」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ。無事のご帰還をお待ちしております」
トレイに乗せて返された職業カードを受け取り、忠告を聞き冒険者ギルドを出る。
△▼△▼△
早速ゾンビ討伐に行く、前に木の剣では心もとない。ので武器屋で適当に50,000Fぐらいで買える普通の剣を2本買って、なんとなく双剣スタイルにしてから南門に向かう。
南門には並んでいる人はおらずスムーズに出ることができた。因みにゲーム内の現在時刻は22時00分となっている。前回ログインの時はもう少し早い時間だったのかな? それとも南門だからなのか。
そんなことを考えながら歩いていると暗くて見えずらいが遠くに森が見えてきていた。
数分後、森の入り口付近に辿り着いた。まだ森に入ってもいないのにどこからか不気味な声と不気味な感じがするな。これがゾンビの持つオーラのようなものなのか、魔力とかが濃いのか。
こんなところでつらつらと考え事をしても何も進まないので早速森に入ることとしよう。
さらに数分後、森に入ったはいいが、今のところ一切ゾンビとは遭遇していない。森の中の木と木の間は意外に広く、歩きやすい。そして、初めは一方向からのみ聞こえていた不気味な声が、複数の方向から聞こえるようになっていた。
それでも、普通はもうゾンビに遭遇してもおかしくないような感じがするが、一向に出てこないな。まさかゾンビが居ないなんてことは、――
「――ヴぁぁ!」
「うわぁ!」
唐突に右方向から、ここにいるよ的にゾンビが襲い掛かってきて、よく確認することもなく、咄嗟に右手でぶら下げるように持っていた剣で下から袈裟斬りにした。これが木剣ではこうはならなかっただろう。
右の剣で右の脇腹から左の肩口まで裂かれたゾンビは、斜めになった上半身と下半身に別たれた。その状態でも未だに動いていたが、胸元を剣で開きそこにある魔石を取り出すと、動きを止めた。
ゾンビは冒険者ギルドで討伐報告をするときは特に体の部位を提出する必要がなく、最低限討伐した分の魔石の一時的な提出のみである。
それを考えると肉体的には楽な相手である。精神的には人によるだろうが。
それにしても、とゾンビを観察してみるが、顔の表面は皮が腐り落ち肉がぐずぐずに溶けており、眼窩では黒い炎のようなモノが燃えている。ゾンビの元となった人物が着ていたであろう服は腐蝕したのか腰布のみだった。
服がないから肌は丸見えとなっているが、こちらも頭部同様、皮が腐り落ち、肉は一部溶けて内臓がはみ出している。
その様に倒したゾンビを観察していると、先ほどの俺の軽い悲鳴を聞きつけたのか数匹(人?)のゾンビが来たが鉄剣にした俺の敵ではなかったようで、数分で片づけられた。
その倒したゾンビたちも観察してみた。一部のゾンビには胴体の一部が腐っておらず、そこを何らかの刃物で斬り付けられたかの様な傷跡が残っていた。
それから1時間ぐらい声を出してはゾンビを引き寄せて、斬り付けて倒すという行動を繰り返していると、魔力の大半が回復していたので一旦帰るとする。今日は30分錬金をして、魔力が無くなりかけたら1時間ぐらいゾンビ相手に戦うというルーティーンで行くとするか。
△▼△▼△
それから1回ゾンビ討伐休憩を挟み錬金をして、ルーティーンを決めた時間から約2時間が経過した頃、錬金用の魔力が尽きかけ、ゾンビ討伐休憩をしようと冒険者ギルドに行ったところ何やらその付近が騒がしくなっていた。
ギルドの中に入り聞き耳を立てていると何やら南東のゾンビの出る森が騒がしいらしい。
と、そこでギルドの2階に上がる階段から強面の男が降りてきた。
「冒険者ども! 俺はフレイトゥル冒険者ギルドギルドマスターのサウェトールだ。今ここにいる冒険者に対して特別依頼を出す! 内容はこの王都の南東にある森からのゾンビの氾濫を食い止めることだ! 報酬は弾む! 絶対に食い止めてくれ!」
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ワールドクエスト『腐人の行進』が発令されました。
世界各地の王都付近の森にてゾンビの氾濫が起こりました。
全てのゾンビは生者のいる王都に向かってくるでしょう。
これを阻止し、王都の平穏を守りましょう。
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こんなところにもワールドクエストが転がってる!
――――――――――
因みに街から出るのは0時以降でも可能です。
お読みいただきありがとうございます。
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