S:T-1 寝坊、そしてワールドクエスト


 今日から夏休みに入り、それと同時にとあるゲームサービスが始まったんだけど、僕は見事に寝坊してしまい10時ごろに起きてしまったので、取り敢えず宿題をして昼ご飯を食べてから始めることとした。



     △▼△▼△


 13時52分ごろ。


 宿題をしたり、昼ご飯を食べたりして約4時間過ごし、ひと段落ついたので早速ゲームを始めたいと思う。


 「早速入るとしようか。Open the gate thatこちらとあちらを connects thisつなぐ門よ and that.開け


 その祝詞を紡ぐと、視界が暗転し、目を開くとすべてが真っ白の空間にいた。

 体を動かす、という風に意識しても体が動いた感覚はなく、全てが無に帰したようなそんな感覚だ。


『ようこそ。此処はあなた様の新たな身体を創造する空間です。まず初めにあなた様の元となる体を作成しましょう』


 急にどこからともなく現れた光の球体がそう言った。

 これは確か、キャラクター作成用の補助AIだったかな? ゲームのホームページの説明にそう書いてあった気がする。

 取り敢えず、表示された仮想ウィンドウの説明に従って進めていこうかな。


「顔は殆ど変えずに髪色は赤にして、身長はそのままでいいかな。名前はタクマ、と」


 仮想ウィンドウの隅に置かれていた完了ボタンを押して、AI曰く体創りを終了する。


『体の完成を確認しました。次に体に付与する力を選択しましょう』


 その言葉によって出てきた仮想ウィンドウによると、今AIが言った力とは魔力か聖力、どちらかを選べという事らしい。魔力と聖力とは何ぞやと思いヘルプマークを探してみたがどこにも見当たらなかった。仕方ないから補助AIに訊いてみようかな。


「すみません。魔力と聖力って何ですか?」

『魔力と聖力とはすべての存在に生まれた時から備えられている物です。多くの場合、初めは何方かしか持つことが出来ず、のちに何らかの方法でもう一方の力も扱うことが出来るでしょう』


 正直に言うとその説明を聞いても理解することは出来なかった。まぁ確かに魔力と聖力について訊いたけど、訊く言葉が足りなかったかな。


「魔力と聖力はどんなことに使うんですか?」

『魔力と聖力は術の発動に必要なものです。また体内の魔力と聖力のことを魔力素、聖力素と呼び、体外に放出された魔力素と聖力素が魔力、聖力と呼ばれています』


 らしい。なんとなく理解はしたけど、これはどっちの方がいいんだろう?

 なんとなくで決めようかな? いや、神様の言う通りで決めるか。初めは魔力で。

 どちらにしようかなてんのかみさまのいうとおり、聖力に止まったから聖力にしよう。


「聖力でお願いします」

『聖力が選択されました。続いて、種族を選択してください』


 種族はログインする前に決めてきたから、すぐに答えることが出来る。

 AIの言葉と共に出てきた仮想ウィンドウの炎人族を選択する。


『種族:炎人族が選択されました。最後に能力を選択してください。最低1つから最大6つ選択することが出来ます。能力が選択されなかった枠は初期スキル枠となり、世界に降り立った後でもその枠を使うことで初期選択可能な能力は選択可能です』


 これはそんなに考えてきてないけど、剣術だけは入れようと思ってたんだよね。


 他には何があったかな。見てみるか。


《物理攻撃》  《術攻撃(所謂魔法)》  《補助》

・剣術     ・魔術(選択不可)    ・鑑定

・槍術     ・聖術(選択不可)    ・暗視

・弓術     ・火術         ・耐寒

・刀術     ・水術         ・耐暑

・斧術     ・風術         ・耐魔

・短剣術    ・土術         ・耐聖

・鎚術     ・光術         ・身体強化

・杖術     ・闇術         ・精神強化

 etc.       etc.           etc.

 ︙       ︙           ︙

《生産》

・鍛冶

・裁縫

・木工

・石工

・錬金

・料理

・宝石細工

 etc.

 ︙


 取り敢えず補助の身体強化を選択する。あと4つか。他の武器種は取らなくていいかな。

 他は補助で固めようかな、いや、盾術くらいは取っておこうかな。うーんどうしようか。

 よし! 決めた。


「剣術、盾術、身体強化、鑑定、火術、暗視にしようと思います」

『能力の設定を確認しました。全ての身体構成の設定が完了しました。全ての身体情報を読み上げます。名称タクマ、霊力:聖力、種族:炎人族、能力:剣術、盾術、身体強化、鑑定、火術、暗視、以上となります。間違いはありませんでしたか?』

「はい、大丈夫でしたよ」


 そう答えると、表示されていた仮想ウィンドウが消えて、新しく地図の映った仮想ウィンドウが表示された。


『身体構成の完全完了を確認しました。降り立つ地域を選択してください』


 これも種族を考えた時に、決めておいたからスムーズに選択する。

 僕は炎、水人族共生国家フレイトゥルに降り立つ。


『炎、水人族共生国家フレイトゥルが選択されました。5秒後に強制転移を発動します』


 補助AIがそう言うと僕の足元に、黄金に輝く陣が現れその光に包まれ、浮遊感と共に見ていた景色が変わった。


「ここがフレイトゥルかぁ」


 そう呟きながら辺りを見回してみると、何やら騒がしかった。

 この騒ぎは何なのか、近くにいたプレイヤー表示のある人に話しかけ訊こうとしたところで、強制的に仮想ウィンドウが表示された。


==========


ワールドクエスト『腐人の行進』が発令されました。

世界各地の王都付近の森にてゾンビの氾濫が起こりました。

全てのゾンビは生者のいる王都に向かってくるでしょう。

これを阻止し、王都の平穏を守りましょう。


==========


 僕はどんな時にログインしてしまったのだろうか。

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