2 水人族


『ようこそ。神の箱庭に繋がる門の間へ』


 ほんの少し意識が戻った瞬間にそんな言葉(?)が聞こえてきた。

 目を開けて状況を確認しようとすると、目が開けられる感覚があった。

 目を開いて視界に入ったのは俺の前で足元が10センチぐらい浮いている女神かのような神々しさと美貌を持った人物だった。


『私は正神アザトス様に創造されし、名もなき下級天使でございます』

「そうなのか」

『驚かないのですね』

「何に?」

『私が天使であることに、です』

「そりゃまぁ、浮いてるし、背中に如何にも天使ですよって感じの純白の翼が生えてるしな」

『そうですか』


 目の前の謎の人物が天使と名乗ったことに薄い返事を返すと、驚かないのかって聞かれてしまった。

 まぁそこはどうでも良いんだが、問題は別のところにある。

 運営のホームページには一番初めのキャラクリの時には、光のような形をした自立型AIかGM権限を持った人間が対応すると書いてあったからだ。

 それなのに天使が出てきた。

 まぁ天使もこの世界で出てくるのならAIが積まれているんだろうしそんなに大した問題じゃないのかもな。


 それよりこんな何もない空間から出たい。

 そのためにはキャラクリを進めないといけないので。

 ここは天使を促してさっさと進めてしまおうか。


「なぁ、名もなき天使さんよ」

『はい?』

「早速キャラクリに移りたいんだが」

『キャラクリ……あぁ、キャラクタークリエイトのことですね』

「そう、それ」

『分かりました。では、早速キャラクタークリエイト及びキャラクターメイキングを始めさせていただきます』

「あぁ、分かった」


 俺がそう答えると同時に、俺の周囲に仮想ウィンドウが現れた。

 その画面には俺の現実の身体を少しファンタジーに寄せたモノが1つ。


『これに表示されているものは、異邦人の皆様の身体になるものです。この状態から変えたい場合は好きなように変更してくださってかまいません』

「ふむふむ、なるほど。髪色とかはさすがに変えないとな。だから――」


 それから俺は髪色を茶に近い黒から緑と青を混ぜた色、いわゆるシアンにして、身長は変えすぎるとよくないらしいから1、2センチほど伸ばすに留め160センチ付近にし、キャラクターのメイキングは終了した。


「天使さんよ。キャラメイキング終わったぞ」

『早かったですね。ほんの数分でした』

「早く遊びたかったからな」

『そうですか。まぁこれでキャラクターメイキングは終了ですね。次は種族とスキル6つ、そして異邦人の方の身体に宿す霊力を選んでもらいます』


 そう天使が言うとキャラメイキングのウィンドウが閉じ、代わりに種族とスキルの表示されたものと霊力の選択をするウィンドウが現れた。

 種族の枠には事前情報通りの人間族、炎人族、水人族、風人族、土人族の計5種族があり、スキルの枠には数えるのが億劫になるほどにスキルの名前が書かれていた。その内選択できるのはほんの一部だけらしいが。霊力の選択肢は選べるのは魔力と聖力の2つだけだが他にも、塗り潰されているがあるようだ。


「種族は、どうしようか。特に考えてなかったな。……なぁ、天使さんよ。先にスキルを決めてもいいのか?」

『?……えぇ、どうぞ』

「いいのか。それじゃあお言葉に甘えて、スキルを先に決めるとするか」


 て言ってもスキルもほとんど決めてきてないんだよな。

 一覧を見てって気になったやつを詳しく見てみるか。


《物理攻撃》  《術攻撃(所謂魔法)》  《補助》

・剣術     ・魔術(選択不可)  ・鑑定

・槍術     ・聖術(選択不可)  ・暗視

・弓術     ・火術       ・耐寒

・刀術     ・水術       ・耐暑

・斧術     ・風術       ・耐魔

・短剣術    ・土術       ・耐聖

・鎚術     ・光術       ・身体強化

・杖術     ・闇術       ・精神強化

 etc.       etc.         etc.

 ︙       ︙         ︙

《生産》

・鍛冶

・裁縫

・木工

・石工

・錬金

・料理

・宝石細工

 etc.

 ︙


 この中から6つを選ばないといけないのか。

 まず1つ目は術戦士をやろうとしてるから、『剣術』で決まり。

 2つ目も上記と同じ理由で術系統のスキルを選びたいんだが、どれにしようか。

 術一覧の中で選択可能なものは計8つあるんだがほんとにどれにしようか。

 まぁ単純になにが好きかで決めるか。

 この中で好きなものと言ったらやっぱり水だから『水術』で決まり。


「あと4つの枠はどうしようか」

『キャラクタークリエイト時に消費しきれなかったスキル枠は初期スキル枠として、プレイ中にコスト無しでスキルを取得することができます。またスキルは様々なクエストやイベントをクリアすると入手できるスキルポイントで交換可能になります』

「へぇ、そうなのか」


 そういうことならば、1つぐらいは初期スキル枠に変換しておこうかな?

 まぁそれでも3つ選ばないといけないんだけど。


 さて、急がないとどんどん遅れてしまうから早く決めないとな。

 残りの3つの内、1つにはゲームお決まりの『鑑定』を入れとくとして、残りの2つの内1つは『杖術』だな。

 そうじゃないと『水術』が使えないと公式ホームページに書いてあったし、もし剣が壊れてしまったときや魔力などが無くなったときに素手で戦うのは嫌だからな。

 最後の1つには生産系のやつでも入れとくか? それかパッシブスキル。生産系は死蔵されるかもだけど。

 ということは『錬金』か『暗視』、『耐寒』、『耐暑』、『精神強化』、『身体強化』のうち1つか。うーん。この中なら『精神』か『身体』の二択か。


「決まった。スキルは『剣術』と『水術』、『杖術』、『鑑定』、『精神強化』の5つで今のところはやっていこうと思う」

『決まったのですね。では後回しにしていた種族と霊力を決めてください』

「そうだったな。種族と霊力ね」


 無難なのは人間族だけど、せっかく水術持っているんだから水人族かな。

 あと霊力だけど、無難かどうかはわからんが無難に魔力にしとくか。


「種族は『水人族』で、霊力は魔力で」

『水人族、そして魔力ですね。水人族を選ばれる場合は初期スキル枠を使用することはありませんがスキル『土属性脆弱』が強制取得になります。それでもよろしいですか?』


 水人族の場合『土属性脆弱』がつくのか。事前情報の中にはなかったやつだな。

 まぁ、そういうハンデ?的なものはあったほうが楽しくなりそうだし、あってもいいかもな。

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