5 初陣


 職業登録を済ませた俺は噴水のある広場に一度戻り、その広場から見て南西にある冒険者ギルドにすぐに移動した。こっちはさっきの職業登録組合と比べて混んでいなかったからか、そんなに待たずに冒険者登録をすることができた。


 冒険者ランクは一番下のEから始まり、順にD、C、B、A、A+、Sと上がっていくそうで、これは冒険者ギルドで定められている聖魔物などの危険度を基にしているらしい。


 冒険者登録をすると同時に冒険者ギルドの施設としての機能も説明してもらった。

 それによると、建物の一階部分には受付や依頼掲示板等があり、二階には簡易的な宿があるそうだ。そして最後の三階部分はギルドの会議室等、ギルドの業務に関する部屋があるらしい。

 まぁ、要するに普通の冒険者が利用する分にはほとんど一階のみで完結するようにできているということだな。


 取り敢えず冒険者ギルドに加入することは出来たし、レベル上げのついでに何か依頼でも受けてみようと掲示板を見てみる。するとそこには街の人の軽い手伝いやこの首都の西にある草原と森林に住む聖、魔物の退治などのランクの低い依頼から国境付近に居座る大型聖魔物の退治というBランク以上の依頼も張り出されていた。


 沢山依頼が張り出されている中から俺が受けれるのは現在のランクであるEランクの依頼と、その一つ上のDランクの依頼までである。

 そして狩猟系の依頼は基本的にDランク以上しかないそうなので、狩猟でのレベル上げをするならば必然的に今受けれる最大ランクの依頼を受けることになるということだ。


 張り出されている依頼の中で俺が興味を持ったものは、『D:西の草原の下級狼討伐』、『D:南東の森での怪奇現象の調査』、『E:城下町地下の調査』、こんなところか。

 西の草原の狼と南東の森の調査は位置的にほぼ反対だから一日でやるには時間がかかりそうだな。興味がある中から受けるとしても『西の草原』と『城下町地下』の組み合わせか『南東の森』と『城下町地下』の組み合わせのどちらかだな。

 『西の草原』が今やりたいことと合ってるから興味と優先度は高いな。


 取り敢えず、Dランクの西の草原の狼退治でも行ってみて、序盤で無理そうなら戻ってきて地下の探索でもしようかな?これら低ランクの依頼などは基本的に常設の依頼だからなのか途中で依頼を放棄したとしても、違約金は発生しないみたいだしな。


 依頼を受注した俺は早速準備に取り掛かっていた。と言ってもそんなに準備するものなんてそれこそ回復薬とかの消耗品だけだからそんなに時間は取られない。

 雑貨屋で回復薬を買い、店を後にした俺は西門に続く大通りを歩き始めた。

 歩き始めて少しした頃、大きな門から伸びている数人が並ぶ列が見えてきた。



     △▼△▼△


 俺が西門から出る列に並び始めてから5分が経過した頃。


「こんな朝早くから冒険か? 暗闇だから気を付けてくれよ。

 ……よし、通っていいぞ。この門が閉まるのは夕方頃だから戻ってくるのならそれまでにな」

「分かりました」


 門兵の人に冒険者ランクEと新しく記載された職業カードを提示し、偽造などではないことを確認してもらった俺は、カードに西門通行許可の情報が記されたことを確認しそのまま大きな門の下を潜った。


 西門の先には広い草原が広がっていた。門に近いところは踏み固められているのか雑草などはあまり生えていないが、門から10メートルほど離れると俺の腰くらいの高さの草が沢山生えている。


 門の近くで立ち止まっているわけにもいかないから取り敢えず草原を探索していると、一匹の灰色の狼が俺の周りを5メートル近くの距離を取り、ぐるぐると歩き回り様子を伺い始めた。

 取り敢えず相手の正体を知るために鑑定をしてみる。


──────────


名称:無し

種族:下級狼

職業:──

状態:Active、冷静

Lv.3


世界の様々な草原に出現する狼の下位種。

好戦的な性格をしているが明らかな上位者に対しては群れの長などの命令がないと攻撃をしない。


──────────


 取り敢えず、鑑定して出てきた説明を流し読みし、未だ俺の周りをまわっている狼を敵と認識した俺は腰に下げた初心者の木剣を抜きつつ、警戒態勢を取った。

 俺が警戒したと同時に狼も回るのをやめ、唸り声をあげた。


「俺の初陣はこの狼か。現実でもこの世界でも、戦った経験なんて1ミリもないから死に戻り覚悟で挑むしかないな」


 俺は独り言を呟いたのをよそに木剣を両手で構え狼に向かって走り出した。それを見て狼は真正面から迎え撃つつもりなのか、先ほどまでよりも一層背を低くして迎撃の構えを取った。


 俺が動き出してから一秒にも満たない時間で彼我の距離が1メートル強となり、ここにきてようやく狼のほうからアクションを起こしてきた。


「──ガウッ!!」


 横薙ぎに振るおうとしている剣を持つ両手の手首を嚙み千切ろうとしているのか、俺の身体の右側に向けて口を向けている狼。

 俺はそれを迎え撃つべく少しだけ手を引き、狼の頭のある位置よりさらに下の位置からの攻撃に切り替えた。


 目の前から狙いが消えた狼は少し戸惑っているようで、攻勢意思が少しだけ弱まったような気がした。

 その少し弱まった隙で狼の首の下まで木剣を持っていき、そこから掬い上げるように狙いを定めた首を叩き上げた。知覚外から木剣で殴られた狼は気絶したようだ。




《只今の戦闘行為によりLv.1からLv.2に上昇しました。スキルポイントを10獲得しました》

《只今の戦闘行為により剣術Lv.1がLv.2に上昇しました》


 気絶した狼を木剣で殴っているといつの間にかその身体から力が抜け、ただの骸となっていたようだった。

 戦闘前は死に戻り覚悟だったが終わってみると意外に呆気なく感じたな。俺が戦闘のみに集中していたからだろうか。


 特に疲れなども感じないので、狼の骸を回収して次の狼を殺しに行くとするか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

The world of infinite permanence 新世界創世記 銀骨 @kane14hone20

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ