第4話

「あなたは国植のオオイヌノフグリのバッチを故意に枯らしましたね」


 「……はい」


 拍子抜けするほどの簡単さであるが、これで自白はとれた。ここで取調べを終わらせても良いのだが俺は続ける。


 「続けます。あなたは国植のオオイヌノフグリのバッチが現在の国家にとって大変重要なものであると理解していますよね。故意に枯らすことが重罪となることも。それを踏まえての犯行の動機は?」


 「特にありません」


 即答である。今までの落ち着いた口調とは打って変わってハッキリと発せられた思いがけない答えに、どういうことだ?と返すのみとなってしまった。こちらが狼狽えているのを鼻で笑うかのように彼女は答えた。


 「そのままの意味です。これだけ大量の真実の花に埋め尽くされた、自白をとるための部屋で嘘が言える訳がないじゃないですか」


それもそうだ、「では、何の理由もなくバッチを枯らしたということですね?」


「そうですね。あ、でも、強いて言うならば私の人生をかけたストレス発散です」


俺は再び自分の耳を疑った。


「ストレス発散……? 今、国植や花屋はもちろんのこと、国中が大混乱に陥っているんだぞ。そんなことのために……」



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