たんぽぽ

ジャンパーてっつん

たんぽぽ

「花子ぉ。オレ、留年しちゃってさ。お先真っ暗なんだ。どうしよう。」

ミツバチの一人である坂上がぷぅんとどこからともなくやってきて、悲しそうに肩を落として花子に言った。

「そんなに落ち込むことないよ!死ぬわけじゃないんだし。ねっ。」

と花子がパッとした明るい声で返す。

「そ、そうだよな!おれ、また頑張ってみるよ。」

「うん!がんばれ!」。 

「花子ありがとう!」

坂上はまたぷぅんと帰っていった。


***

「花子~。大変だ!加藤と加藤の親父が大喧嘩してる!」

ミツバチの樋口がやってきた。

「なんですって。今行くわ。」


「だから何度も言ってるじゃないか!僕は大学を辞めて東京に行くんだ!」

「バカな考えはよせ!東京に行ったってお前の抱えている問題は何一つ変わらんぞ!」

花子が着くと、加藤親子は庭の芝生の上で、もみくちゃになっていた。

「おっほん!」

「…、花子か?」(加藤親子)

一瞬の間ができた所に、花子はすかさず切り出した。

「焼きたてのクッキー持ってきたよ!今からみんなでティータイムをしよう!」

「で。でも、今はそれどころじゃ」

「おいしいよ!冷めないうちに食べよう!樋口君これ、手伝ってもらえるかな?」

「あ。うん!」

花子は半ば強引にティータイムのセッティングを始めた。

樋口は花子の指示に従って、庭の隅あるテラスを中央に寄せ、その上に花子から渡された人数分のティーカップとクッキーの入ったバスケットを置いた。

花子は加藤親子を誘導して二人が座ったのを見るとダージリンティーをカップに注いだ。

「さぁ。食べよう!」

ささやかなティータイムの始まりだ。


もぐもぐ。(一同)


「ん!これ。うまい!」

と加藤親子。

「うん!おいしいね!」

と花子。

「おいしい!おいしい!天才だ!」

と樋口。


皆は笑顔になり、その場にはぱっと花が咲いたような明るい空気が流れた。

***

「花子はどうしていつも笑顔なんだい。」

ボールを蹴りながら樋口は聞いた。

「幸せだからだよ!」

花子はボールを蹴り返して言った。

「そっか!」

樋口は花子をみて微笑んだ。

「そういえば、こないだのティータイムは楽しかったね。」

「そうだねぇ。クッキーおいしかったなぁ」

「おいしかったね。」

「今度つくり方教えてくれる?」

「うんっ!もちろん!」

花子も樋口をみて微笑んだ。


***

晴天の空には、心地よい風が吹いている。

さわやかな風に吹かれ鳥たちは今日もご機嫌に鳴いていた。


「大変だ!花子が転んでケガをした!」

坂上が大急ぎで樋口の家にやって来て言った。


「なんだって!」

「大変だ!花子が転んでケガをした!」

樋口一同は加藤家に走って行って伝えた。


「大変だ!大変だ!」

加藤親子は驚いた声で言う。


皆は大急ぎで花子のもとへ向った。


「花子!」(一同)


「えっへへ。ころんじゃった!」

花子の目には涙が溜っていた。


「大丈夫か花子。ほらこれ、ばんそうこう。とってきたぞ。」

と心配そうな坂上。


「大丈夫か花子。ほらこれ、赤チン。家にあった!」

と心配そうな樋口。


「大丈夫か花子。ほらこれ、ハンカチ。涙吹けよ。」

と心配そうな加藤親子。


一同は固唾をのむ。


「ありがとうっ!」

花子はにこりと笑い、樋口から貰った赤チンを塗って、坂上から貰った絆創膏をペタンと貼って、あふれそうになった涙を加藤家から貰ったハンカチでぬぐい取って、お礼を言った。


その様子に一同はホッと胸をなでおろす。


当たりにはタンポポの花がピンと咲いていた。

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たんぽぽ ジャンパーてっつん @Tomorrow1102

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