第11話 歌姫の母国ではシスコンが大暴れしている!?!
「王子、見つかりました」
「本当か」
隣国の一つの部屋で集まっていた人影は喜びに浮かれた。絢爛豪華な服を着た二十代くらいの男性はフードの男の肩を掴み激しく左右に揺らす。
「嘘ではないだろうな。泣いてないか、カエルに変えられて姿を消して俺は心臓が止まるかと思った。居なくならずに城に居ればよかったのに、どうして姿を消した」
俺の大切な妹姫。悪役王女と呼ばれているが、人見知りで人とのコミュニケーションが苦手なだけで、世界一優しい姫だ。
「落ち着いて、ください」
揺らされているフードの男を助けようと他のフードの人たちが止めに入る。
「国王にも報告しますが、これほどの結界が張られた城は世界を見ても数少ない」
「囚われているのか」
「王子、隣国の王子の話覚えておりますか」
隣国の王子の話。確か数年前に姿を消したと聞いている。代わりに来た姫が嫌われ者だという事を。しかし、実は王子が居なくなった後に結界が強化された。
「王子、姫様は一度その王子に会ったことがあります」
「視察に行った」
「カエルのお姿になり危険を冒してまで逢いに行ったのです」
「恋か?」
呪いを解く鍵は、姿に囚われることなく相手に好きになってもらうこと。
数年前に一度会ったきりの王子に逢いに行く。声すら発することが叶わずどうやって想いを伝えるというのか。
「リテラスが、恋」
姿を消した王子。王子を探しに行った。
「今すぐ行かなきゃ」
「王子落ち着いてください」
揺らされていたフードの男が俺の前に立ちはだかる。
「王子、訪問には手続きを踏まないと」
「俺の大切な一姫が居ないんだ。呪いをかけられて不安だろう俺が安心させてあげないと」
「シスコン王子」
「シスコンの何が悪い」
可愛い姫がいて何が悪い。国によっては王位争いなどで身内を殺害するのは歴史上当たり前。
「冷静な判断が下せないのであれば、一度海に投げ込みますよ」
「投げ込んでみろ。投げ返してやる」
普段なぜか氷の王子と呼ばれている。氷魔法が得意なだけ。王位争いだって、ギフト持ちのリテラスが継ぎたいと言えば俺は放棄をするつもりでいる。
「俺の持っているギフトは戦い向き。リテラスが望むなら俺は全てを捧げる」
聖魔法が得意でその力を声に乗せ、力を発揮する。リテラスが張っていた結界が国を守っている。最近魔物が活発になってきているので早く国に戻ってきてほしい。
「王子、もう一つお知らせしたいことが」
背の低いフードを被った男はまだ少年の雰囲気が残った声。初めて見る姿からするにもしかすると最近術者になった者かもしれない。
周囲が話かけるのを止めようとしている中、背の低いフードを被った少年は俺の前に一歩踏み出した。
「魔物が活発化している傾向が数百年前に魔王が復活しそうだった時と動きが似ているんでる」
その場に居た全員が少年の発言に動きを止めた。
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