第3話 幼少期に出会った可愛いお姫様との、大切な記憶
可愛い女の子が遊びに来ると言われて俺はとても嬉しかった。歳の近い遊び相手たちは俺を見てくれてはいない。俺の背後にある王族という血しか見ていないから。
俺の望むままにしてくれていた。
ミリアムだけが魔女の血が流れているということで唯一差別も何もせずに俺に接してくれていた。
絵本で読んだようなお姫様に会えると俺は嬉しかった。隣国のお姫様の噂は聞いていた。黙っていればお人形のように可愛い。いうことは全て的を得ているため、それが相手にとって不快に思われてしまうこともあり「悪役姫様」と呼ばれていることを。
本当はどれほど可愛いのかを、自分だけが知っている優越感があったのに。
「貴方はね、本当はこれっぽっちも愛されていないのよ」
「どうしてそんなことが言えるの?」
可愛らしい声で放つ言葉がチクリと俺の胸を刺した。
次期王として育てられ、友人さえも選ばれた子が連れてこられる。
隣国の姫だから俺はこの子と会うことができた。それだけな関係。
言われたくなかった言葉を平気で吐いてくる。
「どれだけ守られているか分かっているの?貴方が危険な目に合わないように皆気を遣っているのよ。自分はなんでもできるって思っちゃって、貴方バカなの?自覚を持ちなさいよ」
同い年の女の子。可愛い見た目とは裏腹にしっかりと僕の目を見ている。
友人も大人たちに連れてこられたから、僕が心から友達になりたいと思った子はいない。友達にならないと、連れてこられた子たちが責められてしまう。
僕がいい子にならないといけない。顔色を窺われて話すことも自分の興味のないことも、僕に全部合わせて。
「君だってお姫様じゃないか」
「そうよ、私もお姫様よ」
目には力が宿り、幼いながらも人に指示を出すことに慣れている雰囲気の女の子。俺とは正反対の性格。いい子にしなきゃと顔色を窺っている僕とは違う。
国王と聖女の子供である僕はみんなの見本にならないといけない。
望まれない答えを口にしてはいけない。
剣を握るより魔法を使うほうが好き。
「愛されているなんて幻想なのよ。自分でつかみ取っていかないといけないの」
自分に言い聞かせているような女の子の姿。
愛されたいのは君も同じなの?
「ふん、わたくしにこの城を案内する権利をあげるわ」
父上にお願いをされていたことなので、僕は笑いながら彼女の手を取った。
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