第15話 何をすべきか
ブランの屋敷へ戻ると、いつも通り食堂の椅子に座った。
私は少しずつ体調が戻っていったため、正面に座ってブランにいくつか質問を投げかけた。
「アンナは……大丈夫なの?」
「あんな?アァ、あのサバンの小僧カ。保護はしたが意識は戻っていなイ。投薬実験とか色々やらされてるようダ。何週間かは目が覚めないだろうが命にかかることは無いだろウ」
「そっか……」
「どうしタ。思ったよりも喜んでいないナ。ケッケッケ」
「……さっきの話を気にしてるだけ」
「マァ時間はあル。いやそんなには無いガ。一晩くらい考える時間はあル。ゆっくり飯でも食いながラ……」
「……いや、大丈夫。結論は出てる」
私はブランの話を遮り、私は話し始めた。
これからどうするべきか。私の中では既に結論が出ていた。
「私やっぱり……家族を探したい。そして昔と同じような生活を取り戻したい。それが……私にとっての幸せだから」
「フム」
「あんたの言う通り、全員を助けることはできないかもしれない。でも、逆に言えば全員を助けられる可能性もある。ここで諦めたらずっと後悔することになるかもしれないから」
「そうカ。それがお前の結論カ。ダガ、もしも助けられなくてお前自身が憎しみに駆られたらどうすル?」
「……その時は、あんたが止めてよ」
「どうしタ。アタシに頼むなんてお前らしくないナ」
「あんたくらいしか頼める相手いないし。そのなんというか、あんたのこと、信用してるし」
「いいだろウ。『ラーラ家族救出計画』ここに開始を宣言しよウ。アタシに任せることダ」
ブランは椅子から机に乗り上げ、指を上に掲げて宣言する。
私は静かにうなずいた。
「それと聞き忘れていたことがあル。あの力は何ダ」
「力って……手から炎が出たこと?」
「血中の魔素を利用した魔術に近い力だと言うことは分かるガ、あんなの見たことが無イ。あれはお前ら一族皆使えるものなのカ?」
「いや、分かんない。初めて使ったし」
「嘘じゃないだろうナ」
「本当だって。魔術だって使えたことないし……」
「チッ。課題は山積みカ」
ブランはしばらく考え込んだ後、突然はっとした顔して飛び上がった。
「おいマテ、マテマテ。重要なコトを忘れていたじゃないカ!!」
「ど、どうしたの?私何かした?」
「さっきの阿保共のせいで、今日の分の『ラーラ幸せ会議』をやってないじゃないカ!あいつら、みじん切りにしてやる方が良かったカ……」
「え、そんなこと?別に今やればいいでしょ」
「それもそうカ。ヨシ、食堂に来イ。来るのだヨ。とっておきの案があるのダ。これを聞いたらお前は震えあがるだろウ」
「この前撃沈したくせに……」
「俺様の辞書に失敗という言葉は無いのダ。失敗など手段の一つを試した結果に過ぎないのダ。」
「屁理屈じゃないそんなの」
今日は色んなことがありすぎて頭が追い付かない。そして目の前の奇妙な人間は血という目的はあれども、あの手この手で私を幸せにしようとしてくれているという事実が、冷静に考えてみると、少し健気で可愛いようにも思えてきた。
「……あはは、あんたって変なやつね」
私は少し安堵に似た苦笑をしつつ、笑いながらブランを追いかけて行った。
——一方その頃。街で私と出会った魔術師の少女が、ブランとローゼスが戦った場所に訪れていた。
「……これは……一体……」
「魔獣に襲われた?いや、巧みに偽造されているけど……間違いない、錬金術の痕」
「一体誰が?」
「……脅威となるものは、潰さなければなりません」
――次の出会いと戦いは、すぐ近く。
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