第7話 小説とシナリオとセリフ

 小説の文章は、誰が喋っているのか分かるようにしましょう。


 かといって、セリフの前に名前を付けるのは小説ではありません。


 ――◇ 悪い例 ◇――


(友人1)「ほら、早くしないと! 電車に乗り遅れるってば!」


(私)「分かってるよー……靴が合わなくって、足が痛くってさ。そんなに急げないんだよ」


(友人2)「私は、さっき休憩に入ったカフェで、スウィーツ食べすぎた。お腹一杯で、まだ苦しい」


 ――◇ 良い例 ◇――


「ほら、早くしないと! 電車に乗り遅れるってば!」


 そう言うのは、私達三人の中で一番時間前行動にこだわる由佳だ。


「分かってるよー……靴が合わなくって、足が痛くってさ。そんなに急げないんだよ」


 と、私が言えば、


「私は、さっき休憩に入ったカフェで、スウィーツ食べすぎた。お腹一杯で、まだ苦しい」


 と、答えるのは、好みのスウィーツに当たると、食べ過ぎる事が多い満里奈だ。


 ――――◇――◆――◇――――


 ちょっと地の文と組み合わせれば、誰がしゃべっているのかは分かりますね。


『(名前)』でセリフが続くのは、シナリオの技法です。これを小説でしてしまうと、野暮ったい表現になります。


 他には、しゃべる順番を決めておく。勿論、たまに順番は崩れても大丈夫。


 ――◇ 順番が崩れた例 ◇――


「ほら、早くしないと! 電車に乗り遅れるってば!」


「分かってるよー……靴が合わなくって、足が痛くってさ。そんなに急げないんだよ」


「私は、さっき休憩に入ったカフェで、スウィーツ食べすぎた。お腹一杯で、まだ苦しい」


 足が痛い私と満腹の満里奈は、由佳に急かされながら駅に向かっている。


 ――◇ 順番通りの例 ◇――


「分かってるよー……靴が合わなくって、足が痛くってさ。そんなに急げないんだよ」


 由佳に「ほら、早くしないと! 電車に乗り遅れるってば!」と急かされてもさ……


「電車に乗ったらゆっくりできるから、あとちょっと頑張ろ?」


「私も急ぐの無理ー。さっき休憩に入ったカフェで、スウィーツ食べすぎた。お腹一杯で、まだ苦しい」


 と、答えるのは、好みのスウィーツに当たると、食べ過ぎる事が多い満里奈だ。


 ――――◇――◆――◇――――


 この例だと、先ず主人公がしゃべる。次は由佳。最後に満里奈。必ずこの順番でセリフを回す。


 この二つの方法と言葉遣いの組み合わせで、誰がしゃべっているのかは表現できます。


 誰がしゃべっているのか、確実に分かるセリフ回しを習得しよう!

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