第13話 議事録

司会(大柴 和寿妃カズヒ

書記(門馬 ハヤテ


司会:すでに皆さんがご存じの通り、残念な事件が起きてしまいました。


司会:事実確認をさせてください。


司会:文化祭準備のために、教室に残っていた方々、挙手をお願いします。


挙手。

猿渡。

兜人カブト

象橋キザハシ

獅子戸シシド

蛍悟ケイゴ

鈴芽スズメ

以上六名。


司会:ありがとうございます。部活に行っていた方も確認させてください。


挙手。

椋木、優瓜(美術部)。

舵機カジキ(軽音楽部)。

嘴広ハシビロ コウ(天文部)。

満都マント 日々輝ヒビキ(写真部)。

以上五名。


司会:ありがとうございます。それ以外の方々は家庭科室にいたんですね。


宇佐美、挙手。

司会、指名。


宇佐美:数に二人足りないんじゃないですか。


司会:ご指摘ありがとうございます。わたしと三輪くんのことですね。


宇佐美:はい。


司会:もっともな疑問です。私たち二人は早退する途中でした。


宇佐美:二人で早退ですか。


司会:はい。慣れない被り物のおかげですっかり首が疲れてしまって。


宇佐美、黙る。

司会、続ける。


司会:さて、私たちが校舎の外に出た時に、花瓶が落下してきました。


司会、黒板に図解する。

L字ロックに固定された花瓶について説明。

花瓶の出どころ

→地下学生食堂、二年一組担任・小荒木


司会:昨日、学生食堂を利用していた方、おられますか。


誰も挙手せず。


司会:皆さんお弁当ですか。


真鶴、挙手。


真鶴:誰も発言したくないだけだと思います。私は行きました。


司会:矢野さん、ありがとうございます。食堂に花瓶があったか覚えていますか?


真鶴:なかったです。一昨日までは確かにありました。


司会:そうだったんですね。


真鶴:はい。この時期にユリを見ることが珍しいので、驚いた記憶があります。


司会:ありがとうございます。


司会:昨日の掃除当番だった方、挙手をお願いします。


挙手。

蝶子。

虎瀬。

公星。

獅子戸。

蛍悟。

満都。

以上六名。


公星、発言の許可を求める。

司会、許可する。


公星:男子は廊下、女子は教室の掃除をしました。皆わかってると思いますけど、何も落ちたりなんかしていません。


※以下、書記の覚え書き


■一昨日

昼休み、花瓶はある。


■昨日

昼休み、花瓶がなくなる。

放課後、掃除。花瓶は落下せず。


■今日

昼休み、掃除。花瓶が落下。


★犯行時間

花瓶を取る⇒一昨日の昼休み~昨日の昼休み?

仕掛け⇒昨日の放課後~今日の昼休み?


司会:昨日の放課後、一番最後に教室を出たのはどなたですか?


鼠家、陽炎、辰雄、挙手。

司会、鼠家を指名。


鼠家:猿渡くんに残れって言われました。

陽炎:俺も。

辰雄:同じく。


司会:そうなんですか?


猿渡、遅れて挙手。


鼠家:猿渡からは、このままだとバニガメの犠牲者が出るからと言われました。

陽炎:その場でウサミミのデザインをする羽目になりました。

辰雄:しつこくキレ続けるので、帰りがけ四人で百均に行きました。


司会:そうなんですか?


猿渡:昨日のことはよく覚えていません。


宇佐美の暴言。

注意を受ける。

鼠家、挙手。

司会、指名。


鼠家:猿渡に今日に間に合わせてほしいと頼まれて、私は帰りのバスで縫って家で縫って、昨夜は寝ていません。


猿渡:いま思い出しました。すべて僕の指示です。


宇佐美、二度目の暴言。

警告を受ける。


司会:最後に教室を出た時、変わったことはありませんでしたか。

陽炎:誰も窓どころじゃなかったです。

辰雄:鍵をかけに来た用務員さんに驚かれました。


※以下、書記の覚え書き

★犯行時間

仕掛け⇒今朝~今日の昼休み?

★★今日の時間割

①古文②数学③英語④現代文


三輪、挙手。

司会、指名。


三輪:こんな犯人捜しに意味があるとは思えない。

司会:なぜですか?

三輪:疑い出せばキリがないから。学校中が容疑者になる。

司会:クラス外の人間に、こんな仕掛けができると思いますか?


犀一、挙手。

司会、指名。


犀一:犯人は貉の生霊だと思う。生霊なら犯行が可能。


宇佐美、離席。

三度目の暴言。

司会、廊下へ退場を指示。

宇佐美、退場する。

鈴芽、挙手。

司会、指名。


鈴芽:それより三輪くんが犯人を知っているって本当なんですか?

川尾:(挙手せず)何それ。どういうこと?

蝶子:(挙手せず)今回の件とは無関係でしょう。

鈴芽:(挙手せず)なんで無関係? 元はといえば教室が……


廊下の防犯ベル、鳴る。

宇佐美、廊下から逃亡。

小鹿、離席。


司会:静粛に願います。わたしには犯人が誰か、もうわかりました。


クラス、静まり返る。


司会:そこで、わたしから皆さんに一つ提案させてください。


司会:明日まで、犯人が名乗り出てくるのを待とうと思うのです。


司会:手紙でもメールでも直接言いに来るでも構いません。


司会:明日の放課後まで、わたしは待ちます。


司会:どんな理由があってもこんなことは許されることではない。


司会:一方、この追い詰め方に疑問を持つ方もいるようです。


司会:だから明日の放課後まで待ちます。


司会:それでも名乗り出てこないようでしたら、ええ。


司会:もう容赦しません。私の方から捕まえに行きます。


司会:この提案に賛同いただける方は、拍手願います。


司会、待つ。

戸惑うような沈黙の中、蝶子、起立する。

拍手。

鳳、起立。

鈴芽、起立。

拍手。

三輪、起立。

拍手。

起立、拍手。起立。起立、拍手、起立。起立。起立。

拍手、拍手、拍手、拍手、拍手、拍手。


書記、起立。拍手。


女子十四名、起立。拍手。

男子十三名、起立。拍手。

全会一致。

(欠席者・貉、亀井、退場者・宇佐美)


司会、一礼する。


司会:それでは、これにて学級会を終わります。ありがとうございました。


一同、拍手。閉会。

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