仕立て上げられた悪女②
(アスモデウスはちょっと⋯⋯⋯⋯ううん、大分個性的な悪魔だけど、サタン様もこういった男女の色恋沙汰にはアスモデウスの右に出るものはいないとまで言っていたし、私さえ失敗しなければ上手くいくわよね⋯⋯?)
マリアンヌが一人でうんうんと考え込んでいると、ガチャリと扉が開く。
扉を開けたのは、家庭教師の授業が終わったオリヴァーであった。彼はマリアンヌの姿を見るなり軽い足取りで駆け寄り、小さな身体でギュッと腰に抱きつく。
「お母様、ただいまっ!」
「オリヴァー、おかえりなさい。今日のお勉強はどうだった?」
「うんっ! とっても楽しかったよ! 昨日予習したところが出てきて、先生に褒められたんだ!!」
嬉しそうに今日の出来事を報告するオリヴァーに、思わずマリアンヌの顔が綻んだ。
「それなら良かったわ。オリヴァー、頑張っていたものね」
「うんっ! ⋯⋯あれ? お母様、誰か来ていたの?」
テーブルの上にある3人分のティーセットを見たオリヴァーの言葉に、マリアンヌはギクリと肩を揺らした。
「え、ええ。⋯⋯お母様のお友達が来ていたの」
「お母様の? それなら僕も会いたかったなぁ!」
オリヴァーはキラキラとした瞳でマリアンヌを見る。マリアンヌは、人を疑うことを知らない純粋なオリヴァーの視線に居た堪れない心地になった。
「そっそうね⋯⋯。また、今度機会があれば紹介するわ⋯⋯⋯⋯」
戸惑いを隠せず視線をウロウロと彷徨わせながら答えると、どこからか笑い声が聞こえる。
声の方を見ると、今まで静かに本を読んでいたサタンが腹を抱えて大笑いしていた。
「クククッ⋯⋯! お前に友達、なぁ? 言い訳するにしても、もっと別の言い方があるだろう」
(な、何よ! 私にだって友達くらいいるのよ!?)
「クッ⋯⋯見栄を張らなくても良いんだぞ?」
(サタン様だって、友達なんていないくせに⋯⋯!)
なおも笑い続けるサタンに腹を立てたマリアンヌは、彼の存在を無視することにし買ってきたケーキをオリヴァーと食べることにした。
マリアンヌははしゃぐオリヴァーの横顔を眺めつつ、サタンへのイライラをぶつけるかのように本日2個目のケーキを頬張るのだった。
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