作戦開始①


「アスモデウス、昨日は部屋に戻ってこなかったけれど、何をしていたの?」


 マリアンヌは何となしにアスモデウスに質問を投げかける。


「⋯⋯それはもちろん、も〜っとご主人さまのお役に立つために、セオとノアの監視をしてたんだよっ!」

「ハッ⋯⋯嘘つけ。どうせコイツのことだ、ここぞとばかりに好みの人間を漁りに行っていたのだろう」

「あ、あさっ⋯⋯漁りに⋯⋯!?」


 想像もしなかったサタンの言葉に、マリアンヌは唖然とする。

 しかし、彼の言ったことは図星だったようで、アスモデウスはぷうっと頬を膨らませてサタンに抗議をしていた。


「もうっ! サタンさま、なんで本当の事言っちゃうのーっ!!」

「冗談じゃないのね⋯⋯⋯⋯。アスモデウス⋯⋯お願いだから、問題は起こさないで頂戴ね⋯⋯」

「それはもちろんだよご主人さまっ! ちゃーんとうまくやってるからっ」

「上手く⋯⋯? よく分からないけれど、信じてるわよ⋯⋯」

「ふん⋯⋯バカめ」


 サタンは軽く鼻で笑う。彼はというと、アスモデウスを見ながら薄ら笑いを浮かべていた。


(サタン様って本当、人をおちょくるのが大好きね⋯⋯⋯⋯困った王様だわ⋯⋯)



✳︎✳︎✳︎



 オリヴァーを家庭教師の元まで送り届けたら、いよいよ本格的に作戦開始である。



「じゃあ、恋愛初心者のご主人さまにはまず、比較的チョロそうなセオから攻略してもらおうかなっ」

「そ、そうね⋯⋯いかにも遊び慣れているノアよりは、セオの方が難易度が低そうだもの⋯⋯」

「うんうんっ、セオはきっと今日も書庫に入り浸っているだろうから、今からそこに向かうけど、その前におさらいだよっ。まず、彼の意見には共感すること! 絶〜ッ対に否定しちゃダメだからねっ! 従順な女性を演じることで、きっと彼との距離が縮まるはずっ」

「ええ、分かったわ⋯⋯! とりあえずやってみるわね」

「僕もご主人さまのそばでサポートするから安心してっ!」

「ありがとう、アスモデウス。⋯⋯とっても心強いわ!!」


 マリアンヌはほんの少しの不安と期待に胸を躍らせ、書庫に向かって歩き出した。






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