変態悪魔②


「僕は色欲の悪魔なんだから、ちょっとくらいエッチでも大目に見てほしいんだけどなぁ〜〜」

「お前のはちょっとでは済まないから言っているんだろうが」


(これに関しては、珍しくサタン様と同意見だわ⋯⋯。出会って間もない私でも分かるほどだもの)


 今にもケンカを始めてしまいそうな2人の悪魔をどうにか宥めたマリアンヌは、自室の扉をそっと開いた。



「へえ〜! ここがご主人さまの部屋かぁ~。公爵の奥さんなだけあってすごく広くて豪華な部屋だねっ」

「ええ、そうね⋯⋯⋯⋯」


 うろちょろと部屋の中を歩き回るアスモデウスを横目に、マリアンヌは足音を忍ばせて一直線にオリヴァーが眠るベッドへと向かう。

 セオとノアの企みを耳にしたマリアンヌは、屋敷内でもオリヴァーを出来る限り一人にしないよう、今日から共に寝ることにしたのだ。


 マリアンヌはふっと微笑んでぐっすりと眠るオリヴァーの頭を優しく撫でる。

 すると、身じろぎしたオリヴァーは「ん⋯⋯おかあさま⋯⋯?」と掠れた声で寝言を口にした。


「オリヴァーってば、寝ぼけているのね。⋯⋯おやすみ、私の愛しい子⋯⋯」


 ベッドの傍に腰掛けたマリアンヌはオリヴァーの額に軽くキスをする。


 いつの間にかその様子をジッと眺めていたアスモデウスが、マリアンヌに声をかけた。


「この子がご主人さまの息子? 貴女に似てとても可愛らしい子だねっ♡」

「ありがとう。オリヴァーっていうのよ。とっても優しい子なの」

「ふうん⋯⋯。オリヴァーくんって、成長したら僕好みのイケメンになりそう!!」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯ご主人さま? 急に黙り込んでどうしたの?」

「⋯⋯アスモデウス。今後一切、この子に近づかないでくれるかしら⋯⋯?」

「えーっ! なんでー!?」

「なんでもよ⋯⋯!!」


(危険なのはセオとノアだけじゃないわ! この変態悪魔————アスモデウスからもオリヴァーを守らないと⋯⋯!!)


 また一つ、懸念の種が増えたマリアンヌは深く長いため息を吐いたのだった。














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