変態悪魔①
「何が男の娘だ、馬鹿馬鹿しい。お前はただの色狂いで女装癖のある変態だろうが」
(女装癖⋯⋯アスモデウスって、中々に濃い性格の悪魔なのね⋯⋯。でも、見た目はどこからどう見ても可愛らしい女の子にしか見えないわ⋯⋯!)
「サタンさまってば、ひどーい! それはぁ~⋯⋯時代がまだ僕に追いついてないだけだよっ」
「ふん⋯⋯年増のジジイのくせに若作りとはご苦労なことだ」
「サタンさまだって僕とそんなに変わらないじゃんっ!!」
ぷうっと可愛らしく頬を膨らませるアスモデウス。それを見たサタンは蔑んだ目で、またもや彼に辛辣な言葉を浴びせる。
「あいにく、俺はお前のように特殊な趣味嗜好は持ち合わせていないんでな」
「さ、サタン様、ちょっと言い過ぎじゃないかしら⋯⋯」
思わず制止するマリアンヌを、サタンは嘲るように鼻で笑った。
「ハッ⋯⋯! お前、忘れたのか? コイツは処女の血が大好物の変態なのだぞ? 何千年と生きている良い歳したジジイが若い女の血で興奮するなど、気持ち悪いを通り越して⋯⋯もはやおぞましいだろうが!!」
「⋯⋯っ!!」
(そ、そうだったわ⋯⋯!)
マリアンヌが衝撃を受けている間に、アスモデウスの興味はサタンからマリアンヌへと移ったようだ。彼は小さな鼻をひくひくと鳴らしながらマリアンヌの周りを回るようにしてウロウロと歩いている。
「残念だなぁ⋯⋯やっぱり、ご主人さま⋯⋯純潔を守っていないんだね⋯⋯」
「⋯⋯っ! な、何を⋯⋯!?」
アスモデウスの言葉を聞いたマリアンヌの細腕に、ぞわりと無数の鳥肌が立った。
「ホンット〜に残念だなぁ⋯⋯。あ、でもでもっ! 僕は美しい女性の血も大好物だから大丈夫だよっ」
にっこりと可愛らしい笑顔で「だから安心してね!」とのたまうアスモデウスに、マリアンヌは身の危険を感じる。
(わ、私は大丈夫じゃないわよ⋯⋯! アスモデウスってサタン様よりも————)
「ん? 俺よりも、なんだ?」
そう言いながら珍しく笑みを見せたサタンであったが、その瞳は微塵も笑ってはいなかった。
(そ、そうだった! サタン様には心の中まで筒抜けなんだったわ⋯⋯!!)
「な、何でもないの⋯⋯何も考えていないわ」
マリアンヌはだらだらと冷や汗をかきながら、無意味だと分かっていても否定の言葉を述べた。
(神様、どうか見守ってくださっているのなら⋯⋯この状況をどうにかして下さいっ!!)
そう思いながら天を仰ぎ見る。
変態と暴君との板挟み状態になったマリアンヌは、叶わぬ願いと分かっていても神へと助けを乞うのだった。
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