第2話

 昼下がり。


 俺は畑仕事と薪割りをやりながら、ユーリウスおじさんを待つ。


 フレアは昼ごはんの準備をしている。


 卵はピクリとも動かない。


 「まったく、あの卵を売ったら、こんな田舎仕事とはおさらばできるのにさ」


 俺は薪割りをしながらつぶやく。


 そうこうしているうちにやってきたおじさん。


 優しそうな瞳、たくましい筋肉を誇示するかのようにタンクトップ姿で現れる。


 おじさんは俺を見るなり、俺の頭を少し乱暴に撫でながら話す。


 一応言っとくが、俺は18歳で、もうとっくに成人している。


 「ガキみたいに撫でるなよ」


 俺がそう悪態をつくと、おじさんは快活に笑いながら昼飯の準備をするフレアの元に行く。

 

 昼飯を食べ終えた後、おじさんに卵について話す。


 おじさんはこういった。


 「別に、食べようとしなければおとなしいんだろ?」


 「そ、そうだけどさ」


 「ま、調教師になるための条件としては、不十分だろうな。従わないし卵のまま調教はできるわけがない」


 そんなぁとがっかりしているフレアをよそに俺は卵を売りたい願望について話すが、それも却下される。


 「売ったら、お前金持ちになれるとか思っているだろ」


 「だって、そうだろ?」


 おじさんは麦茶を飲んで話す。


 「あの卵はもう、すでにここを住みかとすることを決めたみたいだから売れないし、売ること自体難しいだろ」


 「どうして、そんなことが分かんだよ!」


 「まぁ、落ち着けって。理由ならお前の貯金を占拠しているあの卵に言ってやれよ」


 そう、その卵は落ち着いているにはいるのだが、俺の貯金箱を叩き割り、その中のとりわけ数枚しかないであろう金貨の上に転がっている。


 俺が試しに金貨をとろうとすると、たちまち体当たりしてくる。


 質が悪い。


 「あぁなっちゃあ、お前のこれまでの貯金のまぁ…………半分はあの卵の住処になっちまったわけだ」


 「くそが」


 「そういうな、いいこともある」


 「いいこと?」


 「もし、あれが懐けば、お前はSランクテイマーになる資格を持てるんだ」


 俺は沈黙する。


 「こんな田舎から抜け出したいといったお前なら、もう少し自分のレベルを上げないとな」


 「具体的にはどうすればいいんだ?」


 「冒険者学校というところがある。冒険者になるには独学でいきなり実践経験を積むことになることが多々あるが、冒険者学校に入ればあの卵の使い道が分かるかもしれないし、冒険者学校でいい成績をのこせば、あの卵が孵化した時に立派な調教師に慣れるんじゃないか?」


 「フレアが前から行きたがっていたな」


 「冒険者学校、楽しそうだなぁ」


 目をキラキラさせるフレアをよそに俺はおじさんに質問する。


 「俺も冒険者で結構稼ぐことはできたんだ。それにここにはずいぶんと世話になっている。お前たちの父親が俺の親友だったこともあって、お前たちの面倒も見ているが、そろそろお前たちもこんな田舎から出たいだろう」


 俺とフレアは頷く。


 「それにお前は、剣の筋がいい。コロシアムに出ることもできる。まぁその場合フレアをパートナーにする必要がある。さぁ、お前は結局、どうしたいんだ?」


 俺は――――――。


 

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