朝食に卵を割った俺は。
ビートルズキン
第1話
それはなんてことはない朝。
俺の家は街のはずれにぽつんとある一軒家。
田舎の豊かな緑。
小鳥はチチチと鳴いている。
そよ風が頬を撫でる。
清涼な空気を俺は吸い込み、俺はベッドから起き上がり、大きく伸びをする。
ベッドから離れて洗面台に行く。
洗面台で顔を洗った後、手を洗って、今朝の朝食を俺は作り始める。
まったくもって普通、ごく普通の流れ。
俺はスクランブルエッグが大好きだった。
だから、今日の朝食はスクランブルエッグだと相場が決まっている。
あぁ、待ち遠しいなぁ。
俺はうきうき気分。
カゴから卵を一つとる。
そして、キッチンにコンコンと音をたてて卵にヒビを入れる。
そこからだった。
そこから先、俺は信じられない光景を目のあたりにする。
突如、卵が青白く光り出す。
その光はまるで卵の中の命が鼓動するかのように点滅する。
卵にヒビは入っていない。
というか、卵の形が微妙に変化している。
それはまるで卵に鱗でもついたかのような奇妙な変化。
青白い光を放った後の卵は青白い鱗のようなものをつけたまま俺の頭にぶつかる。
いや、ぶつかるというより、体当たりをしてきたというのが正しい。
俺はその卵を捕まえようと試みるが、絶対に掴まらない。
俺は朝からへとへとになる。
無視して俺は他の卵をとる。
だってそうだろう。
他に卵があるんだから。
でも奇妙な卵はそれすら許さず、俺の腰に体当たりをする。
そこからまたしばらく、格闘をする。
「マイキー、牛乳もってきたよー」
赤い髪の可愛い女のフレアが俺の家に入る。
幼馴染で合い鍵を持っている彼女が目にしたのはへとへとになった俺と勝ち誇ったように跳ねている卵だった。
そしてフレアに俺は事の次第を話す。
フレアは図鑑をもってきて卵のことを調べる。
彼女と俺は一緒に図鑑のページを開く。
「…………もしかして」
フレアの細い指が図鑑の右上を指さす。
そこに書かれている文章の内容。
「SSSランクの幻獣種の卵…………だと?」
俺は自身の黒い髪をがしがしと掻く。
「すごいじゃない、マイキー!」
「そうかぁ?」
はしゃぐフレアをよそに俺はただでさえ目つきの悪いといわれている目を細めて、今は静かになっている卵の殻をこんこんと叩く。
「どうやって孵化させるんだよ」
「そ……そうだけど、SSSランクの幻獣種であるフロストドラゴンの卵を持っているだけでもすごい事なんだから」
まるで自分の事のようにはしゃいでいるフレアに俺は疑問の声を話す。
「まぁいいや、俺は仕事に出かける」
「畑仕事なんかより、冒険者になろうよ、マイキー!」
「冒険者…………ねぇ」
「それに今日はおじさんが来る日だよ」
俺は忘れていたことを思い出し、「あ」とだけ呟く。
「もう、マイキーったら」
「仕方ないだろ」
俺はおじさんと呼ばれるおっさんのことを思い出す。
丸太のような腕をした巨漢で、冒険者としてもかなりのレベルだけど。
ユーリウスと呼ばれるその人は、時たま、俺たちに冒険談を話しては家に泊まっていく。
「そうだ、おじさんに聞いてみるか」
「そうしましょ!」
こうして俺とフレアはこの卵の事をおじさんに聞いてみることにした。
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