第4話 春夏秋冬
春夏秋冬が過ぎ、二学期を迎えると今年も祓川神楽の季節が始まった。
晩秋を終え、初冬の証である木枯らし一号が吹いた、という天気予報を小耳に挟むと実感する。
年が明けたら私は受験生になるけど、秋に受けた模試でも志望校の高校にはA判定を獲得したから、断崖絶壁に立たされるようには内心焦ってはいない。
私の進路よりも心配なのはお兄ちゃんのほうだ。
お兄ちゃんも来年から受験生になるのに気が付けば、リビングでも傍目迷惑そうにスマートフォンばかり狂ったようにいじり倒している。
何とか、学校には毎日、通学しているみたいだけど、成績があまり芳しくないようで家の中でも会うごとに不機嫌そうに私を見下している。
この前の日曜日の晩、お母さんがとうとう、医学部は諦めなきゃいけないのね、とため息をつきながら私に愚痴っていたから内情はかなり深刻だ、と提示されなくても理解はできる。
正直なところ、お兄ちゃんが医者になる経過は想像もできない。
お兄ちゃんが医者になりたい、と尽かさず、口走るのは世間体と名誉心のためなんじゃないかな、とつい穿ってみる私がいる。
お兄ちゃんとはもう長く懇切に会話しておらず、私は家では暇さえあれば、読書に邁進していた。
今日は図書館で八冊借りたから、しばらくの間は暇を潰せるだろう。
気晴らしに本を読むくらいしか、私にやれる自慢できる趣味はないし、小学生の頃とは無縁な文学全集を読み耽るようになると、国語の授業内容が格段と膾炙できるようになった。
一週間に五冊の文庫本を読み切ったときは先生から心配されたくらいだ。
休み時間でも本ばかり読んでいるから何となく尊敬の念でクラスメートからカウントされるようになり、前みたいにいじられ、劣等生として扱われないからきつくはなくなった。
全校集会で紀貫之の有名な一節、言の葉の序次と古今和歌集の代表的な和歌数首を習ってから古典に関心が湧き、簡単な和歌入門書を借りてきた。
もちろん、中高生でも読解できるような現代語訳付きだけど、辞書で引きながら噛み砕き、言葉の大海を漕ぎ勧めたら、知的好奇心を刺激され、意外と面白かった。
君が前に読んでいた愛読書の『ゲド戦記』も書庫から借りてきた。
児童書だと思って軽く侮っていたら、なかなか読み進めず、大の大人が読む軽いタッチの小説よりも恐ろしく難解でまるで、分厚い純文学を読み進めているようだった。
すっかり逢魔が時になった、部屋の片隅で読み耽っていると荒々しい声が廊下から耳に入った。
「いいな、お前は」
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