第34話 ヤスラカナクラシ
カラカラ
窓の開く音がする。
太陽はその窓を叩き、世界という大きな器から二人の小さな部屋に風が入ってきた。
それは春にまだ抜けきれない冷たさと季節の変わり目に咲くであろう花の匂いを包んでいた。
カーテンは揺れ、波のようにカゲルの頬へ
それを運んだ。
「んんん、、。」
ダブルベッドの上で伸びをしたカゲルは
睡魔が朝に唱える睡眠魔法によって
まどろみ、再び布団にくるまった。
そこへナナゴウが大陸間ミサイルの如く
降り注いだ。
「カゲル!起きるのだ!朝なのだぁ!!!」
ドン!!
「ぎゃっ!ナナゴウ!?え?もう朝⁈ここは⁈」
「何を寝ぼけているのだぁ!ここは僕らの家なのだ!僕らは結婚してラブラブなのだぁ!」
「そ、そうだったね、、。」
時はFA4年
四年前にかつてシャドウアースであった球体は武装集団に征服された。
地球に酷似したそれは支配者によって形を変え
何層にも及ぶ黒い膜、黒層で仕切られた。
カゲル達は唯一陽の当たる第一層のジャングルにバラックを建て暮らしていた。二人で暮らす間に自然と惹かれあい人間と竜は一つになり愛し合うようになったのだ。
「ナナゴウ、、体をのけてよ、、。このままじゃ食事もとれない、、。」
金の髪を靡かせてカゲルの腹部にまたがる
ナナゴウは純白の砂丘に咲いたオアシスの瞳に
カゲルを写しながら微笑んだ。
「おはようのチューをするまで話さないのだぁ!」
そう言って滑らかな水草のような睫毛で湖を覆ったあと、幼さの残る唇をカゲルに溢した。
少し冷たいカゲルの唇にナナゴウの温かく柔らかい口唇が重なり、熱交換を始めた。
ただ口をつけるだけの行為が何故こんなにも
愛おしくやめられないのか。
エンドルフィンの洪水で水没したカゲルの脳は
方舟を待ちながら、大波の中を溺れ狂った。
そして、空気などいらないのだと悟った時
彼はさらに深く潜水することを誓った。
表面だけではなくさらに奥へ、見える部分を超えてさらに愛の裏側へ、カゲルは舌をナナゴウの口腔内に侵入させた。
「もがぁぁカゲル!激しいのだぁ!」
ナナゴウの舌は嫌がりながらも扉を開け、裸のまま頬を染め侵入者をベッドに招き入れた。
重なる唇の中で2人の舌は両生類のように交わった。
もっと僕の舌が伸びればいいのに、そうすれば
食道、胃を越え、小腸のファーター乳頭にまで
キス出来るのに。
2人はひとしきりキスを終えた後、ベッドの中で
朝露のような汗を流しながら交わった。
シャドウアースがなくなり、ここに逃げ込んで以降、2人は食事を取る以外はセックスに明け暮れていた。それは現実から逃避する為の愛の麻酔だった。
「ナナゴウ、、何故ブラディは僕らを助けたんだ、、?」
「ブラディは僕らを助けたのだ、、。ああしないとファビオに殺されていたのだ、、。」
ナナゴウは2本の竜耳を尖らせた。
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