第33話 アルジエイタイインノショウゲン
「ええ、ほんの数分です。私達の基地は彼等に
占拠されました。」
若い角刈りの自衛隊員は供述した。
「熊のように暴れ回る男、逃れられないマシンガンを撃つ男、得体の知れない女、そして、、。」
男は震え出した。
「大丈夫かね、、?無理はするんじゃないよ。」
インタビュアーは定型文に肉をつけて空気中に並べた。
「大丈夫です、、。当時のことを思い出しまして、、。最後の一人の男は重力を使い
私達を地面に押さえつけました。その上で人類の画一的共産化について唱えたのです。
その内容はかつて崩壊したソ連や新左翼の掲げた革命論そのものでした。
無視するもの、罵声を浴びせるもの様々でした、、。ついていくものなど誰一人いなかった、、。しかし…!!!」
机がゆれた。
「だが、君たちは彼等の思想に同調し、戦争に加担した、、。シャドウアースは異世界として初の共産主義的異世界となったわけだ、、。」
インタビュアーの言葉はブクブクと肥えた食用豚のようで彼の見た目もそれに類似した。
「そうです、、そして今こうして面会室
であなたに証言しているのです。私が言えることは彼等の思想に同調したわけでは決してない!!それだけは伝えたかったのです、、。」
そう言って元隊員は口を閉ざした。それは神によって作られた辞書以外の禁忌文字を使用した
男がゼウスによって口を縫われたようだった。
隊員の目には今でもフルカラーで写っていた。
地に伏せる人々、基地の屋上に立ち大声で
演説を始めるファビオ。
マントルに向かいキスを続けながらも彼等の心はクラウストロの言葉に釘付けになっていく。
ヴァンパイアとドラキュラのハーフのような
男は太陽すら味方につけこう言った。
「誇り高き自衛隊の諸君!!かつて純潔、白色であったシャドウアースは地球から流れてきた負け犬共に乗っ取られた!!
詰まるところ資本主義なるものは差別、憎悪
金、貧困しか産まない!!
わかったはずだ!ひっくり返した世界でも同じことが繰り返されると、、!!
路地裏の優しい老婆に金と高級車を渡せば
今日にでも200キロでオービスを突き抜ける!
跳ね飛ばした子供の命は金に変わる!!
ならば、戦後日本で成し得なかった革命を
ここに転生させようではないか!!!
肉体なんてやわなものではない!!
1969年、、!!燃え尽きた革命の抜け殻を
ここに転生させよう!!」
壊れたオモチャのように喋り続けるファビオ。
「1969年、、?東大安田講堂事件か⁈」
一人の隊員が呟く。
「ああ、、。懐かしいな、、。俺の中にある
燎原の火はあの日から消えることはなかった。
アメリカに資本主義にカマを掘られ去勢された警察犬、、放水を浴びせられ体の芯まで凍りながら火炎瓶を放り投げてやった、、。
バカな民衆は浮つく景気に手のひらを翻し
俺たちを笑った、、。
だが今はどうだ!!我が国は斜陽し真っ逆さまに海へ落ちていく、、!!
半身が金でできた成金をしゃぶる国家を見て
ワーキングクラスは引き攣りながら笑う、
その瞳には嫉妬に塗れた金、女、車、酒が
写し出されている!!
もう終わりにしよう、、。」
ファビオはゆっくりと息を吸った。
「支配者の血を持って歴史を洗い流し、シャドウアースを一から作り直す!!!」
安田講堂で敗れた青年の声は地を這う隊員
の意識を彼の心臓まで引き寄せ支配した。
「シャドウホール、、。俺の影は万物を引き寄せる、、。」
自衛隊市ヶ谷駐屯地は陥落した。
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