第20話 スラムガイニリュウキタル
「お前さん達、あんまりリュウの話をしないほうがいい、。」
皮一枚をやけにオシャレに着飾った老婆は
一向に話しかけた。
「ババ!?どうしたの?もう寝てる時間じゃないか?」
ジンがチーマーとは思えない優男の顔で言う。
「ジン、お前は知らないだろうが、あのリュウは恐ろしく耳がいいのじゃ。これまでもわし等の企てを地獄耳で嗅ぎつけてスラムに報復にきた!今頃街の影くらいでかい羽を広げとるかもしれん!」
有り合わせの布で作られた老婆の服が揺れる。
「ババ、今回ばかりは勝てるかもしれない!
ブラディさん達の力は本物だ!」
説明が遅れたが、ジンはエグゾザルのタクシのような雷の走るオシャレ坊主にモッズパーカーを夜になびかせて言った。
「ジンよ、、。これまで何人死んだ、??
お前の家族もワシの旦那もヤツに喰われた、
忘れたとはいわせんぞ、、。」
長い年月をかけ眼窟で蓄えた光をギラっと
放ち老婆は訴える。
「ああ、わかってる、、。」
「わかっとらんじゃろ!!」
「いや…。わかった上でやってるな
ジンよ…?」
二人のラリーの隙間にブラディが割って入った。
「ああ、これまでの会話は全部餌だ、、。」
ブゥワサ!ブゥワサ!
ビリビリッ
風を叩きつけるような音がスラム中の窓ガラスを揺らした。
夜の影の上空を更に濃い夜が蠢いていた。
「思っていたよりも…デカいな…。」
空を仰ぐブラディの目には尻尾の先から鼻の先までゆうに30メートルはある体躯をその倍はある翼で楽々と空に浮かせた九頭竜が映し出された。
「ぎゃあおオオオオオオ!!」
雄叫びは電気でも含んでいるのかビリビリとカゲルの頬を刺激した。
「ギャァオオオオオオ!!!」
「うるせぇ!9号!!新入りのくせにデカい声出すんじゃねえ!!びっくりすんだろが!!」
九頭竜のまとめ役であろう首は甲高い声で新米の首を注意する。
「おい、2号、、静かにしろ、、蟻を殺すのにも俺等は冷静にだな、、。」
沈着冷静なメガネをかけた竜は長い首を伸ばし
俯瞰的に言った。
「黙れよ!3号!!テメェも年下だろ!!
いちいち偉そうなんだよ!!」
「ぎゃぁぁおおおおおお!!!」
「8号まで遠吠え始めやがった!俺等は
伝説の竜なんだぞ!しっかりとしろ!
誇りを持て!」
「にごうううう〜!もういいじゃんよ〜
働くのめんどくさいよ〜。俺寝てていい?
残り8本ありゃ楽勝でしょ〜。」
一本だけ明らかにメタボリックな首は胴体に
もたれかかっている。
「4号!!お前本当に竜なのかよ!?」
「ボクちんも戦うのだ!つおいのだぁ!」
まだ首も触ってない竜は目を輝かせる。
「7号お前は俺等の戦いを見てろ!戦うのは経験を積んでからで、、。」
「、、、、。」
「5号お前はもう少し喋れ!!」
「わしのぉぉぉ若いころはのォォォォ。」
「6号のジイサン!ちゃんと薬飲んだか?
夜にも飲まねえといかねえだろ?」
「わしのォォォォォォォォ。」
「もういやだぁぁぁぁぁ!!」
2号は発狂した。
「竜も大変だね、、。」
「だな…。」
バディ達は自らの胴体に座る無二のかぶり
にいくらか安堵した。
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