第19話 ジンリョウシュニナル
スラムを歩く二人が見たものは、悲惨なものだった。栄養失調で腹と目玉が飛び出した幼児、
それを抱く肉を抜かれ骨と皮だけになった母親
物乞いのストリートチルドレン、そして、生仏に
あと命一枚のところまで来たであろう老婆。
「ひどいな、、。ここまでとは、、。」
「これが現実だ…。黒龍が城に住み着いて
この街を縛る政治、法律は無くなっちまった
お偉いさんは逃げたのさ…。誰もこいつらを守っちゃくれなかった…。それからは奪い合い、殺し合い、逃げたくても逃げられない同調性バイアスでがんじがらめさ…。」
スラム独特の腐敗臭を噛み締めるようにしてブラディは吐き捨てた。
「助けられないのかな?」
カゲルが15歳の少年の澄んだ瞳をスラムの風に
晒しながら言うと。
「コクリュウを倒せば少しは変わるかもな…。
だが倒すのは俺等じゃない方がいい…。」
「どう言うこと?」
網膜に幾ばくかの希望を映写したカゲルが
ブラディに尋ねる。
「竜が消えた後ここを統治する奴が必要だ…。
スラムのチンピラ代表であり、嫌われ者
そいつが舞台をひっくり返すのさ…。
オイ!ついてきてるのはわかってるぞ…!」
「…気が付きましたか?」
ジンがバツが悪そうにもの影から顔を出した。
「すいません!居ても立っても居られなくて、、。今までここでその日のメシを食うことだけ考えてやってきました。盗みなんて当たり前で、薬や、言いたくないことだって、、。
でも、ブラディさんと戦ってわかったんです
今日全てをひっくり返せるかもしれない。
あの竜から解放されるかもしれない。
俺の力なんてアリンコ以下ですでも…。
一緒に行かせてください!!!」
風が吹いている。
それは網膜を通過し、ろ過され瞳の泉の前に座り佇む少女の肩を叩くように流れていた。
「タバコが…切れちまったなぁ…。
オイ、お前が持ってるか…?」
「ハイ、シャイニングスターですけどいいですか?!」
「ああ…。」
カチッ
ボウッ
「懐かしいな…。若い頃は俺もシャイニングスターを吸ったよ…。」
ブラディは実に美味そうに星を吸い切った。
「借りができたな…。ジン!!お前もこい!!
お前にこの街をくれてやる… 。」
「ハァ⁈よくわかんないけどわかりました!」
ジンは領主らしからぬ間の抜けた声をあげた。
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