第4話 セツナノジュウビョウ

1秒が経過した。


カゲルは黒い虎の右目側に走った。

虎は黒尾を伸縮させカゲルに放ったが

カゲルは左眼側に舵を切り黒尾をかわした。


バキイ



2秒が経過した

アスファルトの悲鳴から逃げつつ

走り回るカゲルを見ながらブラディは

膝を曲げ、自らの影に手を突っ込んだ


ズブズブ


コンクリートと水の丁度中間であろう粘度が産む音を立てながらブラディは一丁の拳銃を取り出した。


5秒経過


「ブラディ!時間を作ったぞ!」

カゲルは黒尾の追撃は逃れたものの、黒虎本体に襲われ、顔面が肉薄するほどまで追い詰められていた。


カゲルの声を眉間に浴びながら

ブラディは黒銃をゆっくりとあげた。


「まあ、そう焦るな…

慌てて外したんじゃあ仕方ねえ

よしよしいい子だ黒猫ちゃん…

今楽にしてやる…!」


トリガーが弾かれた。


ガゥン!!


音は一つ

カゲルの頭上を箒星のように駆け

虎の眉間から腹を貫いた。


「アギャァァァァァス!」


虎は咆哮し、最後の一撃を見舞いにカゲルに襲いかかった。


「死んだ!!」


カゲルの心声が脳内で回覧されたころ

虎に異変が起こった。


3メートルはゆうにあったであろう体躯は

瞬く間に収縮し、生後数日程度の

黒猫まで小さくなった。


「ウニャァ!ウニャァ!」


黒猫はカゲルの顔を舌で舐めた。


「なんだコレ⁈ブラディ⁈ヒィゃ!

虎が猫に⁈」


黒猫に耳を舐められたカゲルの微声を

右耳にブラディは言った。


「俺の武器はクロックバレット、弾薬の調合で

打った敵の時間を進めたり、戻したり出来る

調合ミスで殺すつもりがチビ猫になっちまったみてえだな…。」


ブラディの右口角が上がる。


「おい!」ペロペロ

「こいつをどうにかしてくれ!」ペロ

「ヒャァ!!」ペロ


「ハッハッハ!気に入られたみたいだな!

しょうがねえ!転生ついでにペットでも買ったらどうだ!」


クールな口調がガラリと崩れるのように

ブラディは笑い


スッ


カチッカチッ


ボウ


アメリカンマイルドのタバコに火を付けた。






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