第3話 男って…
市川市に住む市原君は陸上部でした。
おそらく共学の学校に行ったら非常にもてていたと思います。
スリムでかっこいいのです。
仲田君はこのあと浪人時代まで続くぼくの友達になる人で、内気な僕が自分から声をかけた人でした。
ご実家には小磯良平の本当の絵が飾られているような家でしたね。
僕も含めてこの3人はよくつるんでいました。
文化の日や野球の日本シリーズとかの秋、よく他校の学園祭に行きました。
勿論、女子高です。
白百合学園、雙葉高校(四谷)、東洋英和女学院、聖心女子学院、山脇学園、学習院女子高校、そして桜陰女子学院などです。
自分が男子校なので女子高の雰囲気は想像できるのですが、男って…。
さて…そのようないわゆるお嬢様学校の学園祭には普通入れません。
チケットがないと無理なのです。
当然ですよね…日本有数のお嬢様学校ですから。
不思議とチケットが手に入ります。
まず市原君がどこからか持ってきます。
仲田もなぜかゲットしてきます。
究極の手段としては…
「チケットあまってないかな…」
と校門あたりでたむろしている女子高生に
市原君が
声をかけて
ゲットします。
けっこうこれが頂けるのです。
僕が声をかけてもダメなのです。
市原君が
声をかけないと…。
世の中なんてそんなものです。
おかげさまでいろいろと行きました。
思い出の1ページですね。
普段お話できないお嬢様女子高生とちょっとだけですが、
「ケーキおいしそうだね」
「手作りですよ」
「クイズやっているんだ」
「入っていってください!」
などとかたことの言葉を交わして、それだけで喜んだり…
男って…悲しいですね。
まあ、あちらも男子とお話するのが慣れていないので、お互いたどたどしいのですが、うぶな男子校の男の子はそれだけでもうれしいのです。
男子トイレの場所を探すのは苦労しましたが…。
そうだ。
いろいろとイベントのチラシを廊下で配ったりしてますよね。
「2時から体育館でチア部のパフォーマンスがありま~す」
「そこの教室でフォーク部がこれから演奏します」
とか言いながら配っています。
僕、仲田を素通りして市原君だけチラシがたまります。
世の中なんてそんなものです。
名門校の制服って変わらないですよね。
当時、僕らの特技としてかなり遠方からでもあの女子高生はどこの高校と判別できました。
セーラー服でも、錨のマークがあるのは雙葉高校なんです。
タイというかスカーフに特徴があるのは白百合学園です。
冬のコートでもわかったのです。
すごいでしょ。
どうでもいいことですが。
男って…しょうもないものです。
ある予備校に僕ら3人は行っていました。
その近くに桜陰女子高校がありました。
日本の私立の女子高で一番東大に入学させている、頭脳明晰な学校です。
桜の花びらを二つ重ねたような校章を左の胸につけています。
制服はそんなに目をひくような可愛さはないのですが、なんかオーラがね。
その女子高から最寄りの駅に向かう道の途中に予備校があるのですが、彼女らは誰一人として入ってきません。
素通りしていきます。
「やっぱ桜陰女子ともなると、俺たちの通う予備校なんか来ないんだな…」
と3人で言っていました。
大学生になり、社会人になり、結婚して娘ができて、でも女子高生とすれ違うとね、今でも学祭に行ったような学校はわかります。
若い頃覚えたことは忘れないのですね。
男って…バカですね。
特に桜陰女子高校。
東京に住んでいますので、
偶然に目にすることはあります。
「あ…桜の校章…あの制服…」
ドキってします。
あの女子高生もきっとすごく頭がいいんだろうな…
当時の賢くない男子高校生にとっては、驚異というか尊敬というか…
「あ…!」て思うのです。
条件反射です。
学園祭に行った記憶があるのですが、よく覚えていないのです。
不思議ですね。
緊張していたのでしょうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます