石丸構文とモンスタークレーマー

ここ連日、元安芸高田市市長である石丸伸二さんの、選挙後のTV局とのやりとりが話題に上がっている。

特に古市憲寿さんとのやり取りが、双方に共感する人たちとの間で舌戦になっているように思う。


自分が違和感を感じたのは、東洋経済の記事での、経営コラムニストの横山信広さんの言葉だ。


上司と部下のやり取りに例えて、石丸伸二さんのやり取りを再現し、上司が部下の報告に対する意見や感想を伝えることなく、異なる質問をしたことに、これでは“返り討ち”するような部下の言い分もわからないでもない、とした上で、屁理屈を述べる融通のきかない部下とし、石丸構文とまでは言わなくても、前後の文脈を考えず、言葉尻をとらえて発言をする若者が増えているように思う、とまとめている。


ここでモンスタークレーマーについて。

この石丸構文におけるやり取りは、石丸伸二さん側をスタッフ、相手側をモンスタークレーマーに置き換えると、あら不思議。

モンスタークレーマーの意図を汲み取ろうと必死になっているスタッフ側の発言は、石丸構文とまったく同じになるのである。

言い方が物腰柔らかいか、そうでないかだけの違い。


「察してちゃん文化」の人が、こちらに合わせて欲しいと要求した結果、上記のやり取りにつながったように感じる。

強い言葉を使うと若者がすぐにやめてしまうから、言えない上司が増えているのを尻目に、ズケズケものを言う若者が増えているとしていたが、正確には、旧世代はどれだけ失礼な扱いをされても飲み込んできた人たちが多かったが、海外の文化を知るにつれ、それはおかしいのだとはっきり言える人たちが増えた、というだけのことだ。

それを屁理屈ととらえるようでは終わっている。なんでもかんでも我慢する人と以外は、会話は不可能だろう。


まず大前提として、横山信広さんは切り抜きの一部分しかご覧になってはいないのだろう。


石丸伸二さんと古市憲寿さんのやり取りでは、既に古市憲寿さんが質問したことに対する答えを、その前に質問したアナウンサーとのやり取りで、回答している、という違いがある。

まったく同じ質問と回答が、既にやり取りされていたのだ。


にも関わらず、まったく同様の質問をした挙げ句、上記の上司部下のやり取りの上司のように、別の質問を混ぜて質問する。

これでは石丸伸二さんでなくとも混乱する。

前後の文脈を理解せずに話しているのは、古市憲寿さんのほうだとしか言えない。


昔の日本は「察してちゃん」文化だと思う。

相手のほうに意図を汲み取らせることを前提として話す、いわば「語彙力弱者」とでも言うべき、自分が相手に意図を伝える為の端的な言葉を持たない人たちが多い。

特に高齢者に多いと実体験として感じる。

恐らくこれは戦前戦後生まれの、自分の考える意思を奪われ、富国強兵に従わされてきた人たちと、その人たちに育てられた人たちの成れの果てなのだろうと感じる。


対して若者は、常にSNSの見えない悪意に接することにおびえ、そもそも自分の意思がマイノリティー側ではないか、叩かれることはないか、知らないところで既に叩かれたりしてはないか、ということを想像し、深く人と関わることを避ける傾向にあるようにも感じる。

と同時に、XやTikTokなどの短い言葉や映像で、伝えたいことだけを端的に伝える思考に慣れている。

ただし発信したことに対する、知らない人からのやり取りや意見は求めていない。

今の日本は「関わりを避ける文化」だ。


炎上する、したがる一部の若者が目立つだけで、それは昔も大勢いた。

今の中高年以上が若者だった時代にSNSがあれば、今普通に就職出来てはいない人たちがたくさんいるだろう。

現代の40代はその丁度境目に当たるのだろうと思う。


ところで、自分は職場などで海外の人と接する機会が多かったのだが、海外の人ほど端的に話さないと伝わならない。

日本語はあいまいな表現も多いが、海外は総じて端的な言葉で話す文化だからだ。

海外経験の長い石丸伸二さんが、端的な言葉でのやり取りを求めるのは自然なことだと思う。


日本でだけ過ごすのであれば、今はまだ「察してちゃん文化」のままでも生きていかれると思うが、国際人を育てようとしている、また海外からの人の流入が多い今の日本では、時代に逆行した考え方、話し方であると言わざるを得ない。

変わるべきはどちらか。


自分は石丸伸二さんとなら会話が成立すると思うが、古市憲寿さんと話して会話をするのはかなり苦痛だと、見ていて感じた。


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そもそも石丸伸二さんと古市憲寿さんのやり取りに限っては、選挙後の蓮舫さんにも失礼なことを言って怒らせていたのをあまり取り沙汰されないのはなぜでしょうね?

古市憲寿さんは、選挙前か選挙開始直後くらいのあたりで、小池百合子さんと蓮舫さんのことを、2人とも旬の過ぎた悪役みたい、とおっしゃっていて、日頃から暴言吐き過ぎではないかと感じます。


質問をする側は事前に勉強すべきところを、選挙前に質問すべき内容を質問する、自分の求める回答に誘導しようとして、ひたすら暴言を吐く。

それに石丸伸二さんが釣られなかったので、面白くなく不機嫌になった印象でしたね。

日本テレビは古市憲寿さんに限らず、全体的に失礼な印象を受けました。


昔の政治家なら全員一蹴していましたよ。

アメリカの大統領に同じような質問の仕方をするかといったら、当然違うでしょう。

取材対象を舐めているのが伝わってきます。

同業界に勤めている知人は、取材をさせていただく、という姿勢が大事、と常日頃言っていましたが、そういう姿勢が足らないようにも感じましたね。

無知な質問に噛み砕いて説明するレベルの丁寧な対応を、回答者に求めるメディアっていかがなものか。


それでも答えたら、石丸伸二さんの株は上がったかも知れませんが、メディアは自分たちの態度、対応がおかしいと感じる人が多数いるということに、気付けなかったんじゃないのかな。

きちんと勉強して、敬意を持って質問してきたメディアには、普通に回答しているところを見ても、石丸伸二さんが特段人間性に問題があるようには見受けられなかったですね。


直前に誰がどんな質問をしたのかも記憶出来ない人は、見ていてとても痛々しいので、事前に誰がどんな質問をするのか、打ち合わせをすべきではないでしょうか。

というか、普通そうする筈ですけど、なぜ今回はしなかったんでしょうね。

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