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 翌朝、私は井の頭公園の雑木林の中で発見された。肩の傷は深かったが、幸い命に別状はなかった。警察は通り魔の犯行とみて捜査を行ったが、犯人は見つからなかった。


 半年が経った。私は若葉が薫る井の頭公園を散歩していた。いつもの日課だ。


 私は井の頭池に近い茶店に立ち寄った。初めての店だ。客はいない。店の中に置いてある一冊の本が眼に入った。


 『ダイダラボッチ・・武蔵野の伝説』とある。


 ダイダラボッチは伝説の怪物だ。パラパラとページを繰った。『柳田国男はダイダラボッチの語源がだい太郎だろう法師ほうしだと指摘している』と書かれていた。


 『ボッチ』とは『法師』のことか・・ 


 私は『大馬鹿モンの法師』を思い出した。


 そう言えば・・『大』はダイだ。『馬鹿』は古語でダラと言い、今も全国に方言が残っている。関西の「あほん」や鳥取の「ず(馬鹿者)」などだ。


 えっ、ダイ、ダラ、ボッチ・・大、馬鹿、法師・・


 す、すると『大馬鹿モンの法師』とは『ダイダラボッチ』のことだったのか!


 「その本、如何ですかな?」


 奥から声が掛かった。奥を覗くと店の親父がこちらを見ている。


 薄暗い蛍光灯の下で、親父の右眼に枯れ枝が突き刺さっているのが見えた。後ろで音がした。見ると・・あの老婆が入口を閉めている。


 恐怖が私を襲った。


 急に親父の身体が天井近くまでふくらんだ。親父は腰をかがめると、それを反動にして私に飛びかかった。蛍光灯に鎌が光った。


                               了

 

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大馬鹿モンの法師が跳んだ 永嶋良一 @azuki-takuan

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