6
翌朝、私は井の頭公園の雑木林の中で発見された。肩の傷は深かったが、幸い命に別状はなかった。警察は通り魔の犯行とみて捜査を行ったが、犯人は見つからなかった。
半年が経った。私は若葉が薫る井の頭公園を散歩していた。いつもの日課だ。
私は井の頭池に近い茶店に立ち寄った。初めての店だ。客はいない。店の中に置いてある一冊の本が眼に入った。
『ダイダラボッチ・・武蔵野の伝説』とある。
ダイダラボッチは伝説の怪物だ。パラパラと
『ボッチ』とは『法師』のことか・・
私は『大馬鹿モンの法師』を思い出した。
そう言えば・・『大』はダイだ。『馬鹿』は古語でダラと言い、今も全国に方言が残っている。関西の「あほんだら」や鳥取の「だらず(馬鹿者)」などだ。
えっ、ダイ、ダラ、ボッチ・・大、馬鹿、法師・・
す、すると『大馬鹿モンの法師』とは『ダイダラボッチ』のことだったのか!
「その本、如何ですかな?」
奥から声が掛かった。奥を覗くと店の親父がこちらを見ている。
薄暗い蛍光灯の下で、親父の右眼に枯れ枝が突き刺さっているのが見えた。後ろで音がした。見ると・・あの老婆が入口を閉めている。
恐怖が私を襲った。
急に親父の身体が天井近くまで
了
大馬鹿モンの法師が跳んだ 永嶋良一 @azuki-takuan
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