3
走っても走っても雑木林が続いていた。息が切れた。私は立ち止まって
急に喉の渇きを覚えた。水、水が飲みたい・・
「水をご
突然、後ろから声が掛かった。
私が驚いて振り返ると、木々の間に一人の僧が立っていた。何枚ものボロ布を継ぎはぎしただけのような粗末な
私は思わず尋ねた。
「あなたは?」
僧がしわがれた声を出した。
「わしはこの林に住む法師じゃ」
法師? 私の脳裏に先ほどの不思議な老婆の声が
法師が私の思いに気づいたように言った。
「みなは、わしのことを大馬鹿モンの法師と呼んでおるがの。ここは乾燥しておるから、わしの身体もこの袈裟もカラカラよ。喉も乾こうというもの。さっ、水じゃ。遠慮せず飲みなされ」
法師が私に竹筒を差し出した。水筒だろう。私は竹筒を受け取ろうとして、両手を伸ばした。
そのときだ。
法師の口が耳まで引き裂かれた。鋭い三角形の歯が見えた。法師は腰をかがめると、それを反動にして大きく宙に飛びあがった。法師の身体が私の頭上を覆って・・降ってきた。
私は思わず横に転がった・・といっても林の中だ。1mも枯れ葉の上を転がると、横の枯れ木にぶつかった。ドサツという音がして、私の顔の上に枯れ枝が落ちた。転んだ私のすぐ横に法師の足が落ちてきた。枯れ葉が舞った。
法師は着地すると私の方を向いた。手に鎌を持っていた。法師が鎌を頭上に大きく振り上げた。満月に鎌の刃がキラリと半円形に光った。法師の口から、ケケケケケという不気味な笑い声が洩れた。
私の身体を恐怖が貫いた。こ、殺される・・
鎌が落ちてきた。私の右手にさっき落ちてきた枯れ枝が触れた。私は枯れ枝を握ると、思い切り法師に向かって突き出した。
次の瞬間、私の左肩に激痛が走った。同時に法師が「がぁぁぁ」という悲鳴を上げた。見ると、私が突き出した枯れ枝の先が・・法師の右眼を貫いていた。
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