第14話 勇者

辺りが暗くなるまで待つ3人。

空を見上げると星がちらほらと見えるが

月は雲に隠れている。時折、雲の隙間から

月がのぞき月光をさす。


「いい塩梅の天気かな」としんは言うと立ち上がり

「じゃ行ってきます。」そう言うと

刀をアイテムボックスに仕舞う。


「ナイフでいいのか?」とアスティは晋に聞く。

「ええ、建物の中がわからないので。

 腰にコレさしてると動きにくいんですよ」と

その辺の石を拾いポケットに入れる。

「あぁ、そうだ。へレス。魔核持ってない?

 この石くらいのモノがいいな。

 ちょっと試したいことがあるんだ」と聞くと

へレスは小粒の魔核を10個ほど晋に渡す。


そして歩き始めようとした時に

「ちょっとまて。」と俺を制止するアスティ。

アスティの視線の先を見るとそこには

無防備に建物に近づく人影があった。


その人影は入り口に立っている者達に

手をあげ挨拶のような仕草をして・・・。

その瞬間、門番二人がその場に崩れる様に倒れた。

そしてその人影はドアを開け中に入っていった。


「俺達も行くぞ!先を越された!」とアスティは

走っていく。それにつられ俺もへレスも走る。


入り口には頭と体が離れた人間が転がっていた。

アスティはドアを開け中に入る。俺とへレスも

後に続いて中に入ると

体の上が手前に、そして体の下が奥に・・・。

離れ転がっていた。その数5人分。


「2階だ!」とアスティは階段を駆け上がる。

そして二階の部屋に入るとそこには

同じ様に転がっている人間が3人分。


太めの大きい剣を仕舞いながらこちらを向く

人影。晋はサバイバルナイフを顔の前に構え、

腰を落とし身構える。


その人影に窓から月光が当たる。

体は返り血で真っ赤になっており、そして

その綺麗な女性の眼は青く光ってもいた。

少し不敵に微笑みを浮かべながら口を開いた。


「アスティ、こんな所で何やってるのよ」

とその綺麗な女性は言った。


「そりゃこっちのセリフだ。まぁダンに

 聞いたがな。お前に声を掛けたって。

 囚われた者達は?」とアスティが聞く。


「この部屋に入ったと同時に眠らせたわ。

 こんなもの見せるモノじゃないしね」と

その女性は答える。


「ジヴァニア、そろそろ魔法が解けるぞ。

 再度掛けようか?」と声がする。

晋がその方を見ると!そこには!


「うぉ!ロボットじゃねえか!」と思わず

声に出して言ってしまった。

「フィギュアだよ。精霊、というか妖精を

 中に、そうだな。憑依させている」と

アスティが説明をする。

「ジヴァニアは元々精霊使いだ。まぁ

 お前が理解しやすい様に言うとそう言う事だ」


「すげえな!異世界!やっぱすげえ!」と晋は

感動に打ち震える。


「行くわよ、ユキツー。後は任せたわ」と

ジヴァニアは宙に浮いているフィギュアに

言いながら、そして俺を見ながら部屋を出て

行こうとする。


「後で飲みに来いよ、居酒屋。ダンに奢らせる」

とアスティはジヴァニアに声をかけると

ジヴァニアは右手を挙げて部屋を出て行った。


先に死体を片付けるぞ。手伝え、シン。

「俺は体上を片付けるから、お前は体下担当な」

そう言いながらアスティは言うと手際よく

集め、1階へと運ぶ。

晋も体下を2体ほど、足を持ち1階へと運ぶ。


「そっちの小部屋に全部入れるか」と指をさし

死体を全部そこに投げ込む二人。


「あれ?へレスは?」と晋は聞くと

「建物の外で当たりの警戒をさせている。

 こんなもの年頃の少女に見せられるかよ」

と言いながら体上を投げ込む。


そして魔法で眠らせている拉致された者達を

抱えながら外まで往復する。


「へレスも警戒はいいから手伝え」とアスティ。

3人は亜人たちを運ぶ。


「師匠。どうしよう。猫耳です。今俺は

 猫耳を抱えています」と晋は言う。

「そうだ、今お前は猫耳を抱えている。

 そして俺は犬人族だ。」とアスティは言う。


「異世界万歳!」とふたりは叫ぶ。


へレスは小さな子を運ぶ。

「守るモノ」かぁ。と呟きながら。


12人の囚われた者達を全員

最初に待機していた所まで、運び終わると

アスティと晋はへレスに残る様に言う。

「最後の締めをしてくる。この子たちを

 見ていてくれ」と。


二人は建物の中に入る。そして

「金目の物を入れろ!とにかく入れろ!」とアスティ。

「どれが金目の物かわかりません!」と晋。

「いいから入れろ!」とアスティ。

「大丈夫です!わかんないから、全てを!

 さっきからガンガン入れています!」と晋。


そして入れ終わると二人は火を放つ。

「ファイア!」と唱える晋。

「なんで詠唱するんだよ。無詠唱の方が

 こっちではカッコいいんだよ」とアスティも

火を放つ。

「何言ってるんですか!言った方が

 かっこいいに決まってるじゃないですか!」

と火魔法を放った後に手を振る晋。

「あー熱かった」と言いながら。


「何やってるんだよ。普通熱くならんぞ」と

晋の手を見るアスティ。

「うん。普通の手だな。」と。

「なんだろうな、お前変なんだろうな」とも言う。

「変、で片づけないでください」と晋。

そして二人は建物を出る。


「おお、燃えてるな!燃えてる燃えてる」

ダンは数名の冒険者と眺めている。

「ジヴァニアに聞いた。お疲れさん。

 保護した者達はこっちで預かる。

 先にほれ。どうせ宿代無いんだろ?」と

アスティに金貨一枚を渡した。


「居酒屋をなんで俺がおごるんだよ。

 割り勘に決まってるじゃねえか」とも

笑いながら言う。


3人は宿屋に入る。

「豪華な部屋を。そして朝食も」とアスティ。

「いえ、相部屋でいいです。この人のいう事は

 無視してください。」とへレス。

「普通でいいです。普通で」と晋。


3人はにらみ合う。少しの沈黙の後

「この中で一番ランクが高いのは私です!

 私がリーダーです!」とへレス。


何も言えない晋とアスティだった。






 





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