第15話 他愛のない話

プロージット!

俺達は乾杯をする。思った以上に

金が入った。まぁ、あれだ。火事場泥棒。

だ、だってしょうがないじゃないか!

師匠がそうしろと言ったし?


「しかし、見ない間に綺麗になったじゃねえか!」

とアスティはジヴァニアを見て言う。

へレスはと言うと、勇者様を前に頬を赤らめながら

ガンガン飲んでいる。

俺はと言うと、勇者様をしみじみと見ている。


「あら、アスティはなんか、禿げた?

 腹も出てるじゃないの!」と一気飲みしながら

そう言うと「お代わり!」と。


「うるせえ!だからこうやって

 一から出直してるんじゃねえか!」と

アスティもおかわり。

「ゆ、勇者様って結構砕けてらっしゃるんですね」

と俺も一気飲みしておかわり。

「す!すみません!握手してください!」と

手を出しながらもおかわりを言うへレス。


大人気の勇者様だった。


「あ、そうだ、こいつ。日本から来たんだぜ?」と

俺を指さし、何故か笑う師匠。

「まじで!?うける!」と勇者様。


「い、いや。そこウケる所ですか!?」と

おれは少し酔いが回ってる感じだ。

「こいつ、レアなモノ探しに送られたそうだ。

 あっちも大変だなぁ」とアスティ。


へレスと握手しながら勇者様は

「レアなモノって何よ。」と俺に問う。

おれは一気飲みしておかわりを言いながら

「知りませんよ!そんなもの!その辺の石で

 いいと思うんですが!?」と。やべえ。

自分が何言ってるかわかんなくなった。


「レアなモノねぇ」となんと勇者様が

俺の代わりに考えてくれている。

「あ、因みにジヴァニアは日本で

 生活してるから。」とアスティ師匠。


「マジですかぁ。だからヲタクの匂いがするんだぁ

 その装備コスっぽいしぃ」

と俺はもう完全に酔っている。

「な、何故わかった!」と勇者様。

「・・・・。まじかよ!」と俺。少し覚めた。


「アレなんかどう?私の母様の料理」と

ジヴァニア。

「ダメに決まってるじゃねえか!レアと言うより

 兵器じゃねえか!人類滅ぶぞ!」とアスティ。

「え?激マズなんですか?」と俺は聞くと


旨い、マズイという括りではない。

たとえて言うならば!


「火を熾したはずが赤ちゃんが生まれたくらい」と

一気飲みをしながらアスティ。

「ベクトルが違いますよね?」と俺は

どんどん酔いがさめていく。

「ってか、お前は料理できるようになったのか?」と

アスティは聞くとジヴァニアは・・・。

「人類の壁を知ったわ」とすがすがしい顔をする。


「あ!」と俺は声を発してしまった!

「あれだ!綺麗な人のお約束だ!綺麗な人は

 料理糞マズってやつ!」とも言うと

顔面に皿が飛んできた。

「半分だけ許す」と勇者様に許された俺。


「やっぱ、あれじゃない?『愛』みたいな?」と

勇者様は言うと机をバンバン叩いて笑う。

「あっちにもあるじゃねえか!」と俺は言う。


「そうかな」と何故か腕を組み勇者様は言う。

「似合わねえよ」とアスティは言うとおかわりをする。

「『愛』でいいと思います!」と鼻息荒いへレス。


「あのぉ、今更なんですが」と俺は前置きをし問う。


勇者ってなんか寡黙で優しく、そして微笑みが似合って

人類の為に悪に向かうってイメージなんですが?


「ラノベの見すぎよ」と即答してくれた勇者様。

「勇者になってわかったわ。」と言うと

解りやすく説明してくれた。


「中学生が高校生になったみたいな感じ」と!


意味わかんなくなったので俺は

「勇者様はもし向こうに持っていくとしたら

 何を持っていきます?」と問いかけた。

「ジヴァニアでいいわ。勇者様って呼ばれるの

 あんまり好きじゃないのよね」と一気飲み!

そしてなんと!勇者様は。

「やっぱ、魔剣と神器かなぁ」と真面目に答えてくれた。


魔王によって作られた魔剣。

神によって作られた神器。

私が持っているのは魔剣。

本来は勇者が持つモノが神器と思われるけど

この頃になってやっと理解できた。


神の使いである勇者が魔剣を持つ意味を。

魔王の使いである魔族が神器を持つ意味を。


「え?魔族っているんですか?」と俺は話を折る。

「私の母様は魔族よ?」とジヴァニア。

「な、なんか複雑な家庭事情ですね」と

おれは少し『ちんぷんかんぷん』になってきた。


魔剣?神器?それに魔族ときたもんだ。

まぁ異世界なのであるとは思うが。

酔っぱらってるせいか、何も考えられないで

聞いている。


「そろそろ行くわ」と最後に一気飲みをして

席を立つジヴァニア。

「なんだ、もう行くのか。忙しそうだな」と

アスティは少し心配な顔をする。


「似合わないわよ?そんな顔。仕方ないわよ。

 勇者なんだし。私を見て元気になって

 くれるならやりがいもあるわ」とジヴァニアは

言うとへレスに向かって微笑む。


「こ!これに名前を書いてもらっても!

 いいでしょうか!・・・いいでしょうか!?」と

トートバッグを差し出すへレス。

「をい」と俺は思うが嬉しそうなへレスを見ると

何故か心が安らぐ。


トートバッグには

「へレスさんへ。ジヴァニアより」と書かれた。

「そ、それ、勇者様から貰った事に

 なったんじゃねえか?」と俺は思わず口にする。


「いいじゃない、別に!そっちの方がいいわ!

 というより、そういうことにします!」と

へレスはジヴァニアに深々と頭を下げる。


ジヴァニアは笑いながら俺を見る。

「あなたお名前は?」とも聞いてきた。


しんです。スナバシリ シン。」


「スナバシリ君ね。またどこかで会いましょう。」

と優しく俺に微笑んだ。

「青年。恋したんじゃないか?」とダン。


全員がダンを見る。去ろうとしていた勇者さえも!


「いたのかよ!」とアスティ。

「びっくりした!」とへレス。

「忍者かよ!」と俺。

「まさか後ろを取られるとわ!」とジヴァニア。


無茶苦茶、涙を流すダンであった。





















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